激安ガニ、厄介者から救世主に 関東上陸「1杯950円」連日完売 破格値段の秘密

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 今月、“冬の味覚”であるズワイガニの漁が解禁されました。今年は、過去10年で最も豊漁となる見込みです。さらに、ズワイガニによく似ているものの、これまで商品価値がなく“厄介者”といわれていたオオズワイガニが、今活用され始めています。

過去10年で最高

 床にずらっと並べられた、大量の「越前がに」。

 「越前がに」とは、福井県の漁港で水揚げされたズワイガニのこと。今月、日本海沿岸の各地ではズワイガニ漁が解禁され、初競りが行われました。

 冬の味覚の王様と称される「越前がに」。長い足にぎっしりと詰まった身は、凝縮されたうまみと、とろけるような舌触りが特徴です。

 福井県の越前漁港で行われた初競りではオス9000杯、メス7万杯がずらりと並ぶ圧巻の光景が広がります。オスは去年よりもおよそ4割高い1杯9700円、高いもので4万円の値段がつきました。

 福井県による資源調査では、今シーズンはオス・メスともに昨シーズンより1割多く、過去10年で最大の漁獲量となる見通しです。

 お隣、石川県の市場にもズワイガニが大量に並びます。売り場にはズワイガニの初物を買い求めに、大勢の観光客や地元の人たちが訪れていました。

埼玉からの観光客 「楽しみにしていたので、ここで買って家でゆっくり堪能したいと思います」
地元の人 「最高ですね。ゆでて家族で食べようと思っています」

 所変わって兵庫県では、漁港で兵庫県の高級ブランドズワイガニ「煌星(きらぼし)」の水揚げがあり、1杯180万円の高値が付きました。

競り落とした人 「うれしいです。感無量です。今年は例年に比べて良いって言われているので。これが続くように、漁師さんにがんばってもらえたらうれしいです」
漁師 「(今年は)多いと思います。これが年内、何とか続いてくれたらありがたい」

今では人気者も…2023年当時は“厄介者”扱い

 一方、北海道のえりも港で水揚げされたのは大量の「オオズワイガニ」。見た目はズワイガニとそっくりですが脚が太く、甲羅はやや大きめ。北海道で多くとれるようになったのはここ数年で、これまで一般的な市場にはあまり出回っていませんでした。

 一番の特徴は、なんといってもその安さ。直売所では1杯1000円で販売されています。

 一方、関東のスーパーでも、多くの人がオオズワイガニを購入していきます。

「オオズワイガニが出るということで来ました」 「カニ目当てで」

「めっちゃ安いです」

 そんな状況に北海道の漁師は、こう話します。

漁師 堤明光さん 「(オオズワイガニは)3年前は小さく商品価値が全くなかった。去年から大きくなって価値がついて商売になるようになった」

 今でこそ人気のオオズワイガニですが、北海道の沿岸で大量発生した2023年当時は“厄介者”扱いでした。

 北海道南西部の様似町。この時期は、カレイ漁の最盛期にもかかわらず…。

日高中央漁業協同組合 様似支所 長崎要販売部長 「網をさすと、今、オオズワイガニがかかるような状況なので。(漁を)休んでいるような状況です」(おととし6月)
様似町の漁師 秋山要さん 「(網が)こういうふうになって切れちゃうんだ。穴が開いてるでしょ。かじるのさ、網を」(おととし6月)

 カレイの刺し網に大量のオオズワイガニが絡まり、網を破いてしまい、漁ができない状態に。漁師たちは網の補修に追われ、カレイの水揚げは例年の半分以下になってしまいました。

秋山さん 「何も水揚げないんだよ。嘘じゃない、ずっと。カニに追われる夢を見ている。なんとかしないと、皆漁師辞めないといけない。金になるならいいんだけれど、何にもならないし。廃棄する。小さいからカニが。身も入ってないし」(おととし6月)

 サイズが小さすぎて、売り物にならないというオオズワイガニ。

 突然大量発生したワケは、海水温の上昇により毒性のあるプランクトンが急増し、オオズワイガニの天敵・タコが他の海域に移動。その影響で、成長過程で食べられてしまうはずのオオズワイガニが、大量に生き残ったと見られています。

 お隣のえりも町でも、小さすぎて売り物にならないオオズワイガニを選別。多少大きなものでも、地元の直売所で1杯150円から200円程度で少量が販売されるのみでした。

 厄介者だったオオズワイガニ。しかし立派な成長をとげた今年、ついに関東に進出。

 埼玉県のスーパーでは13日、北海道えりも町産のオオズワイガニを74杯入荷。

みどりスーパー 惣菜部 河内みどり部長 「オオズワイガニです。生きてます生きてます、元気です」

 生きたまま仕入れたオオズワイガニを30分ほど蒸すと、カニのいい香りがします。

 気になるお値段は?

みどりスーパー 塩浦朗社長 「税込み950円です」

 およそ500グラムのオオズワイガニを、地元・北海道より50円安い1杯950円で販売。お店がオープンすると、オオズワイガニの売り場には多くの人だかりができました。

 オオズワイガニを求め、次から次へと袋に詰めていく買い物客。

「すごいよね、重たい」 「重量ある」

「しゃぶしゃぶ。カニしゃぶ」

 1人2杯までの制限があるにもかかわらず、店頭に並ぶオオズワイガニは10分で空っぽに。

「オオズワイガニを目的に来ました。(これまで)6回7回くらい来てる」

 人気の理由は、安さだけではないようです。

塩浦社長 「身もパンパンに入って甘味もあり、とてもおいしいカニ」

 2度目の購入だという女性も「値段の割にみそが入っている。けっこう身が入っている」と話します。

 あまりなじみのないオオズワイガニ。そのお味は、身もぎゅっと詰まっているので、歯ごたえもプリっとした触感も感じられ、カニの味がかなり濃く、うまみがしっかりと詰まっています。

 74杯あったオオズワイガニは13日、およそ4時間で完売しました。

 大きく育ったオオズワイガニに目をつけたのは、スーパーだけではありません。横浜市のすし店では、一昨年から北海道産のオオズワイガニを使ったメニューを提供しています。

オオズワイガニを提供 店主・高橋邦昌さん 「身が詰まっていますよ、やっぱりすごく」

 店主が包丁をふるっていたのは朝、仕入れたばかりのオオズワイガニ。カニまるごと一杯を使った「オオズワイガニ丼」、酢飯の上にはたっぷりのカニの身。

 初めて食べたという客は、こう話します。

客(50代) 「みそが最高。身もきめ細かいというか、おいしい。ひとことで、おいしいです。(丼)2杯食べちゃいます」
客(40代) 「子どもとか一緒に来て、子どもが食べても『どんどん(食べなさい)』と言えるような。コスパとボリュームと味かなと思いました」

 店では、もともと福井県産のズワイガニのメスのセイコガニを使った丼を提供していました。なぜ、オオズワイガニ丼を出すことにしたのでしょうか?

店主・高橋さん 「たまたま市場のほうで、オオズワイガニが出ていて。(丼に)してみたら、ウケが良かった。(ズワイガニとオオズワイガニを)食べ比べても、全然ひけはとらないと思います。セイコガニって小さい。1杯じゃ少ないから2杯入れて。(カニの)量は『オオズワイガニ丼』1杯のほうが多い。モノと値段がちょうど良い具合というか、値段の割に本当に良いカニだと思いますね」

今後は王道に?

 各地で流通するようになったオオズワイガニ。一昨年、大量発生した際に激安価格で販売を始めた北海道・えりも町の漁業関係者は、こう話します。

えりも漁業協同組合 田中正義営業部長 「今はウチの漁協としては、本当に救世主としての扱い。今のウチの年間の水揚げの中でも、このオオズワイガニがかなりの割合を占めているから、本当にウチにとってはかけがえない存在。救世主よりも王道として、これからもそういう存在でいてほしい」

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月14日放送分より)


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