【札幌】深井一希が引退発表「階段の上り下りも痛い」膝が限界 クラブ一筋22年 次は指導者へ
コンサドーレ札幌MF深井一希(30)が26日、今季限りで現役を引退することを発表した。プロ13年目、小中高と過ごした下部組織時代を含めると札幌一筋22年目の生え抜き。両膝合わせて5度の前十字靱帯(じんたい)断裂による手術を乗り越えてきた「不屈の男」は、赤黒のユニホームを脱ぎ、指導者の道を歩み始める。
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「不屈の男」深井がプロサッカー人生の幕を閉じる。「膝の痛みに耐えきることがもう厳しくなってきた。精神的にもそれに疲れてしまったのが大きな理由」と語った。シーズン残り2カ月での発表は「すごくたくさんの方にお世話になったので、感謝の気持ちを伝えられたらいいと思った」。試合中、相手チームでも負傷した選手のそばに寄り添い心配する優しさがある背番号8は、引き際まで思いやりにあふれた。
覚悟を持って臨んだシーズンだった。「ラスト1年勝負しよう。もしこれでダメだったら次のステップに行こう」と決めて、クラブと今季の契約を更新。ただ1月のキャンプ中から、左右合わせて5度の前十字靱帯断裂を乗り越えてきた体の限界が近づいていることを悟っていた。
印象に残っている試合に挙げたのは、川崎Fとの19年ルヴァン杯決勝。1点を追う試合終了間際のラストワンプレーで、ヘディングで同点ゴールを決めた。「サッカーを続けてきて良かったなってシーンだった」。忘れられない一戦だった。
「階段の上り下りも痛い」という膝の痛みから、あと2カ月で解放される。
ずっと夢見る、次なる道へ。クラブは来季、指導者のポストを用意する方針。今後はプロライセンス取得を目指し「一流の監督になれるように早く準備したい」。13シーズン過ごした札幌で指揮を執る日を思い描き「今までないタイトルをもたらせるように、これからしっかり勉強していきたい」と誓う。
きっぱりと言い切る。「最高のサッカー人生だった」。もしケガがなければ…苦しい思いもたくさんしたが、悔いはない。リーグ戦残り8試合。「もちろんコンディション次第では自分も試合に絡みたい気持ちはある」と、愛するクラブのために最後まで戦い抜く闘志は消えていない。【保坂果那】
札幌深井一希の歩み
◆プロ入り 13年に札幌U-18からトップチーム昇格。同期は現新潟主将のDF堀米悠斗ら6人
◆デビュー 13年3月20日J2第4節ホーム松本戦でプロ初出場
◆1度目の断裂 13年11月15日の練習中に左膝前十字靱帯を断裂し、同21日に手術
◆2度目の断裂 14年8月20日天皇杯清水戦で右膝前十字靱帯断裂と右膝内側半月板損傷。同21日に手術。8月3日J2北九州戦で試合復帰してから約2週間後の負傷だった
◆3度目の断裂 17年4月2日J1甲府戦で左膝前十字靱帯、同内側と外側の半月板損傷。同5日に手術
◆開幕スタメン 18年2月24日広島との開幕戦で先発し328日ぶりに公式戦出場復帰。開幕スタメンは2年連続だった
◆劇的弾 19年10月26日クラブ史上初進出のルヴァン杯決勝川崎F戦で後半追加タイム5分にヘディングで同点ゴールを決めて延長戦に突入。PK戦の末、初の日本一は逃した
◆4度目の断裂 22年9月15日の練習中に右膝前十字靱帯断裂。同20日に手術
◆復帰 23年5月24日ルヴァン杯1次リーグ第5戦横浜戦で主将マークを巻いて先発し、255日ぶり公式戦ピッチ。相手チームは同じケガでリハビリ中に励まし合っていたFW宮市亮が同じく復帰を果たした
◆5度目の断裂 23年11月、右膝前十字靱帯、右膝内側半月板、右膝軟骨の損傷と診断され、同8日に手術。初の軟骨移植を行った
◆復帰 24年9月8日ルヴァン杯準々決勝第2戦横浜戦で351日ぶりの公式戦復帰を果たした。後半38分から途中出場
◆ラストシーズン 副主将に就任