イスラエル最高裁、パレスチナ人収監者に「十分な食事提供されていない」 政府に改善命令

画像提供, Reuters

イスラエルの最高裁判所は7日、同国内の刑務所に収監されているパレスチナ人に十分な食事が提供されていないとの判断を下し、栄養状態を改善するための措置を講じるようイスラエル政府に命じた。

最高裁判事3人は、イスラエル政府には、収監者の「基本的な生存水準」を確保するのに十分な栄養を提供する法的義務があると指摘した。

イスラエル国内の刑務所には、数千人のパレスチナ人がテロ容疑などで長年収監されている。2023年10月にイスラム組織ハマスがイスラエル南部を奇襲し、パレスチナ・ガザ地区での戦争が始まってからは、さらに数千人が拘束されている。

ガザでの停戦をめぐる交渉は行き詰まっているが、アメリカのドナルド・トランプ大統領は7日夜、ガザで拘束されているイスラエル人人質の解放に合意するようハマスに求める「最後の警告」を発した。

トランプ氏は、自分が提案した条件をイスラエルは受け入れたとし、今度は「ハマスが同様にそれを受け入れる時だ」と、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

そして、「これがハマスに対する私からの最後の警告だ。これ以上の警告はない!」と強調した。

ハマスはこれに対し、「停戦合意に向けた、アメリカ側からの提案」を受け、「直ちに交渉の席に着く」用意があるとの声明を出した。

トランプ氏は記者団に対し、「ガザに関する合意は間もなく」成立するとし、人質全員が生死を問わず帰還すると考えていると述べた。

現在もガザで拘束されている人質48人のうち、最大20人が生存しているとみられている。

イスラエル政府は、一部の人質の解放を含む合意案に対して正式な回答をまだ示していないが、これまでのところ、人質全員を一度に返還することを、合意の条件として求めてきた。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「ハマスに対する完全勝利が人質の帰還につながる」との立場を崩していない。

こうした中、イスラエル国内ではネタニヤフ氏への圧力が高まっている。6日には、数千人が街頭に繰り出してガザでの戦争終結を訴え、人質解放について合意するようネタニヤフ氏に求めた。

国際社会も、ガザへの攻撃を停止するようイスラエルに求めている。しかしネタニヤフ氏は、イスラエル国防軍(IDF)はガザ市とその周辺地域で作戦を強化すると表明している。

ハマスが運営するガザ保健省によると、過去24時間で少なくとも87人が殺害されたという。

2023年10月7日にハマスがイスラエルを奇襲して以降、イスラエルは国際赤十字委員会(ICRC)とパレスチナ人収監者の面会を認めていない。

ハマスはこの攻撃で約1200人を殺害し、251人を人質としてガザへ拉致した。

イスラエルはハマスを壊滅させるとして大規模な報復作戦を開始。ハマスが運営するガザの保健省の発表によると、これまでに少なくとも6万4368人のパレスチナ人が殺されている。国連はこの数字を信頼できるものと見なしているが、イスラエルは異議を唱えている。

イスラエルの複数の人権団体は、刑務所の環境に問題があると長年批判している。昨年には、刑務所での食事の方針が変更されたことで、収監者が栄養不良や飢えに直面しているとする請願書を提出している。

請願書を提出した団体の一つ、イスラエル公民権協会(ACRI)は、裁判所の改善命令は直ちに履行されるべきだと、ソーシャルメディアに投稿した。

イスラエルとハマスのこれまでの合意に基づいて、ガザへ引き渡されたパレスチナ人の元収監者は以前、イスラエル軍や刑務所職員から不当な扱いや拷問を受けていたと、BBCに証言していた。

イスラエルのイタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相は、ガザで拘束されているイスラエル人の人質は最高裁による保護を受けられないとソーシャルメディアに投稿し、最高裁判断を激しく非難。自分は「収監されたテロリスト」に対して、「法律で定められた最低限の条件」を引き続き適用していくとした。

ガザでは週末にかけて、イスラエルの攻撃が激しさを増した。IDFは、ハマスが使用していたとして3日連続でガザ市内の高層ビルを破壊した。

IDFは、5日には高層ビルの「ムシュタハ・タワー」、6日には「スッシ・タワー」を破壊した。さらに7日には、高層ビル「アル・ロヤ・ビル」を空爆した。

ハマスがガザ地区で運営する内務省は、これらのビルを使用していた事実はないとしている。

IDFはビル破壊に先立ち、ビルの住民や周辺のテントで生活していた人々に対して避難命令を出した。

IDFの報道官は、アル・ロヤ・ビルにはハマスの情報収集設備が設置され、「ビルの近く」には多数の爆発物が仕掛けられていたと述べた。

これに対し、ガザ内務省は「虚偽で根拠のない」主張だ」と反論。イスラエルによる「民間人に対する犯罪行為」を正当化するための口実だとした。

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