執念と奇跡が生んだ13枚の“宇宙の決定的瞬間”…英グリニッジ天文台、写真コンテスト2025。日本人写真家の受賞作も(BUSINESS INSIDER JAPAN)
美しい尾を引く優雅な天体「彗星」。2024年3月に撮影された、ポンス・ブルックス彗星の写真だ。 彗星の特徴である「尾」が生じる要因は、その構造にある。彗星は言うなれば“汚れた雪玉”のような構造をした天体であり、中心部には氷とちりなどからなる核がある。太陽に近づくにつれて氷が蒸発し、宇宙空間にガスやちりが放出される。このガスが太陽の影響で光輝くことで尾が生まれるわけだ。 今回撮影されたポンス・ブルックス彗星の様子は、太陽の活動が活性化した結果だと言える。 なおポンス・ブルックス彗星は約70年周期で地球の近くにやってくる周期彗星だ。
ドイツのチーム「Distant Luminosity」による「M13: An Ultra-Deep Exposure of the Popular Cluster」。ヘルクレス座の球状星団M13を29時間以上にわたる長時間露出で撮影した。 M13は北半球から見られる最大の球状星団として知られており、星の数は10万個以上にも及ぶ。地球から約2万2200光年の距離にある。
あえてモノクロ画像にすることで、光を放っている星雲の形を強調して撮影しようと試みられた作品。画像の中には有名な「馬頭星雲(バーナード33)」や炎星雲(NGC20224)、オリオン大星雲(M42)などが映っている。 審査員からも、「鮮やかな色を使わず、形だけで星雲を表現するという大胆な試みが成功している」と評価されている。 以下は他の入選作品の一部。 なお、受賞作品と最終選考に残った写真たちは、イギリスのロンドン国立海洋博物館のギャラリースペースに展示されている。
三ツ村崇志[Business Insider Japan 編集部]
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地球にとって最も身近な天体の一つである「月」。この写真は、国際宇宙ステーション(ISS)が月の近くを通過する瞬間を捉えた作品だ。 よく見ると、ISSの太陽光パネルは太陽側(画像奥側)を向いており、直接太陽光を浴びている。一方で、ISSの白いラジエーター部なども光に照らされているように見えるが、これは直射日光ではなく「earthshine(地球照)」という、地球による太陽光の反射によるものだ。
まるで水面に鮮やかなオレンジ色のインクを垂らしたかのような独特な模様。実は、太陽の表面に生じる「彩層」と呼ばれる領域を撮影した画像だ。 私たちのもとに届く太陽の光は、温度約6000度とされる「光球」で生じた光だ。この光球の外側にある、水素やヘリウムの薄いプラズマで覆われた層を「彩層」という。 彩層では、太陽の強力な磁場の影響を受けて、刻一刻とその様子が変わっていく。ダイナミックなその様子は、太陽を撮影する写真家たちを魅了し続けているという。
空に浮かぶ歪な曲線──。実はこの写真、海の上に昇る月を撮影した19枚の写真を合成したものだ。 上空に上るほど、光の筋の歪さは失われていく。これは、月に反射した太陽の光が、水平線近くの密度の高い大気層を通過する際に、まるでプリズムを通過するように「屈折」する自然現象を連続的に捉えたものだという。 この写真はイタリア、シチリア島で撮影されたもので、撮影者のマルチェラ・ジュリア・パーチェ氏はシチリア島出身の小学校教師だという。天文写真と聞くと、選ばれたプロの写真家にしか許されない、高度な技術を要する敷居の高いもののように感じるかもしれないが、誰にでも撮影のチャンスはあるのかもしれない。
2024年5月、日本でも全国各地からオーロラ観測の報告が相次いだことを覚えているだろうか。この時、ニュージーランドで撮影されたのが、この赤と緑に輝く巨大なオーロラの写真だ。 Kavan Chay氏は「その赤さは、私がこれまで経験したことのないほどの強烈さでした」といい、その興奮から24時間眠れなかったという。