トランプ氏の圧力空振り、FOMCの金利据え置きは正しい判断-社説

米連邦公開市場委員会(FOMC)はホワイトハウスからの圧力にもかかわらず、先週の定例会合で政策金利を据え置いた。この判断は正しい。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が認めたように、今回は利下げの論拠が6月よりやや強まっていた。メンバーの2人が25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを主張し、据え置きに反対票を投じた。しかしながら現行の「適度に引き締め的な」スタンスを緩めるには、まだ辛抱強い姿勢が適切と言える。

  FRBが相反する情報と不確実性の高まりという課題を抱えているのは、パウエル議長が説明した通りだ。経済成長は数カ月前からペースを落としており、雇用も失速している。FOMC決定の数日後に発表された7月の雇用統計では、失業率が小幅に上昇した。それでもインフレ率はFRBが目指す前年同月比2%の目標を上回って推移している。6月の個人消費支出(PCE)コア価格指数は、前年同月比で2.8%上昇した。トランプ関税が物価を押し上げる程度はまだ不明であり、7月の失業率4.2%は依然、政策当局の責務である「最大限の雇用」と整合する。

  つまり進路を変える緊急性はなかった。次回FOMCが開かれる6週間後、事態はより鮮明になっているはずだ。

  投資家も今回は、4.25ー4.5%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標に変化が起きるとは想定していなかったが、利下げ再開に向けてより明確なシグナルを期待する向きは多かった。しかしパウエル議長は今後計算がどう変化するか分からないと説明。つまり関税が物価に及ぼすリスクと、「適度に」引き締め的な政策金利が雇用に及ぼすリスクのどちらが重いか、現時点では断定できないという。次回の政策行動を示唆する強い根拠がFOMCにはなかった。

  いずれの方向にも総需要に影響しない金利水準「中立金利」という概念自体、不確かなものである点に留意すべきだ。インフレ率が確定的に2%に下げ、労働市場が完全雇用の状態にあるならば、政策金利は時間をかけて3%に引き下げられると多くの投資家は想定している(FOMC予測の『長期的』金利水準が中央値で3%であり、これが暗黙的に中立水準と見なされている)。しかし中立が何を意味するのか、当局者間で意見が分かれていることを忘れてはならない。最新のFOMC予測では、この水準は2.5%から3.9%のレンジに広がっている。現在の政策金利が中立金利からどれほど離れているのかは、時間が経たないと分からない。

  今最も重要なのは需要が十分にあり、失業率が低いということだ。ホワイトハウスが主張する「引き締め過ぎが経済を窒息させて」おり、3ポイントの利下げが必要だという論理は理解に苦しむ。

  確かに中・長期金利はこれまでより高い。住宅や自動車の購入は控えられ、多額の負債を抱える家計の負担は重くなり、投資が抑制されている。しかしここで大事なのは、政策金利引き下げは必ずしも事態の改善につながらず、むしろ悪化させかねないことだ。FOMCが政治的な理由で最良の判断を下していないと疑われれば、インフレ期待は上昇し、借り入れコストを左右する長期金利は急伸するだろう。

  労働市場に何が起きているのか、そして関税引き上げが物価をどれほど押し上げるのかは、今後2カ月かけて鮮明になるだろう。今のところFOMCの判断は適切であり、政府は批判を控えるのが賢明と思われる。

原題:Federal Reserve Was Right to Say No on Interest Rates: Editorial(抜粋)

関連記事: