ジェーン・ストリート、インド市場での巨額利益の秘密

米自己勘定トレーディング会社ジェーン・ストリート・グループが、インド証券市場へのアクセスを一時的に禁止された。

  インド証券取引委員会(SEBI)は、同社がインドのデリバティブ市場で「極めて悪質」な市場操作を行ったとする105ページにわたる暫定命令を、5日にウェブサイトで公開した。ジェーン・ストリートはこの指摘に異議を唱えている。

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  SEBIによれば、ジェーン・ストリートは週次の指数オプション満期日に、流動性の比較的低い先物および現物市場で大規模な資金を用いて価格動向に影響を与えていた。

  これによって数多くの小口個人投資家をミスリードすると同時に、取引量の多い指数オプション市場で利益の出る大規模なポジションを構築していたという。

  SEBIは具体例として、2024年1月17日の取引を挙げている。ジェーン・ストリートはまず、バンク・ニフティ指数の現物および先物437億ルピー(約740億円)相当を買い付け価格を押し上げた。

  同時に、同指数のオプション市場で約3210億ルピー相当の弱気ポジションを構築した。オプションのショートポジションは、現物および先物のロングポジションの7.3倍に達していたとSEBIは指摘している。

  その後に、先に買い付けていた現物および先物のロングポジションを「ほぼすべて」売却し価格を押し下げた。

  これにより、現物・先物では損失を出したものの、はるかに大きな規模で保有していたオプションのショートポジションで利益を上げた。

  SEBIによると、調査対象となった18営業日にジェーン・ストリートはバンク・ニフティ指数のオプション取引で447億ルピーの利益を計上する一方で、同指数に関連する現物株および先物の取引では約20億ルピーの損失を出していた。

  このような取引には「経済的合理性はほとんど見られない」とSEBIは論じた。

  ジェーン・ストリートの担当者は「SEBIの暫定命令には異議があり、今後も規制当局との協議を続けていく」とし、「当社は世界の全ての地域で、規制を順守して業務を行うことにコミットしている」と強調した。

  SEBIによると、インド市場には満期日に指数オプションの取引量と参加者数が原資産である現物や先物を「はるかに上回る」という独特な構造がある。これが、ジェーンストリートなどに特異な機会を提供したと言える。

  実際、24年1月17日には、バンク・ニフティ指数のオプション取引の総売買高が、同指数を構成する12銘柄の現物市場の取引量の353倍に達していた。

  デリバティブ市場が世界最大規模に拡大する中でSEBIはその後に、投機的取引を抑制するため厳格な規制を導入した。

  その一環として、ジェーン・ストリートが利用したバンク・ニフティ指数の週次オプションは現在は廃止されている。

原題:The Secret Behind Jane Street’s India Trades That Made Billions(抜粋)

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