ハミルトン謝罪 ― 苛立つルクレール、約束された”順位返上”ならず…裏に何が

2025年F1第17戦アゼルバイジャンGPを経て、フェラーリのシャルル・ルクレールが僚友ルイス・ハミルトンに不満を示した。終盤にハミルトンへ前を譲ったものの、約束されていた“ポジション返上”が実現せず、本来であれば8位で終えるはずのレースを9位でフィニッシュした。

予定された「スワップ」が成立せず

レース終盤、ルクレールはリアム・ローソン(レーシング・ブルズ)や角田裕毅(レッドブル)らと5位争いを展開していた。だがデプロイメントの問題に加え古いハードタイヤを履いていたため、担当レースエンジニアのブライアン・ボッツィからの指示に従い、フレッシュなミディアムを履く後方のハミルトンにポジションを譲った。

その後、ハミルトンは追撃を試みたが攻略できず、最終ラップを迎えた。そこでボッツィはルクレールに「もしルイスが抜けなければ、最終ラップのストレートで入れ替える」と伝えた。

同時に、ハミルトンのエンジニアであるリカルド・アダーミも「シャルルを前に行かせろ、彼は1.5秒後ろだ」と伝えた。だがハミルトンが減速したのはフィニッシュライン直前で、ルクレールはハミルトンの0.464秒後方でチェッカーフラッグを受けた。

「正直どうでもいいよ、8位だし。彼に8位を楽しんでもらえばいい。馬鹿げてる、不公平だ。まあ、どうでもいいけどね」とルクレールは苛立ちを隠さなかった。

さらに、英専門誌『Autosport』によると「僕らには守らなきゃならないルールがあるけど、今日はそれが守られなかったように思う」とも語った。

一見するとハミルトンの対応の遅れが原因に見える。だが本人によれば、チームからの指示が遅れたことに加え、フィニッシュラインの位置を見誤ったことも要因だった。

アダーミが指示を出した際、ハミルトンはすでに最終の超ロングストレートをトップスピードで走行していた。さらに、ルクレールの0.5秒後方にはアイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)が迫っており、安全にポジションを交換するのは難しい状況だった。

ハミルトンは「指示を受けたのが遅すぎた。実際に抜ける可能性は0.001%しかなかったけど、僕は前のマシンに集中していた。ストレートでアクセルを戻してブレーキも踏んだけど、コンマ4秒ほど遅かった。これは僕の判断ミスだ。シャルルに謝るよ。二度と起こさない」と語った。

チーム代表のフレデリック・バスールは「ルイスはスタート/フィニッシュラインの位置を見誤ったようだ」と説明した。

ルクレールは順位が戻されなかったことで感情をあらわにしたが、より本質的な不満はチームの低調なパフォーマンスにあったと強調した。

「8位か9位なんて、どうでもいい。もっと魅力的なポジションを争っているなら話は別だけど、焦点を当てるべきは週末を通して僕らが遅すぎたことだ」

メルセデスが揃って上位でフィニッシュしたことで、8位と9位に終わったフェラーリはコンストラクター選手権で3位に後退した。

2025年F1第17戦アゼルバイジャンGPは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポール・トゥ・ウインで制し、キャリア通算67勝目を挙げた。2位にはジョージ・ラッセル(メルセデス)、3位にはカルロス・サインツ(ウィリアムズ)が入り、移籍後初の表彰台を獲得した。

次戦はマリーナベイ市街地コースで開催されるシンガポールGP。10月3日にフリー走行1が行われ、ナイトレースの週末が幕を開ける。

F1アゼルバイジャンGP特集

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