フランス、イタリアと立場逆転-ユーロ圏財政不安の震源地に
フランスの長引く政治危機が同国をユーロ圏の財政問題の震源地に押し上げ、長らくその立場にあったイタリアとの位置が逆転しつつある。
この構図が鮮明になったのは20日だ。フランスが1週間で2回目のソブリン債格下げに見舞われた一方、イタリアはフィッチ・レーティングスから2021年以来となる格上げを得た。両国の格付けの差は3段階となった。フィッチによると両国の評価の差は縮小している。
短期的な懸念材料はフランスに集中している。昨年の解散総選挙以来の不安定な政局、財政赤字目標の未達成、財政再建に向けた明確な道筋の欠如だ。議会は対立する派閥に分断され、首相はこの2年足らずで5人目となっている。
一方のイタリアでは、メローニ首相率いる現政権が3年近く政権を維持している。異例の長期政権の下で、赤字削減ペースを加速させることにも成功している。
債券市場も両国の差の縮小を示す。イタリア国債とフランス国債の利回りは現在、ほぼ同水準だ。
フランスはもともとイタリアより大きな財政赤字を抱え、欧州連合(EU)が定める国内総生産(GDP)比3%の基準を守ることはまれだった。イタリアは早ければ来年にもこの基準を下回る見通しだ。
イタリアより大きな歳出を抱えるフランスは、常により多くの税収を必要としてきた。税収の動きは長らく似通っていたが、2017年のマクロン大統領就任以降、両国の差は縮まってきた。
近年、イタリア政府は税務手続きのデジタル化や電子的に記録が残る決済の普及を進めたことで、歳入が押し上げられている。
一方のフランスでは、マクロン大統領が企業向けの大幅減税を含む積極的な企業優遇策を推し進めてきた。
経済規模ではフランスが依然として優位に立つ。国際通貨基金(IMF)のデータによれば、フランスのGDPは23年に3兆ドル(約445兆円)を突破した。一方、イタリアは直近の四半期で成長が減速し、今年の成長率見通しは0.6%に下方修正された。
結局のところ、両国に共通するのは政府債務の重さだ。依然としてイタリアの負担の方が大きいが、フランスが財政再建が行き詰まる中、その差は急速に縮小している。
イタリアは財政健全化を進め、小幅ながら基礎的財政収支を黒字に戻し、その余力を借り入れ金削減に充てている。
ただ、巨額債務と高金利が重なり、両国とも政府の利払い負担は一段と膨らむ見通しだ。
フランスの年間利払い費は会計検査院によれば、20年の約300億ユーロ(約5兆2000億円)から、29年には1000億ユーロ超へと拡大する見込み。
原題:France Is Replacing Italy as Europe’s Poster Child of Fiscal Woe(抜粋)
— 取材協力 Alice Gledhill and Alessandra Migliaccio