イラン戦争で亀裂を深めるトランプとネタニヤフ、闇と闇の戦い(ニューズウィーク日本版)
イランとの戦争が長期化するなか、トランプ米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の間に亀裂が広がっているとの見方が強まっている。 【動画】米イラン最終合意に中国介入か…核問題を譲れないアメリカが飲む“台湾妥協”の劇薬 亀裂が存在するのは事実だ。トランプは公の場でこれまで何度もネタニヤフに対し、事態のエスカレーションを避けるよう求めてきた。最近では、イランが戦争終結の上で越えてはならない一線と見なしているレバノンでの軍事作戦をイスラエルが進めたことをめぐって、ネタニヤフを厳しく非難したとトランプ自身が認めた。 イスラエルがレバノンの親イラン武装組織ヒズボラの拠点に攻撃を行い、イランの報復を招いた際にも、トランプはイスラエルに自制を求めたがネタニヤフは聞き入れなかった。6月8日に終結したこの2日間の応酬の間に、米国とイスラエルの緊張関係は目に見える形で表面化した。 しかし、アナリストや元政府高官らは、今回の対立を両首脳の決定的な決裂と解釈すべきではないと警告する。両者はイランへの対応をめぐり手法ではたびたび対立してきたが、最終的な目標は共有してきた。 米シンクタンク、イスラエル政策フォーラムの上級政策アナリストで、米国とイスラエルの当局者に地域情勢を説明してきたダン・ロセムは本誌に対し、「私はネタニヤフとトランプの関係が崩れるとは思わない」と語った。 「2人は、観測筋が考える以上に足並みをそろえ、連携してきた。意見の相違が生じても、たいていはそれを乗り越え、課題や対応策について共通認識にたどり着いている」 ロセムによると、問題は米国にイスラエルを抑える力があるかどうかではなく、その力を行使する意思があるかどうかだ。トランプは米大統領としてイスラエルに大きな影響力を持っているという。
「これまでもトランプはレバノンやイラン問題で一定の圧力をかけてきたが、ネタニヤフとの直接対決は避けてきた。戦略面でも政治面でも、互いに理解し合える相手だと考えているからだ」 トランプとネタニヤフの緊張関係が表面化したのは今回が初めてではない。 トランプは昨年、2期目の任期に就くと、2023年10月にガザのパレスチナ武装組織ハマスがイスラエルを奇襲したことで始まったガザ戦争の停戦をイスラエルに促した。交渉が決裂し、イスラエルが最終的にガザへの攻撃を再開した際、トランプはほとんど抵抗しなかったが、その時も両者の不一致は見え隠れしていた。 より劇的だったのは、昨年9月にガザ戦争停戦への2度目の取り組みが進む中、イスラエルが米国の同盟国カタールで行われていたハマスの会合を爆撃した際のトランプの反応だ。ネタニヤフは、ホワイトハウスの大統領執務室でトランプの前に立ち、異例の謝罪を行って、その後和平合意に加わった。 イラン問題はさらに複雑だ。トランプはイランとの交渉を進める一方で、昨年10月にイスラエルがイランに対する前例のない規模の軍事攻撃を開始しても異議を唱えず、米国も厳重に防護された核施設の空爆に加わった。 しかしその後、トランプはイスラエルのさらなる軍事行動を強く制止した。報道によればこれにより、いわゆる「12日間戦争」の最後の攻撃となるはずの作戦に向かっていたイスラエル軍機数十機が引き返したという。 今年に入ると、イラン国内で反政府デモの弾圧が続く一方、米国とイランの間で核協議も再開した。これに対し、ネタニヤフは米国による直接的なイラン攻撃を求め、その過程で、トランプとの間に新たな不協和音が生じているとの報道が浮上した。