「全従業員がAIを使えるようにするという考えは、ばかげている」…EYのCTOが企業のAI活用支援について語った(海外)(BUSINESS INSIDER JAPAN)

世界有数のコンサルティング会社であるアーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young、EY)のアメリカ大陸コンサルティング部門の最高技術責任者(CTO)にジェイソン・ノエルが就任した。目まぐるしく変化するAIにどう対応すべきなのか。そんな問題に直面した企業を、EYは支援している。その支援の内容についてノエルに聞いた。彼によると、EYでは現在、「デジタルと人間の労働力の融合」に注力しているという。 自動化、アルゴリズム、生産性、効率性、意思決定、スキル向上…。職場では、AI(人工知能)をめぐる言葉が曖昧なまま使われることが多い。技術は急速に進歩している一方、その導入は遅れており、AIが今後の働き方をどう変えるのかについては依然として不透明だ。 例えば、多くの従業員は自分の価値が損なわれるのではないかと不安を抱いている。幹部たちはAIの導入による利益拡大の可能性に期待しつつ、競合他社に後れを取ることを懸念している。投資家や企業の取締役会は、導入の遅れによってすでに被った損失に、苛立ちを募らせている。 コンサルティング会社は、こうした動きの中心にいることが多い。AIブームの初期の段階から、企業がこの最新の技術を理解し、使いこなす手助けをする「頼れる専門家」としての立場を築いてきた。 だが、彼らが実際に何をしているのかは、肝心の技術同様、分かりにくいことが多い。その実態を明らかにするため、Business Insiderは世界有数のコンサルティング事務所であるアーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young、EY)のアメリカズ・コンサルティング部門で新たに最高技術責任者(CTO)に就任したジェイソン・ノエル(Jason Noel)に、AIが労働者にもたらす意味について話を聞いた。 近いうちに仕事を失う人が増えるのだろうか? 大恐慌に突入するレベルの壊滅的な失業率になるという話もある。そのような可能性について考えてみるのは興味深いとは思うが、少なくとも私が見る限り、現実はそうではない。 今後1年で、AIの統合に関して、全般的にどのような変化が見られると予想されるか? ChatGPTのような作業を支援するAIツールや、プライベートモデルとパブリックモデルの利用が増え、既存の企業向けアプリケーションにAI機能が組み込まれていくと考えられる。これによって生産性や効率性が向上していくだろう。 今年、EYでは具体的にどのようにしてクライアントのAI導入を支援しているのか? 我々は現在、「次世代の企業向けアプリケーション」について検討を重ねている。これは、ユーザーの役割に応じて必要な情報やAIによる洞察を提供し、行動を促すインターフェースだ。AIエージェントが提案を生成し、人間がそれを検証・承認する仕組みだと言える。このシステムは現在、大手クライアント数社とパイロット運用を行い、非常に高い成果を上げている。 我々はこれを、デジタルと人間の労働力の融合と考えており、単に両者を共存させるだけでなく、AIが人を自然に補完・強化するシステムを構築している。 これらのアプリケーションが実際にどう機能するのか、具体例を挙げてほしい もし私がクルーズ船のディレクターだとしたら、乗客が船を楽しむことに影響を与える要素はたくさんあるだろうと考える。乗客の構成、天候、海上を航海するのか、寄港するのか、といったことだ。だが、乗客が何を購入しているのか、どこで集うのが好きか、そうした乗客の行動パターンをめぐるデータは埋もれている。 これらの情報をAIエージェントを活用して掘り起こすことで、何が起こるかを把握し、予測することができる。例えば、明日の天気は悪く、しかも寄港のない航海日であることが分かっているとする。過去のデータから、そうした状況が人の動きや商品の消費──物販や食事──にどう影響するかも分かっている。 これらの情報から我々は需要を予測することができるため、この会場を利用する乗客の半分を別の会場に移したり、品切れしないように商品を準備したりするようアドバイスができる。状況を見越して、スタッフを他の業務に再配置するよう提案することもある。それに基づき、AIは即座に必要な手順を洗い出し、そのプロセスを自動的に構築してくれる。 提案を受け取った管理者は、「なるほど、これでいい」「この部分は修正したい」といった判断を下す。 こうしたやり取りは、視覚的に分かりやすく、洗練されたインターフェース上で行われる。 承認して「実行」ボタンをクリックすると、すぐに一連の調整プロセスが開始され、関係者や管理者に通知が届き、船内のサプライチェーンにも必要な変更が加えられる。

Lakshmi Varanasi

BUSINESS INSIDER JAPAN
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