「最悪の逆張り」が約3.1兆円のAIインフラに、暗号資産の富豪ノボグラッツ(Forbes JAPAN)

元ゴールドマン・サックスのパートナーで著名投資家のマイケル・ノボグラッツ(61)は、長らく「ビットコインで大当たりを引いたヘッジファンドトレーダー」だと見なされてきた。だが、彼が率いるギャラクシーは現在、人工知能(AI)インフラ分野で最も重要なプレーヤーの1社となっている。 ■逆境下の決断がAIインフラへの道を開き、巨額の収益を生む機会につながる 投資のチャンスは、カオスの中にこそ潜んでいる。そしてそれを即座に見抜き、巨額の資金を投じられる者はごくわずかだ。マイケル・ノボグラッツは、その決断をためらわなかった。しかし、2022年12月当時の彼は、この逆張りの投資がどれほど重大な意味を持つことになるのか、まだ十分に理解していなかった。 ●リスク管理の一手として、2022年末の混乱期にテキサスの採掘施設を取得 2022年12月、暗号資産分野では、サム・バンクマン=フリード率いるFTXの崩壊を受け、市場が大きく揺らぎ、破綻の連鎖が広がっていた。そうした混乱の中、ノボグラッツのギャラクシーは、テキサス州オースティンの北西約330マイルに位置するディケンズ郡で、約64万7500平方メートルのビットコイン採掘(マイニング)施設を6500万ドル(約99億円。1ドル=153円換算)で取得することを決めた。 「この施設は、おそらく私にとってこれまでで断トツに最高の投資案件になるはず」と、ノボグラッツは語る。 この取引は当時、表面的に見れば最悪のタイミングのようにも映った。暗号資産業界が過剰のツケを清算し始めたまさにその瞬間に、採掘インフラへ大規模投資を行ったからだ。当時の市場は、過剰なレバレッジや信用力の低い取引相手、検証されない前提といった問題が絡み合う危うい状態に直面していた。デジタル資産の時価総額は、その年だけで1兆5000億ドル(約229.5兆円)超が消失し、ビットコインとイーサリアムはいずれも60%以上下落していた。 2022年初頭、業界全体にストレスの兆候が広がり始めると、ノボグラッツの会社は、自社が暗号資産のマイニング用チップに多額の資本を投じ、それらを第三者のデータセンターに設置している状況に不安を抱き始めた。ギャラクシーの社長兼最高投資責任者であるクリストファー・フェラーロは、その当時を、「信用力が低下しつつある相手の管理下にある資産に、相当規模の資本を投じていることに懸念を抱いていた」と振り返る。 ギャラクシーが取得したアルゴ・ブロックチェーンのビットコイン採掘施設「ヘリオス」は、ノボグラッツが求めていた条件を備えていた。テキサス州の安価な土地に立地し、電力コストも低く、近隣のラボックから労働力も確保できた。だが、その後の取引は決して単純でも円滑でもなかった。資金繰りに窮した相手を救済する側面を持ちながら、法的な調整を重ね、未完成の施設を切り出して取得するための複雑な資金スキームを組み合わせる構造のうえに成り立つ取引だった。同時に、経営難に陥っていた運営会社を取引完了まで持ちこたえさせる必要もあった。 その当時、ヘリオスの施設はあくまで下落局面での備えに見えた。過酷な市況の中で主導権を握り、リスクを管理するための一手という位置づけだった。しかし、ノボグラッツと彼のチームは、それから1年以上を経て、自分たちが実際にはまったく別のものを手に入れていたことに気づいた。 ■AIデータセンター参入のきっかけは、暗号資産の採掘事業への疑問と電力不足の指摘 2023年後半、ビットコイン価格が3万8000ドル(約581万円)前後で推移し、2021年11月の高値を40%下回っていた。ノボグラッツは、「この資産をビットコイン採掘に使い続けるのが最善なのか」と新たな疑問を抱き始めた。その数カ月後、彼はサンフランシスコを拠点とするアクティビスト投資会社Engine No. 1の創業者クリストファー・ジェームズと飛行機で隣り合わせになった。そこでジェームズは2時間半にわたり、差し迫る電力不足について語り続けた。それはビットコインとはほとんど関係がなく、人工知能(AI)と深く結びついた問題だった。 同じ機会に目を向け始めた企業は他にもあった。2024年6月、デラウェア州を拠点とするビットコイン採掘会社コア・サイエンティフィックは、世界でも最も急成長しているAIインフラ企業の1つであるCoreWeave(コアウィーブ)と、12年間で総額35億ドル(約536億円)規模のリース契約を結んだと発表した。これを境に、暗号資産の採掘事業は、投機ブームの残骸のような担保資産ではなく、長期契約に裏付けられた収益を生む希少な電力インフラとして評価され始めた。 ノボグラッツの判断は素早かった。CoreWeaveは、その以前からギャラクシーの暗号資産投資銀行部門の顧客で、その関係は2021年、同社がイーサリアムの採掘事業を手がけていた頃に始まっていた。2024年11月、ノボグラッツはヘリオスのAIデータセンター(総容量800メガワット)のうち25%について、CoreWeaveと15年間のリース契約を結んだ。その後1年以内に、CoreWeaveは残る容量すべてを借り受けることを決め、最終的に100%を賃借する契約を結んだ。 テキサス州の電力系統運営機関ERCOTの承認を受けたことで、ヘリオスは設備容量を1.6ギガワットへと倍増できる見通しとなり、全米最大級の独立系データセンター事業者の1つとなる可能性が高まった。ヘリオスは2026年夏にも収益の計上を開始する見込みで、CoreWeaveとの契約だけで年間10億ドル(約1530億円)超を生み出すと見込まれている。こうしてノボグラッツは、暗号資産とAIデータセンターという2つの強烈な追い風を受ける分野の頂点に立つことになった。 「多くの点で、我々は運が良かった。そして同時に、その幸運をどう生かすかという点で賢明だった」とノボグラッツは語る。

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