【為替】日米首脳会談は為替に影響するか?
トランプ米大統領による、2024年以降の円安に関する主な発言は以下のようなものがあった。
また、トランプ米大統領は2025年4月に8つの「非関税障壁」をSNSに投稿したが、その最初が「Currency Manipulation(為替操作)」だった。
以上を参考にすると、トランプ米大統領は貿易相手国の通貨安に対してかなり過敏であることから、足下で150円以上の水準で推移する米ドル高・円安を認識した場合、不満を感じる可能性は高いだろう。その意味では、高市総理との初の日米首脳会談で、円安を批判する可能性があるのではないか。
初の日米首脳会談で「円高要求」を行ったクリントン大統領=1993年
実際に、初の日米首脳会談で為替問題を最重要テーマに取り上げ、事実上の「円高要求」を行ったのは、1993年4月のクリントン大統領だった。当時の宮沢総理との初の日米首脳会談を終えた後の記者会見で、クリントン大統領は「日米間の貿易不均衡是正に有効なのは第一に円高」と語った。
この背景には、1989年のベルリンの壁崩壊に象徴された東西冷戦終了を受けて、当時のクリントン政権が日米間の貿易不均衡是正を最優先課題に位置づけていたということがあった。そうした意味では、大義のある日米二国間の為替調整だったのかもしれない。
クリントン政権が始まった1993年1月に125円程度だった米ドル/円は、1995年には80円まで下がり、戦後初めて1米ドル=100円を超えた円高、「超円高」が起こることとなった。その円高の動きと並行して、日本の政治も自民党の下野、非自民連立政権の誕生という歴史的変化が起きていたが、急激な円高の影響もあったのではないか。
ビジネスマンの判断が優先するトランプ「円安嫌い」
このように、基軸通貨である米ドルを保有する米国の政権が、基本的に大義名分を持つ中で為替調整に動く場合、その影響はやはり大きくなるようだ。では、トランプ米大統領の場合はどうか。
トランプ米大統領はこれまでの米大統領の中でも、異例なほど貿易相手国の通貨安に過敏に反応するものの、その理由は米国としての大義というより、以下の発言などが象徴的に示すように、かなり自身のビジネスマン的判断の影響が大きそうだ。
以上を整理すると、トランプ米大統領が150円以上の米ドル高・円安に不満である可能性は高いものの、それを高市総理との初の首脳会談であえて取り上げるかは微妙だろう。高市総理とトランプ米大統領は保守派として、外交や安全保障の政策では親和性があり、高市氏はトランプ米大統領が「友人」と高く評価する安倍元総理の「後継者」の位置づけになっていることなどは、円安への不満を自制する要因にもなるだろう。
ビジネスマンというトランプ米大統領の立場からすると、円安への不満を表明する必要がないように、為替相場が自律的に米ドル安・円高に動いていることがベストというのが本音かもしれない。