両者納得できぬ“正着” 豊島九段復調の2勝目 名人戦A級順位戦

A級順位戦3回戦で増田康宏八段から今期2勝目を挙げた豊島将之九段=名古屋市中村区の名古屋将棋対局場で2025年9月24日、丸山進撮影

 第84期名人戦A級順位戦3回戦、豊島将之九段―増田康宏八段戦が24日、名古屋市中村区の名古屋将棋対局場で指され、豊島九段が79手で勝って2勝1敗と白星を先行させた。豊島九段は局後、「前期よりは状態がいい」と降級の危機をぎりぎり回避した前期からの復調をうかがわせた。

効果がすぐには分からない

 豊島九段の誘導で、居飛車を選んだ両者が玉を飛車のいる右側に移動する「相右玉」という珍しい形に進んだ。飛車先を交換する2四同飛(41手目)までは豊島九段の想定通りだったが、穏やかに指す増田八段の3三桂から手探りの展開に進んだ。

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 3手後、3五歩(45手目)の局面が勝負の分岐点だった。増田八段は100分を超える大長考に沈んだ末、「これ以外に思い浮かばなかった」と6五歩を選択した。この手を境に、徐々に豊島九段のリードに傾いたため、感想戦では何が正解だったかが重点的に検討された。

 将棋AI(人工知能)が示した手順は、4四歩、同歩、同銀、3四歩の後に3五角と飛車取りに打ち、飛車を引かせてから4五桂と跳ねる手順。

 感想戦の多くを割いて検討した結果、実戦の進行に比べれば増田八段にもチャンスはあったと確認されたものの、増田八段は「自信がなくてやりづらかった。打った角の効果が分からない」と首をひねりっぱなし。豊島九段も「角を打った成果が上がるか分からないから打ちづらい」と同調した。

 3五角のよさは最後まで分からなかったものの、増田八段は「どこかでミスしたはずなのに、どこでミスしたのか分からなかった。ここだったんですね」。大きなミスをした覚えがないのに、なぜか負けてしまった。その理由の一端をつかんだ様子だった。

 実戦はその後、豊島九段が3八銀(51手目)と守りを固めてから6六桂と好位置に据えたのが好手順となって一気にリードを奪い、増田八段を午後10時前の早い投了に追い込んだ。

 2回戦に続いての勝利で白星が先行した豊島九段。前期は前半を1勝4敗と大きく負け越し、後半で巻き返して辛くも残留した。「今期は前期よりは状態がいいので、星取りは気にせず継続していきたい」と更なる復調を最優先課題に掲げた。

 3回戦を終えてのA級の星取りは以下の通り(数字は順位)。

 ▽3勝=1永瀬拓矢九段、9近藤誠也八段、10糸谷哲郎八段

 ▽2勝1敗=6豊島九段

 ▽1勝2敗=3渡辺明九段、4佐々木勇気八段、5増田八段、8千田翔太八段

 ▽3敗=2佐藤天彦九段、7中村太地八段

 本局を詳報する加藤まどかさん執筆の観戦記は、10月9日から毎日新聞朝刊に掲載する予定。【丸山進】

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