トランプ関税に備え駆け込み購入、1-3月米自動車販売を押し上げへ

ブリタニー・ハンフリーズさんと夫のジョン・バスフォードさんは、トランプ米大統領の政策による影響を回避するため、今年に入り自動車の購入を即決した。

  2人に続くように、米国では4月3日に発動予定の25%の自動車関税に先駆けて、自動車を購入しようとする動きが活発化している。今ある在庫が底をついた後は、輸入車が大幅に値上がりする可能性があるためだ。

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  こうした駆け込み需要により、自動車メーカー各社が4月1日に発表する1-3月(第1四半期)の販売台数は、大きく押し上げられると予想されている。電気自動車(EV)メーカー、テスラは翌2日に1-3月の世界販売データを公表する予定だ。

  ハンフリーズさん(38)は2月末までに、現代自動車の2022年型クロスオーバー車「コナ」を下取りに出し、4万4000ドル(約660万円)でアキュラの新型コンパクトカー「インテグラ」を購入。バスフォードさん(42)はアキュラのスポーツタイプ多目的車(SUV)「MDX」を手放し、7万2000ドルの電動SUV「ZDX」をリース契約した。

  「トランプの政策に巻き込まれたくない」とハンフリーズさんは話す。

米国では自動車関税の発動を控えた駆け込み購入が広がっている

  トランプ氏は28日、関税が発動される前に自動車購入を急ぐ必要はないと米国民に呼びかけた。だが、購入意欲の高い消費者が考えを変える公算は小さいようだ。

  S&Pグローバル・モビリティの主任アナリストであるクリス・ホプソン氏は「賢い消費者は3月の販促を活用して、将来的な価格の不確実性に備えようとしているようだ」と声明文で指摘。「想定される関税の影響により、今後自動車がさらに値上がりする恐れがあり、需要や生産環境には下振れリスクがくすぶっている」と述べた。

  輸入車は米国の新車販売の約半分を占めており、米国内で生産される車の多くも、輸入部品に大きく依存している。各車両にどの程度の関税がかかるのか、追加コストがどれだけ消費者に転嫁されるかは見通せない。過去の関税引き上げやサプライチェーンが混乱したコロナ禍では、自動車メーカー、部品サプライヤー、消費者の間で数年にわたって負担が分散された。

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  自動車価格はほんの数年前と比べても、すでに高額になっており、金銭的に余裕のある層ですら、購入を躊躇(ちゅうちょ)する動きが一部で出ている。調査会社エドムンズによると、2月の新車取引価格は平均で4万7373ドルに達した。調査会社オートフォーキャスト・ソリューションズのグローバル車両予測担当バイスプレジデント、サム・フィオラニ氏は、トランプ氏の関税に伴う値上がりへの懸念から、新車購入を前倒しにする人が増えていると述べた。

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  エドムンズでは、第1四半期の販売台数が1%増の380万台になると予想。実際にそうなれば、今年は2021年以来の好調なスタートを切ることになる。同社のアナリスト、ジェシカ・コールドウェル氏は、関税への懸念から前倒しされた側面もあるが、同時に市場全体の健全な需要と供給を反映している可能性が高いとみている。だが、通商政策に関連した値上げや在庫の混乱が4月以降、販売に影響を及ぼし始める恐れがあるという。

  調査会社コックス・オートモーティブでは、第1四半期の販売台数を季節調整済みの年率換算ベースで1580万台に達すると予測している。トランプ氏の関税発表前は同1630万台と予想していた。

原題:Car Shoppers Outracing Trump Tariffs Poised to Lift Auto Sales(抜粋)

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