アメリカに繁栄をもたらす「移民パワー」を“制限”するトランプ…すでに現れ始めた経済面での悪影響とは?(Wedge(ウェッジ))
1月スタートした第2次トランプ政権下で、移民制限の動きが加速している。その一方、IT、AIなど最先端ビジネスにおける移民ファミリーの活躍ぶりはきわだつばかりだ。時代の流れに逆行する政策が続けば、米国の今後の繁栄にもブレーキとなりかねない。 【写真】米国経済をけん引する〝移民〟
世界唯一の超大国となった米国――。いまさら言うまでもなく、その基礎を築いたのは、かつて英国、ドイツなど欧州先進国から移住してきた「WASP(アングロサクソン系でプロテスタントの白人)」達だった。 その中でも特に、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、米国基幹産業の発展・繁栄に絶大なる影響力を発揮した事業家として知られるのが、多くの国の教科書にも登場する以下のような人物たちだった: ・アレキサンダー・ベル=1876年に米国で最初の電信・電話会社「AT&T」を設立。1915年には、ニューヨーク―サンフランシスコ間をつなぐ初の大陸間電話通信ネットワークの完成により、全米にまたがる通商・金融取引拡大の基盤を作った。 ・トーマス・エジソン=1880年に一般家庭用電灯サービス会社「Edison Electric Illuminating Company」を設立。電力供給により市民生活に革命を起こし、産業発展の重要なエンジン役を担った。 ・アンドリュー・カーネギー=1889年に世界最大規模の「カーネギー鉄鋼会社」を設立。”鉄鋼王“として大富豪となり、その後「カーネギー財団」をベースにシンクタンク、大学教育、音楽などの芸術分野にも影響力を行使。 ・ヘンリー・フォード=1903年に”Aモデル“と呼ばれた初の四輪駆動車を開発、その後、次々にモデルチェンジを発表すると同時に、流れ作業による大型生産工場での大量生産体制の基礎を作った。 ・ジョン・D・ロックフェラー=1870年に石油会社「Standard Oil」を設立。19世紀末から20世紀前半にかけて本格化した製造業ブームによりエネルギー需要も爆発的に拡大、巨万の富を築いた。その後、金融業、不動産事業にも進出。 このほか、米国発展のパイオニア的役割を果たした著名人としては、“鉄道王”として知られたアベレル・ハリマン、基幹産業を資金面で支えた銀行家J.P.モルガンなど枚挙にいとまがない。彼らに共通するのは、例外なく「WASP」だった点だ。 政界においても、建国以来の大統領はつねに「WASP」で占められ、近年でもジョンソン、ニクソン、フォード、カーター、レーガン、ブッシュ父子、クリントン各歴代大統領、そしてトランプ現大統領がいずれも「WASP」として知られている。 (例外は、白人だがカトリック教徒のJ・F・ケネディ、ジョー・バイデン両氏、黒人のバラク・オバマ氏の3人のみ)