環境先進国のドイツでもEVの販売台数は激減…世界中でハイブリッド車への乗り換えが進んでいるワケ(プレジデントオンライン)
世界中でEV離れが進んでいる。経済安全保障アナリストの平井宏治さんは「電気自動車の需要と供給の間には大きな価格ギャップがある。欧州では24年以降にそれが露呈し、EVおよびPHEVの普及率が低下した」という――。(第2回) 【図表】日欧米の電気自動車(EV)新車登録台数 ※本稿は、平井宏治『国民搾取』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。 ■中国が世界に売り込むEVの意外な売れ行き 電気を使ってモーターを駆動させる自動車のことをEV(Electric Vehicle)というが、EVには4種類ある。 まず、動力源は電気だけでエンジンは搭載していない①BEV(Battery Electric Vehicle、バッテリー式電気自動車)である。一般的にEVといった場合にはこれを指す。本章のEVもこのバッテリー式電気自動車のことを指す。 ②HEV(Hybrid Electric Vehicle、ハイブリッド車)は、エンジンとモーターの両方を搭載して、エンジンで発電した電気をモーターに供給する。外部電源からの充電はしない仕組みだ。 その他に、外部電源からの充電が可能なハイブリッド車である③PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、プラグインハイブリッド車)、水素による燃料電池で発電した電力でモーターを回す④FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle、燃料電池自動車)がある。 中国が躍起になって生産し、世界に売り込んでいるのは、①バッテリー式電気自動車と③プラグインハイブリッド車である。 ■欧州で進むハイブリッド車へ乗り換え 国際エネルギー機関(IEA)の発表によれば、世界のEVおよびPHEVの普及率(新車販売台数に占める比率)は2020年以降に特に上昇し、2020年4.2%、2021年9%、2022年14%、2023年18%と上昇を続けている。ところがこの上昇傾向が2024年、特にヨーロッパにおいて変化を見せた。 ACEA(European Automobile Manufacturers' Association、欧州自動車工業会)が公表しているデータによれば、2023年7月〜12月の新車登録台数実績は、EVが108万625台、PHEVが50万9,623台の計159万248台だったが、2024年7月〜12月の新車登録台数実績は、EVが103万8,846台(グラフ1参照)、PHEVが46万4808台の計150万3654台に減少した。 2024年のEU内の全新車登録台数は約1060万台で前年度比0.8%増加した。新車登録台数が増えるなか、EV・PHEVは、逆に200万台の大台を切り、199万3102台に留まった。2023年度のEV・PHEV新車登録台数は、200万の大台を超えていたので、1.3%の減少だ。ガソリン車の新車登録台数は合計427万3672台で前年度から6.8%の減少。ハイブリッド車の新車登録台数は406万8308台で、前年度比19.6%増加した。 動力別のシェアでは、ガソリン車が33.3%、ハイブリッド車が30.9%に対し、EV・PHEVは13.6%となった。2025年度以降は、ハイブリッド車がガソリン車を追い抜くだろうと予測されている。ガソリン車のシェアが大きく減りつつあり、ハイブリッド車のシェアが増加しつつあることから、ヨーロッパではハイブリッド車への乗り換えが起きているということがわかる。きわめて興味深い動向だ。