ヘッジファンドのエネルギー株投資戦略に変化、4年ぶりに石油株売り
ヘッジファンドは石油株を売り、太陽光関連株のショートポジションを縮小させている。過去4年間にわたり支配的だったエネルギー関連株の投資戦略を転換しつつある様子だ。
ブルームバーグ・グリーンが石油や風力、太陽光、電気自動車(EV)の業種で世界指数に採用されている銘柄のポジションを調べたところ、昨年10月初めから今年6月までで、株式に特化したヘッジファンドは平均して石油株を最もショートした。
2021年以降、ヘッジファンドは石油株を大きく買い越してきたため、戦略を一変させた格好になる。ブルームバーグ・グリーンは、オルタナティブ投資のデータ専門会社ヘーゼルツリーの情報を基にデータを集計。ヘーゼルツリーにはおよそ700に上るヘッジファンドが情報を開示し、この合計運用資産は約7000億ドル(約100兆円)と、業界全体の15%程度に相当する。
このデータに基づくと、同期間中にヘッジファンドは太陽光関連株への売り持ちを解消。風力関連株には買い越しを続けた。
トライベカ・インベストメント・パートナーズのポートフォリオマネジャー、トッド・ウォーレン氏は「一部のクリーンエネルギー関連銘柄に底打ちの兆し」が見られると述べ、それが起きたのは「石油市場で需給バランスに対する一定の懸念が生じた時期と重なる」と指摘した。
今回行った分析によると、S&Pグローバル・オイル指数の構成銘柄を売り越したヘッジファンドは、買い越したヘッジファンドよりも昨年10月からの9カ月のうち7カ月で多かった。対照的に、2021年1月から24年9月までの間の45カ月で、売り越しが買い越しを上回ったのは8カ月しかなかった。
この動きがあったのは、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国で構成するOPECプラスの一部が市場シェアを維持しようと供給量を増やした時期だ。ロンドンのヘッジファンド、トリウム・キャピタルでポートフォリオマネジャーを務めるジョー・マレス氏は、石油業界にとって供給量の引き上げは「歴史的に良い結果とはなっていない」と語った。
米国と中国の景気減速が明らかになりつつあるほか、年内の残り期間を通じて世界的に石油在庫が増加を続けるとの見通しが、石油業界に対する懐疑的な見方を膨らませている。
シンガポールを拠点とするカメット・キャピタル・パートナーズのケリー・ゴー最高投資責任者(CIO)は、「あらゆる分野が全般的に減速する」と意識された時、「その石油を誰が買うのか」が問題になるとの見解を示した。
米コネティカット州グリニッジのヘッジファンド、トール・ツリーズ・キャピタル・マネジメントは、石油株をショートしている。創業者でCIOのリサ・オーデット氏は、「原油価格は大幅に下落する。特に2026年にはそうなると、われわれはみている」と語った。
一方、太陽光と風力関連株の見通しは改善し始めている。
インベスコ・ソーラー上場投資信託(ETF)構成銘柄を平均で売り越しとしているヘッジファンドの割合は、6月に3%に低下した。これは環境関連銘柄が過去最高値付近にあった21年4月以来の低水準。また、ファースト・トラスト・グローバル・ウインド・エナジーETFの構成銘柄を買い越しとしているファンドの数は、2月に2年半ぶりの多さだった。6月に買い越しの数は減ったものの、依然として買い越しが売り越しを大きく上回った。
一部のヘッジファンド運用者は、人工知能(AI)がエネルギー需要の急増を引き起こし、再生可能エネルギーにとって新たな追い風になるとの見方を示している。
ロンドンを拠点とするセルウッド・アセット・マネジメントの株式担当CIO、カリム・ムサレム氏は「AIが人生で目にする最大の出来事になるだろうと、市場は伝えている」と指摘。AIによるエネルギー需要を満たすには再生可能エネルギーが大きな役割を果たす必要があり、「最も早く市場に供給できるから」だと説明した。
ブルームバーグNEF(BNEF)は7月、2035年までに必要とされる発電能力の増加のうち、半分以上を再生可能エネルギーが占める公算が大きいとする報告を発表していた。
原題:Hedge Funds Unwind Energy Bets That Dominated Since 2021 (1)(抜粋)