ジャクソンホール会合がスタート-パウエルFRB議長講演など注目点

米カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムが21日の夕食会を皮切りに、ワイオミング州ジャクソンホールで始まった。23日まで開かれる会合には世界各国・地域の中央銀行総裁やエコノミスト、ジャーナリストが参加する。

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は米東部時間22日午前10時(日本時間同日午後11時)から講演する。ウォール街が最も注目しているイベントだ。

  米金融当局者が9月16、17両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合でどのような決定を下すのか、その手がかりを求めて投資家や市場関係者が注視している。経済への米関税措置の影響を見極めるため、今年に入って金利を据え置いてきた米金融当局は、利下げ再開の瀬戸際にある可能性がある。

  パウエル議長は講演で、同僚の当局者の見解がどちらの方向に傾いているのかを示唆する可能性がある。インフレ率が2%の当局目標を上回る一方で、雇用の伸びが鈍化していることで、利下げ時期について当局者間で意見が割れている。

  市場の動向に基づけば、投資家は9月利下げを盛り込んでおり、年内に少なくとももう1回の政策金利引き下げを予想している。金利据え置きを巡って米金融当局批判を繰り返しているトランプ大統領は、パウエル議長らに大幅利下げを注文。政権当局者の一部は9月会合での0.5ポイントの大幅利下げを催促している。

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  パウエル議長は講演で、米金融当局が進めている金融政策枠組みの見直しにもフォーカスする見通しだ。物価安定と最大限の雇用の実現という目標達成に向けた指針を示すこの枠組みに、幾つかの修正が加えられると見込まれている。2020年に導入された一部の変更点を削除する方向で調整が進められている。

出席者

  メインのプログラム日程では、パウエル議長以外の米金融当局者による講演は予定されていないものの、FRB理事(1人欠員)と地区連銀総裁の計18人全員が公式出席者リストに名を連ねており、多くがメディアのインタビューに応じる予定だ。ボストン連銀のコリンズ総裁は東部時間22日午前9時にブルームバーグテレビジョンに出演だ。

  23日には日本銀行の植田和男総裁、イングランド銀行(英中銀)のベイリー総裁、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が登壇するパネル討論が予定されている。3氏は今回の会議のテーマである「移行期にある労働市場」が政策にとってどのような意味を持つのかについて議論する。

  アルファベットの社長兼最高投資責任者(CIO)、ルース・ポラット氏は22日の昼食会で基調講演を行う予定だ。この時間帯は通常、海外の中銀当局者が担当することが多い。過去のジャクソンホール会合の議事日程を振り返ると、民間部門のスピーカーによる講演は2008年以来となる。

  この他にはバーナンキ元FRB議長、コーン、ファーガソン、ブラインダー各元副議長のほか、ホワイトハウスの米大統領経済諮問委員会(CEA)のピエール・ヤレッド、アーロン・ヘッドランド両氏、ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁、欧州委員会のドムブロフスキス委員(経済担当)らが出席する。

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パネル討論会・論文

  会合では、新たな研究論文4本も取り上げられ、それぞれの著者が発表に臨む。

  23年に女性の労働参加に関する研究でノーベル経済学賞を受賞したクラウディア・ゴールディン氏は、東部時間22日午前10時半から、世界的な出生率の低下を検証する論文を発表する予定だ。

  午前11時55分には、ミシガン大学のリンダ・テサー経済学教授が米国における労働市場の流動性低下が経済に与える影響についての論文を発表する。

  午後0時55分からは、シカゴ大学のウフク・アクシギット教授、ハーバード大学のローレンス・カッツ教授、コロンビア大学のローラ・フェルトカンプ教授が「テクノロジーと労働市場」について議論を行うパネル討論会が開催される。

  23日には、カリフォルニア大学バークレー校のエミ・ナカムラ教授が東部時間午前10時から、インフレ高進に中銀がどのように対応できるかについて講演を行い、午前11時にはハーバード大学のルートヴィヒ・シュトラウブ教授が米債務の持続可能性を分析した論文を発表する予定となっている。

原題:Fed’s Jackson Hole Conference Is Underway: Here’s What to Expect(抜粋)

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