SFで無得点に終わったTEAM IMPUL、年末テストは1台で臨む。来季体制縮小も囁かれる中、オサリバンへ寄せる期待「素質は間違いない」

 12月10日(水)からスタートするスーパーフォーミュラの合同テスト。2025年シーズン大苦戦に終わったTEAM IMPULはザック・オサリバンの1台のみのエントリーであり、来季の参戦体制が注目されるチームのひとつとなっている。

 国内トップフォーミュラの名門として君臨してきたTEAM IMPULは、近年では2021年にチームタイトルを獲得したものの、ここ数年は成績が低迷。今シーズンは高星明誠とオリバー・ラスムッセンというルーキーコンビにドライバーラインアップを一新したが、苦戦には拍車がかかってしまった。高星が2度11位を記録するも、入賞にはあと一歩届かず。まさかのノーポイントでシーズンを終えた。

 復活を期したインパルにとって、今シーズンはドライバーラインアップ、そしてエンジニアリング体制という点でも変化の大きいシーズンと言えた。そしてその変化は、無情にも向かい風になってしまった感がある。

 レギュラードライバーを務めた高星とラスムッセンは、共にフル参戦経験のなかったドライバー。ラスムッセンは開幕ラウンドのクラッシュで負傷し2大会4レースを欠場するなど出だしからつまずいた。そしてスポット参戦、開発ドライバーとしてのテスト経験があった高星は入賞争いを展開するところまでパフォーマンスを上げることができたが、その一歩先の景色を見ることは叶わなかった。

 またエンジニアに関しても、高星が乗った20号車を担当したベテランの村田卓児エンジニアは古巣復帰1年目。ラスムッセンが乗った19号車は、アメリカ人エンジニアのオスカー・ゼラヤが途中離脱したことで体制変更を強いられた。

 TEAM IMPULの星野一樹監督は、苦しんだ2025年シーズンをこう振り返る。

「ドライバーはふたりとも頑張ってくれましたが、ルーキーだったというところで彼らとしても厳しい思いをしたと思います」 

Mitsunori Takaboshi, ITOCHU ENEX WECARS TEAM IMPUL

写真: Masahide Kamio

「ミツ(高星)も序盤はかなり苦しみましたが、シーズン途中でポイント争いをできるところまで頑張ってくれました。2年、3年とやれればもっと上に行けただろうし、彼には申し訳ないです。正直辛い部分、可哀想な部分がありました」

「オリバーに関しても、開幕戦のクラッシュによって波に乗っていけなかった部分があると思います。本当に色々な悪いことが重なってしまったかなと」

「エンジニアに関しても、村田さんがインパルに戻ってきてくれて、色々なことを再構築していく必要がありました。その中でデータを積み重ね、シーズン序盤と比較すれば最後の方は圧倒的に内容は良くなっていたのですが、シビアに言えばノーポイントで結果を出せなかったことには変わりません」

「とはいえ、内容としては進歩をしていたので、今回のテストもすごく楽しみだし、来年に向けても本当にポジティブな気持ちでいます」

 ラスムッセンに関しては今季限りでチームを離脱することが確実視されており、上記の星野監督のコメントを聞く限り、高星も離脱ということになるだろう。そして今回の鈴鹿テストでは前述の通り、今季KONDO RACINGから参戦したオサリバンを20号車のドライバーとして起用するが、エントリーリストには19号車の名前はなし。1台のみでのテスト参加だ。

 星野監督は来シーズンの参戦体制に関しての一切のコメントを控えたが、来季のインパルは1台体制に縮小するのではないか囁かれているのは事実だ。

 また、その噂に真実味を持たせるような気になる出来事が11月の最終ラウンドでもあった。

 このレースウィークでは、鈴鹿サーキットでSDG株式会社の2026年モータースポーツ活動に関する発表が行なわれた。SDGは今季からスーパーGTで、TRS(東京ラヂエーター)と共にTEAM IMPULをスポンサードをしているが、来季からはスーパーフォーミュラでもサポートすることが明かされた。

 この会見に出席した星野監督は、挨拶の際に号泣。マレリ(旧カルソニック)のスーパーGTスポンサーシップ終了が発表された後、SDGの柏木健作CEOが数時間以内に連絡をくれたというエピソードを明かすと、しばらく話すことができなくなり、なんとか声を絞り出しながら、「来年度はスーパーフォーミュラも応援していただけることになりました。精一杯頑張ります」と締め括った。

 この涙には当然、スーパーGTでのスポンサードに対しての感謝も当然含まれているであろうが、彼の男泣きにはそれだけではない何か……1年以上前の出来事を回想しての涙とは思えない何かが感じられた。SDGのサポートによってスーパーフォーミュラでの参戦継続ができることに対しての感謝の涙であれば説明がつくが……考え過ぎであろうか。

Zak O'Sullivan, TEAM IMPUL

写真: Motorsport.com Japan

 いずれにせよ、星野監督は今回のテストに参加するオサリバンに大きな期待を寄せている。オサリバンはSFルーキーイヤーの今シーズンを入賞2回、ランキング15位という成績で終えたが、元ウイリアムズ育成で、2021年のGB3でチャンピオン、2023年のFIA F3ではシリーズ2位に輝くなど素材は一級品。今季スーパーフォーミュラと並行して参戦したスーパーGTのGT300クラスでも、小林利徠斗とのペアでタイトル争いに絡んだ。

「(英国の)オートスポーツアワードを受賞したドライバーですから、並のドライバーじゃないですよね」

「まだ20歳だし、素質という意味では間違いないと思っています。スーパーフォーミュラ1年目はサーキットもクルマもタイヤも知らないという中で、厳しいと思います。でもその中で1年戦った彼がどんな走りをしてくれるのかすごく楽しみです。スーパーGTでも良い走りをしていましたからね」

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