焦点:カナダ、トランプ関税後の新貿易秩序に布石 中国などと協定加速

写真はカナダのカーニー首相と中国の国旗。1月16日、北京市内で撮影。REUTERS/Carlos Osorio

[オタワ/ドーハ/ドバイ 20日 ロイター] - カナダのカーニー首相は、中国との関係強化などを通じ、新しい世界の貿易秩序構築を主導しようとしている。米国との長年にわたる関係が、トランプ米大統領の関税措置によって変調を来したためだ。しかし、カナダは米国への経済依存度がなお圧倒的に大きいという点が、こうした取り組みの足かせになっている。

カーニー氏は欧州の同盟国以外に貿易相手を広げる動きを加速させ、先週中国との関税引き下げに合意し、その他の国との協定締結も推進中だ。背景には、トランプ氏の対外政策がますます攻撃的かつ予測不能になっているという切迫した事情がある。

トランプ氏がカナダに関税を発動し、カナダ併合の考えまで言及した中で行われた2025年の総選挙で、カーニー氏が率いる自由党は、新たな経済的な連携の枠組みを創出することでカナダを生き残らせると約束し、勝利した。

この約束を果たすため、カーニー氏は世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)出席に先立ち、以前はカナダが重視してこなかった世界中の国々を訪問。18日にはカタールの首都ドーハで「多くの多国間関係、国際機関、ルールに基づくシステムが、米国を含むさまざまな国のさまざまな決定によって崩れつつある」と語り、防衛と安全保障の協力の枠組みを拡大すると表明するとともに、投資促進合意の面で進展があったと強調した。

カーニー氏は「進展が見られる分野、そしてカナダや志を同じくする諸国が進展を目指している分野は、複数国間での合意を通じたものだ」と述べた。

カナダは既に欧州連合(EU)と環太平洋諸国の橋渡し役を務めることも提唱している、とカーニー氏は力説する。

カナダのアナンド外相もドーハでロイターのインタビューに応じ「このような変動期において、カナダは前に出て主導的役割を果たす。われわれはこの役割を支援してくれる国を確実に話し合いの場に呼ぶことにする」と語った。

<過度の中国接近に警戒感も>

EUも貿易多角化の取り組みを強化している。25年間協議を続けてきた南米の関税同盟メルコスル(南部共同市場)との自由貿易協定(FTA)に署名し、インドネシアと包括的な経済連携協定(EPA)の締結に合意するとともに、メキシコとの協力協定を更新する話し合いが完了した。

さらにマレーシア、フィリピン、アラブ首長国連邦(UAE)、インドとのFTA交渉を再開している。

ただEUの輸出全体に占める米国向けの比率が20%余りなのに対し、カナダは全輸出の70%近くが依然として米国向けだ。

カナダ輸出開発公社(EDC)のシニアエコノミスト、プリンス・オウス氏は、カナダがモノの対米輸出を10%減らすには、中国やドイツ、フランス、メキシコ、イタリア、インド向けの輸出を倍にするか、同規模の輸出先を見つけなければならないと分析した。

カーニー氏は、向こう10年で米国向け以外の輸出を倍にすると約束しているが、この目標達成にはカナダが現在2番目に大きな貿易相手の中国へ過度に依存するしかなくなる、というのが複数の専門家やエコノミストの見方だ。

法律事務所マクミランのパートナー兼国際貿易共同責任者、ウィリアム・ペルラン氏は「極めて慎重になるべきだ。中国とあまりに急速に(経済を)結びつければ、カナダ経済の長期的な安定性を巡って複数の問題も生まれる」と警告した。

ペルラン氏によると、中国の製造業は一夜にしてカナダ市場をあらゆる商品で埋め尽くす力があるという。

カナダの全輸出に占める米国向け比率は25年10月時点でコロナ禍を除くと過去最低だったが、なお67.3%に達する。カナダ政府はアジアへの石油販売拡大を望むものの、国内で産出する原油の9割は米国に出荷されている。

複数のエコノミストは、カナダの対米輸出比率が近いうちに大きく低下する公算は乏しいと予想する。多くの企業は、今年行われる米国・メキシコ・カナダ貿易協定(USMCA)の見直し協議の結果を見守っているところだ。

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