「照明を落とせ」とトランプ氏、その時の気持ちを南ア大統領が振り返る
南アフリカのラマポーザ大統領は先週ホワイトハウスで行われたトランプ米大統領との会談を振り返り、いわゆる「待ち伏せ」を笑い飛ばしてみせた。
ラマポーザ氏は27日、ケープタウンで開かれたインフラ会議に出席。入場時に会場の照明が落とされた時には大統領執務室での出来事を思い出したと述べた。「なんだこれは。またあれか、と一瞬思った」と語った。
21日に大統領執務室で行われた首脳会談で、トランプ氏は室内の照明を落とすようスタッフに指示し、南アで白人に対する「ジェノサイド(大量虐殺)が横行しているという陰謀論を証明しようとラマポーザ氏に動画を見せた。
ラマポーザ大統領が先週ワシントンを訪れたのは、トランプ氏が導入した大規模関税からの免除を求めてのことだった。米国は南アにとって、中国に次ぐ貿易相手国。両氏の会談は和やかなムードで始まったが、トランプ氏が突然、数分間の動画視聴の機会を設けることで一変した。
ラマポーザ氏は「あの時私はとても快適に座っていた。本格的な話し合いに入りそうだった時に、突然『照明を落とせ』という声がした」と振り返った。「これを待ち伏せだという人もいる。困惑したというのが私の気持ちだ。何が始まるのだろうかと考えていた」と語った。
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トランプ米大統領は数カ月前、白人農家に対する攻撃という陰謀論を理由に南アフリカへの支援を凍結。今回の首脳会談はその緊張の中で初めて行われた。トランプ氏の南ア批判は、同国がイスラエルをジェノサイド条約違反で国際司法裁判所(ICJ)に提訴したことにも向けられている。
トランプ氏はアフリカーナー系白人がジェノサイドの犠牲者であり、農地を政府に取り上げられていると主張。米政府のチャーター機で南アから渡米したアフリカーナー系白人49人を、難民として受け入れた。アフリカーナーは主にオランダ系移民の子孫。
1994年にアパルトヘイト(人種隔離)が終了して以降、南アフリカでは公式な土地接収は行われていない。凶悪犯罪の主な被害者は若い黒人男性であることも、警察の統計で明らかになっている。
ラマポーザ氏はそれでも今回の訪米を評価し、新たな通商合意の検討に道を開くものだとしている。11月にヨハネスブルクで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に、トランプ氏が出席することにラマポーザ氏は自信を示した。G20議長国の役割は来年、米国に引き継がれる。
原題:Ramaphosa Recalls His Bemusement at Trump Oval Office Encounter(抜粋)