水素案件が世界中で頓挫している
GEPRH2 gas pump symbol in the sky. 3d illustration.
style-photography/iStock
水素が「筋の悪い」エネルギーであり、経済性が成立する見込みはないことは、この連載でも松田智氏が何度も説得的に述べていた。
豪州と欧州で停滞する水素プロジェクト
昨年11月のニュースだが、関西電力が丸紅などと豪州で計画していた水素製造事業から撤退するとの報が流れた。プラントや収支計画などの基本設計を詰める中で、製造コストが想定以上に高く、採算に合わないと判...
水素先進国が直面する種々の現実的困難と対応 vs. 日本の脳天気
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欧米各国は、水素利用計画に熱心に取り組んでいる。例えばEUでは、2022年5月に欧州委員会が公表したREPowerEU計画において、2030年に水素の生産と輸入を各1000万トンとして、エネルギーのロシア依存を脱却するとの目標を掲げた。
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今回はChatGPT(チャッピー)を活用して追加情報を集めてみたので紹介しよう。詳しくはリンクをご覧いただくとして、要点のみ、以下で述べる。
- まず、世界中で、大型の水素プロジェクトが頓挫している。欧州で8件、米国で3件、アジア太平洋で7件、ラテンアメリカで1件が確認された。理由は様々挙げられているが、根本的には、政府の支援込みでも採算が合わない、ということ。
- 順調に運転開始した大型プロジェクトもある。ただし、物理的に(再エネ証書利用や再エネ電気料金メニューなどではなく)ネットゼロを既に達成している案件は殆ど存在しない。実態に運転開始したのはスペインで1件あることが確認されているのみである。ただしこの電解設備は2万キロワットに過ぎないので大型案件というべきかは、ハテナであるが。。なお中国には今年中に運転開始するより大型の案件がある。
さて水素が「筋が悪い」理由は松田氏が縷々述べてきた通りだけれども、1件だけ、高校生レベルで理解できることを補足しよう。こちらも詳細はリンクにして、以下は要約だけ述べる。
水素はH2、メタンはCH4であるが、おなじ1分子(同じ体積)が燃えたときの熱量は3倍も違う:
その一方で、水素も、天然ガスの主原料であるメタンも、気体の状態方程式PV=nRTを思い出せば、同じ分子数であれば同じだけの体積になる。
ということは、同じだけの熱量を得るためには、水素はメタンの3倍の体積が必要になる。
そうすると、単純に言っても、巷で見かけるガスタンクは、メタンから水素に切り替えると3倍の量が必要になる。実際には、それよりは、圧力の高いタンクを作ることになるが、これはもちろんコストがかかる。なお水素は分子が小さいので、金属を脆弱にしたり、漏れたりしやすいので、タンクには特殊な加工も必要になる。
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