3メガ銀の4-12月純利益3.7兆円超と過去最高-追加利上げで上振れ
国内3メガバンクグループの2024年4-12月決算が4日、出そろった。合計の連結純利益は前年同期比37%増の約3兆7400億円と9カ月累計の最高額を更新した。日本銀行の利上げや政策保有株の売却が追い風となり、各社が昨年11月時点で見込んでいた今期(25年3月期)1年間分の金額に達した。
個別では三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が前年同期比35%増の1兆7489億円、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が同43%増の1兆1360億円、みずほFGは同33%増の8554億円だった。利上げ効果などにより企業向け貸し出しなど顧客部門を中心に堅調だった。
純利益額は、みずほが9カ月間にすでに通期計画(8200億円)を上回り、三井住友(同1兆1600億円)、MUFG(同1兆7500億円)ともほぼ計画と同水準に達した。3社とも今期は最高益を更新する見込み。
日銀は昨年3月にマイナス金利政策を解除し、同7月と今年1月に追加利上げを決めた。金利上昇は企業向け融資の利ざやの拡大などにつながるため、今期中にあった2度の利上げが利益の大きな上振れ要因となった。今後は通期予想がさらに上方修正されるかが焦点となる。
MUFGの原隆行CFO(最高財務責任者)室長は決算説明会で、第4四半期についても引き続き顧客部門の収益好調を見込む一方、「将来の収益性・収益力強化のため、外債を中心とした債券ポートフォリオの組み換えを行っていく予定」とし、業績予想を据え置いた。海外の金利上昇により含み損を抱えた外債の処理で損失を計上する可能性がある。
もう一つの利益の押し上げ要因は、ガバナンス(企業統治)や資本効率の改善の観点から加速している政策保有(持ち合い)株式の削減に伴う売却益だ。政策株売却益を含む株式等関係利益はMUFGで前年同期より2607億円、三井住友FGで同2866億円、みずほFGで同546億円それぞれ増加した。
三井住友FGでは24年4-12月期に簿価ベースで1220億円分を削減、応諾済みの未売却分も1100億円あるという。24年度から5年間で6000億円を削減する目標は順調に進んでいる。MUFGは今期これまでに2250億円を売却、売却合意残高も2480億円あるとした。
複数のリスク
好調なメガバンクの収益にもリスクはある。関税引き上げをはじめトランプ米大統領の打ち出す政策に対する不透明感や、ウクライナや中東での紛争などだ。銀行収益に直結する日銀の金融政策に影響を及ぼす可能性があるほか、株価など市場の変動要因にもなりかねない。
金利上昇は融資を受ける企業にとっては負担となる。今のところ好業績の大企業を中心に資金需要は旺盛で、与信費用にも目立った増加は見られないが、中堅・中小企業などで負担感が増してくる可能性がある。銀行としては顧客サポートに加え、与信管理に気を配る必要も出てきそうだ。
みずほFGの峯岸寛財務企画部長は3日の決算説明会で、「インフレが継続し、利上げが継続されると、国内の中堅・中小企業や一部の個人顧客はネガティブな影響も着実に広がることも想定される」と述べた。
各行は政策保有株の売却額を順調に積み上げている一方、売却益が追い風になる環境には限りがある。MUFGの十川潤グループCFOは1月22日に行ったインタビューで、30年代前半に売却益が枯渇してくる可能性を示唆し、それでも高い財務指標を達成する必要があると危機感を示した。