【見たくない人は見ないでね】ネズミが飛んでるコウモリを捕食する様子が撮影されてしまう。人間にとっても悪いニュース
ラットがバットをゲットする物語。
思いもよらないホラーストーリーとなると、どんなに人間ががんばっても、自然界のほうが一枚上手のようです。ネズミがコウモリの冬眠場所付近で待ち伏せして捕食しているという報告がドイツから飛び込んできました。
ドブネズミがコウモリを捕食
学術誌Global Ecology and Conservationに掲載された研究結果の執筆者たちは、この「コウモリのみを捕食する少数のネズミの個体群」の存在が極端なケースであってほしいと願っていたそうです。
ところが、調査の結果、ドブネズミ(学名: Rattus norvegicus)がヨーロッパに生息するドーベントンコウモリ(学名: Myotis daubentonii)とノレンコウモリ(学名: Myotis nattereri)を捕食する恐ろしい方法が明らかになりました。
さらに深刻なのは、ドイツ北部にある2カ所の主要なコウモリの越冬地でもドブネズミがコウモリを捕食していることです。この事実を受けて、研究者はコウモリの個体群の安全について強い警鐘を鳴らしています。
夜間の狩猟行動
Image: Gizmodo / YouTubeこの調査は、数年にわたって実施されました。まず、2020年にドイツ北部の都市部で、コウモリの個体群が生息するゼーゲベルガー・カルクベルク洞窟の周辺で、赤外線監視カメラを用いてネズミの行動を記録しました。
5週間に及ぶ初期観察では、ネズミが30回コウモリを捕まえようと試みて、13回成功したそうです。
さらに論文によると、「少なくとも52匹のコウモリの残骸と食べ残しが1カ所で発見されたことから、ネズミが定期的にコウモリを捕食していることと、エサを貯蔵している可能性があることが明らかになった」といいます。
Image: Knörnschild et al. 2025映像からは、2種類の狩猟方法も判明しました。ネズミは、コウモリが頻繁に飛び交う場所を巡回しながら、飛んでいるコウモリを捕らえるか、着地するのを待ち伏せして襲います。
いずれの場合も、ネズミはターゲットの近くに位置取りし、捕まえて素早く致命傷を与えます。最初の攻撃で仕留めきれない場合は、前足でコウモリを押さえつけて、もう一度かみついてとどめを刺すといいます。
Image: Knörnschild et al. 2025別の調査でもネズミによるコウモリ捕食の証拠を発見
その後、2021年から2024年にかけて実施した追跡調査によって、ネズミによるコウモリ捕食のさらなる証拠が集まりました。
最初の調査場所と同じ地域に位置する、もうひとつの主要なコウモリ生息地であるリューネブルク石灰岩山付近で行なわれたこの調査でも、「コウモリの残骸の貯蔵庫」が発見されたそうです。
研究チームは、貯蔵庫の配置が最初の調査で発見されたものと酷似していると指摘。このことから、どちらもドブネズミによるものである可能性が高いと考えられています。
コウモリにとっては深刻な事態
論文によると、ドブネズミがコウモリの天敵ということではなく、とにかく「手当たり次第なんでも食べる」と表現する方が正確なのだとか。たとえば、日本の魚市場周辺に生息するドブネズミは食べているものの86%を魚が占めているとのこと。
つまり、ネズミがコウモリばっかり食べているというわけではないにしても、大部分をコウモリが占めている可能性があることを示唆しています。
仮にそうだとすると、ネズミに捕食されまくるコウモリの個体群に深刻な脅威をもたらすおそれがあります。研究チームは、「コウモリは昆虫の個体数調整や種子の散布、受粉など、地球規模で生態学的に重要な役割を担っており、多大な生態系サービスを提供しています」と論文で述べています。
人間にも影響が及ぶ可能性
コウモリもネズミも、新型コロナウイルスを含む多くの病原体を保有していることで知られています。この思いがけない捕食関係は、人間にとっても懸念材料になるとのことです。
今回の研究では、感染症の拡大を直接調査していません。しかし、ネズミとコウモリの接触や捕食行動によって病原体がやり取りされるおそれがあるため、そうした潜在的リスクへの注意喚起として、この発見には意味があると研究チームは強調しています。
ラットとバットが交換した病原体を人間がゲットするのはバッドなので、なんとしても避けたいところです。
Source: ScienceDirect