関税収入への依存強めるトランプ政権、減税の財源で-貿易戦争必至か
トランプ米大統領と同氏の経済チームは、議会で減税を成立させようと模索する中、関税がもたらす収入にますます焦点を絞りつつある。貿易戦争の回避に努める諸国にとって、不穏な前途が示唆される。
議会共和党は今年失効する2017年の減税を延長する計画や、その他の追加減税に関して取り組んでおり、トランプ氏はできる限り多くの歳入を得ることが必要となっている。
ホワイトハウスは、貿易不均衡の是正からディール(取引)を結ぶための各国への影響力強化まで、あらゆる目的のために関税を利用すると主張してきた。一方で、エコノミストはトランプ氏の論理を疑問視し、関税は成長鈍化につながり、結果として政府の歳入は減少するほか、他国による報復措置も招きかねないと警告している。
しかし、トランプ氏や同氏の経済顧問らは政府の収入源として関税を利用することを一段と重視していることが、20日の発言で浮き彫りになった。
Source: White House, Trump statements, Bloomberg News reports
トランプ氏は「関税で多額のお金が入ってくる」とソーシャルメディアに投稿。今会計年度に約2兆ドル(約300兆円)の赤字が見込まれる連邦予算の均衡を図る手段になるとした。19日夕には、「膨大な関税のお金」を政府は受け取ることになると表明していた。
トランプ政権によれば、資産家イーロン・マスク氏と同氏率いる「政府効率化省(DOGE)」が進める支出削減も歳入面での答えの一つだ。DOGEはこれまでの取り組みで550億ドルの支出を抑えたと主張。ただ、この総額については疑問符が付いている。
ホワイトハウスはトランプ氏が実行あるいは警告した関税のリストが長くなっているとアピールする傾向を強めている。
ハセット米国家経済会議(NEC)委員長は20日、記者団に対し、今月導入された中国からの輸入品に対する10%の関税は「10年間で5000億-1兆ドル」を生み出すと話した。
これとは別に、ラトニック米商務長官はFOXビジネスとのインタビューで、他国の税制や規制の障壁を狙い撃ちにする「相互」関税だけでも、「われわれに年間7000億ドルをもたらす」可能性があると発言。この資金は財政赤字の解消に役立ち、金利の「急低下」を引き起こし、その結果「経済全体が急成長する」と付け加えた。
米国は19世紀まで関税を政府の主要な収入源としていた。トランプ氏は輸入関税で歳入を創出できるとの自身の信念について、これに基づいているとしている。
しかし、当時の連邦政府ははるかに規模が小さく、1913年の所得税導入で全てが変わった。1月に発表された米議会調査局(CRS)の報告書によると、第2次世界大戦以降、連邦歳入全体のうち関税の割合が2%を大きく上回ったことは一度もない。
欧州連合(EU)で通商交渉を担当した経歴を持つイグナシオ・ガルシア・ベルチェロ氏は、関税の実際の目的が収入を増やすことであるなら、EUと米国が今後数カ月に貿易戦争の激化を回避することは非常に難しくなると指摘。
「欧州の立場からすれば、良いことではない」とし、「実際に交渉できる余地はあまりないことがうかがえる」と語った。
原題:Trump’s Growing Focus on Tariff Revenue Raises Trade War Odds(抜粋)