AI関連株:ソフトバンクグループを買い推奨、小型成長株も解説(窪田真之)
生成AIの爆発的な普及を背景に、世界のAI開発競争は新たなフェーズに突入しています。かつてない規模の研究開発投資と人材獲得競争が繰り広げられ、技術的優位性が企業の競争力だけでなく、国家の未来をも左右する「総力戦」の様相を呈しています。米国勢が先行する中、中国、欧州、そして日本も、それぞれの特色と戦略でこの戦いに臨んでいます。
【1】米国:最先端のAI開発をリード
AI開発競争の最前線を走るのは、OpenAI、Google(アルファベット:GOOGL)、Anthropic(アンソロピック)などの米国企業です。中でも、最初に世界トップに立ったのは、OpenAIのChatGPTです。いち早く最先端のAIを提供したことで、Microsoft(MSFT)との連携も生かしつつ世界で約8億人のユーザーを獲得しました。
ところが、昨年Googleが開発したGemini 3が推論機能などでChatGPTを超えました。また、OpenAIから独立した技術者らが作ったAnthropicが提供するClaudeも、ChatGPTを超える能力を備えつつあります。OpenAIは、非常事態宣言を発出して、改めてChatGPTの能力拡大にまい進する方針を示しました。
OpenAIはChatGPTで生成AIブームをけん引し、Microsoftとの強力な連携により、大規模な計算資源と豊富なデータを活用。Googleは長年のAI研究の蓄積と自社サービスへの統合力で、Geminiモデルを開発し追随します。Anthropicは「安全なAI」を掲げ、倫理的な側面を重視した開発で差別化を図っています。
これらの企業は、巨額の資本投下と世界中から集まる優秀なAI人材を背景に、モデルの規模、性能、汎用性において圧倒的なリードを築いています。彼らの戦略は、汎用人工知能(AGI)の実現に向けた技術革新と、その成果をプラットフォームとして提供することでエコシステムを構築することにあります。
【2】中国:国家戦略と巨大市場を背景に猛追
米国勢を猛追するのが中国勢です。昨年は、中国DeepSeekが、強化学習によって最先端GPUを使用せずに低コストで高性能のAIを開発できることを示して驚かれました。
その後、中国ではアリババ・グループ・ホールディング(BABA)、テンセント(00700)、バイドゥ(BIDU)など大手IT企業が、政府の強力な支援と巨大な国内市場を背景に独自のLLM(大規模言語モデル)開発を進めています。中国政府はAIを国家戦略の柱と位置づけ、研究開発への補助金、データ基盤の整備、人材育成に力を入れています。
【3】日本:独自のドメイン情報を活用して差別化
日本でも独自のAI開発が進んでいます。独自AIといっても、ゼロから全て開発するものではありません。米国企業が開発した最先端AIのAPI(データや機能にアクセスするための規約・手順)を利用、あるいはオープン・ソースのAI(無料で利用できるAI)を利用し、そこに独自の差別化されたデータや機能を追加して作ります。
国立研究開発法人や大学、そしてNTT(9432)、富士通(6702)、ソフトバンクグループ(9984)といった企業が連携し、日本語の特性に最適化されたLLMに取り組んでいます。
日本の強みは、製造業やロボティクス、アニメ、ゲームといった特定の産業分野におけるデータと知見の蓄積、そして高品質なモノづくり技術です。進化したAIに、これら日本独自のドメイン情報を付加することで、差別化された価値を有するソリューションを創出することができます。それがグローバル競争における日本の差別化要因となると考えられます。
特定業務にカスタマイズされたAIエージェントが重要に
2026年は、AIの社会実装化が重要テーマになります。特定の業務・サービスにカスタマイズされたAIエージェント(コマンドを実行するために自律的に行動する人工知能)の開発が世界中で加速するでしょう。
AIの計算・推論能力だけどんどん高めても、学習するデータを洗練しなければ実際の業務には使えません。AIはインターネット上のあらゆるデータを学習して超人的能力であらゆる質問に答えますが、ビジネス上の身近な問題で答えられないことがたくさんあります。
例えば、あるホテルの宿泊客が「ホテルの近くにあるコンビニの場所を知りたい」とします。それは、ChatGPTなど誰でも利用できるチャットボットで回答が得られるでしょう。
ところが、自分が宿泊している部屋の電気機器の操作方法が分からなかったとします。それは恐らくChatGPTでは回答が得られません(写真に撮って聞けば分かることもあります)。手っ取り早く回答を得るには、フロント職員に質問するしかありません。
特定の業務やサービスを代行するAIエージェントには、あらかじめそのドメイン情報をしっかり学習させます。周到に学習させるほど、AIの能力は高くなります。
例えば特定のホテルのフロント業務を代行するAIエージェントを作る場合、そのホテルの宿泊客から聞かれる可能性のあるあらゆる質問について、あらかじめ必要な追加学習をさせる必要があります。
十分に学習すれば、実際にAIエージェントとして業務を開始します。そこからオン・ザ・ジョブで追加学習は続きます。回答不能だった質問への正しい答えや、宿泊客の気分を害する回答をした経験などが、どんどん追加学習され、より完成度の高いAIエージェントになっていきます。新人のホテル従業員が経験から学んでいくのと同じプロセスです。
<機能・サービスを限定したAIエージェントが目指す方向>
【1】ドメインに特化した情報を追加で学習する 専門分野の業務遂行能力を高める。
【2】専門分野に学習範囲を絞る。無関係の情報を学習しない ハルシネーション(生成AIが事実に基づかない回答を生成する現象)の発生率や、著作権侵害リスクを低下させる。ドメインに特化した思考プロセスを確立する。
【3】利用者の個人情報や社内情報を「学習しない」設定を可能にする AIに社内情報や個人情報を入力しても、それがAIに学習されて外部に流出することがないようにする。
【4】言葉遣いなど想定される利用者に合わせて最適化する 利用者にとって使いやすく、利用することによる満足を高めやすい設定とする。チャットボット(文章での質疑応答)だけでなく、AIオペレーターによる音声での回答を分かりやすくする。過度な迎合(相談者を喜ばせることを目的とした回答作成)は回避する。
日本には、高品質なモノづくり技術、世界を驚かせるきめ細かなサービスがあります。そこは、既存のAIが学んでいないところです。
AIエージェントには、そのような現場の職人技や人間的判断・チームワークなど私たちの頭の中にあるデータをこれから大量に学ばせる必要があります。そこを、追加学習させ、さらにオン・ザ・ジョブで洗練していくプロセスは、これから始まり、これから進化していくことになります。
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