大雨特別警報、熊本の7市町に拡大 土砂災害や浸水相次ぐ
佐々木凌 小勝周 城戸康秀 渡邉淳基 波多野大介
気象庁は11日午前9時15分、熊本県天草市に大雨特別警報を新たに発表した。命の危険が迫っており、ただちに身の安全を確保しなければならない状況だとしている。
気象庁は11日未明以降、熊本県の玉名市と長洲町、八代市、宇城市、上天草市、氷川町にも大雨特別警報を出しており、計7市町が対象となった。
玉名市全域の6万人に「緊急安全確保」
前線や低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、10日以降、九州各地や山口県では線状降水帯が相次いで発生。11日午前8時47分には熊本県の熊本地方と天草・芦北地方で発生した。
気象庁によると、11日午前1時40分までの6時間で玉名市では344.0ミリ、熊本市中央区では249.0ミリの雨が降り、それぞれ観測史上1位の値を更新した。
前線は12日ごろまで同じような位置に停滞する見込みで、九州から東北にかけての広い地域で、警報級の大雨となる可能性があるという。
12日午前0時までに予想される24時間降水量は、多いところで九州北部と四国、東海で250ミリ▽九州南部と関東甲信で200ミリ▽近畿で180ミリなど。
熊本県は11日午前、災害対策本部会議を開き、被害状況が報告された。県内の広範囲で住宅の浸水や道路の冠水などが起き、停電や断水といった影響も広がっている。県は、今後被害が拡大する恐れがあるとして、「命を守る行動」を呼びかけている。
県や自治体によると、午前10時までに、警戒レベルが最も高い5にあたる「緊急安全確保」が県内9市町に出された。対象地域の住民は約17万世帯、計36万人あまりに上る。
県は玉名市、玉東町、長洲町、美里町、八代市、宇城市、氷川町の7市町について災害救助法の適用を決定。県警によると、午前7時までに災害関連の110番通報は453件に上った。
熊本市によると11日午前9時現在、市内では床上浸水が30件、床下浸水が18件確認された。人的被害は軽傷者が1人。道路損壊は6カ所、道路冠水は23カ所、崖崩れは8カ所、河川決壊が1カ所確認されているという。
九州電力熊本支店によると、熊本県内では11日午前10時現在、大雨の影響で5320戸が停電している。内訳は美里町2760戸、八代市980戸、宇城市570戸、天草市430戸など。午前6時のピーク時には7840戸が停電していたという。
海外出張中の木村敬知事に代わり報告を受けた竹内信義副知事は「河川の氾濫(はんらん)、土砂災害の危険が高まっています。自らの命を守る行動をとってください」と述べ、引き続き警戒を強めるよう呼びかけた。
上益城消防組合消防本部によると、11日午前4時10分ごろ、甲佐町豊内で「車で避難中に土砂で押し流されて逃げられない」と母親から119番通報があった。母親と子ども2人の計3人は消防により車内から救出されたが、車外にいた父親の行方が分かっておらず、捜索活動を続けているという。
宇城広域連合消防本部によると、美里町豊富で11日午前2時50分ごろ、「男性1人が土砂に巻き込まれた」と通りかかった車両から119番通報があった。消防が午前6時20分ごろに60代男性を見つけ、午前11時半ごろに救助した。男性は意識ははっきりし、会話はできているという。
玉名市の消防本部などによると、11日午前0時5分頃、玉名市中の境川で「人が1人流されている」と119番通報があった。カメラのようなものを肩に担いでいたという情報があり、捜索活動を続けているという。
一方、福岡県の宗像地区消防本部によると、福津市畦町の西郷川付近で10日午後5時半ごろ、近くの住民から「60代の男性と女性が川に流された」と119番通報があった。消防などが捜索しているが、2人の行方はわかっていないという。
福津市では10日午前0時過ぎに記録的短時間大雨情報が発表されるなど、激しい雨が降り続いていた。
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