【オートレース】史上最多22度目SG制覇へ高橋貢「今回は流れがいいからね」~SG川口オート第44回オールスターオートレース
◆第44回オールスターオートレース(SG、28日・5日目、川口オートレース場)
またかあ~。この演目、もう何度も何度も見せつけられているので、全然びっくりしなくなっちゃいました。
さすがの王者も終わったか―
もう、全盛期は過ぎたのか―
若手の台頭に屈する姿は、見たくない―
そんな空気が周囲に流れ始めると、結局、またまた巻き返して、すぐに復権を果たしてしまう。
新興勢力のウェーブも、自身に押し寄せる年齢の波もすべて食い止めてしまう。それが高橋貢である。
準決勝戦9R。大好物の雨で完全コーティングされたコースを王者は久々に思う存分爆走した。
ここに往年の王者ランを再上映して、貫禄、風格の1着ゴールイン。6年ぶりとなるオールスター優勝戦進出を威風堂々と達成した。
「もう、雨様々ですね!晴れではちょっとどうなのかなと思っていたのでね。スタートはもっとみんなが来るかなあと思っていましたが、序盤からうまくいいところに付けることができました。最近は雨でも結果を出せないことがあって、今回だって3日目(4着)はだめだったから。だから、雨でも不安はあったんですよ。自分は雨になると、いろいろとコースとかを考えて調整するんですが、今回はもう晴れと同じでいいかなと思って調整したら、それがうまく合ってくれました。タイヤもそう。もっと成績が出ている時ならば、もう少し違うタイヤを使ってみようかと考えるところでしたが、とりあえず履いてみようと思ったタイヤが良かった。何というか、今回はツキがありますよね、本当に」
平成のオートレースを完全制圧した歴史的レーサーも6月には54歳を迎える。
全盛時代は、ただひたすら勝つことのみを使命とされ続けた男も、ここ数年は勝率が下がり、目覚ましく躍進する令和の気鋭系レーサーたちの迫力に圧倒されるシーンは、時の経過と共に増えた。定位置だった大外枠から、ハンデも軽減され、内へ内へと軽化されている。
それでも、高橋はトップを極めた者の威厳を失うことなく、この時代を戦い続けている。
先日、久しぶりに1着ゴールを決めた時、熱戦を見守っていた多くのライバルたちが拍手を送っていた。まるでファンに戻ったように「ミツグさん、行け~」と声を上げていた。
誰もが王者を打倒すべく、精進の限りを尽くしているのに、でも心のどこかでみなが「いつまでも貢さんは強くあるべき」と願っているような光景だった。
そのことを高橋に伝えると、「それはさ、自分が最近ずっと良くないからだよ。ミツグ、もっと頑張れ~って思ってくれているんじゃないかな。でも、やっぱりうれしいよね」と静かにほほ笑んでいた。
そして、彼はオールスター優勝戦をここに迎える。タフな山場をひとつ乗り超えて、通算22度目のSG制覇(もちろん史上最多)へと勇躍挑む。さあ、2025年のSGをどう戦ってみせるか。
「今回もたくさんのファン投票を頂きましたからね。あとで全国4位の得票だと知って、本当にうれしかったです。ここのところ、ずっと良くなったので、もうファンに忘れられてしまっているんじゃないかなって思っていましたが、こんなにも多くの方がまだ自分を気に掛けてくれているんですね。そんな方にこうして少しでも結果でお返しすることができて、まずは良かったです。今のままだと晴れの戦いになるとちょっと足りないとは思います。優勝戦当日も雨降りませんかね。例え降らなくても、走路は乾かないならそれでいいんだけれど(苦笑)。でも、さっきも言いましたが、今回は流れがいいからね。楽しみはあります。53歳でSG制覇か。う~ん、それいいね!もう一走、投票してくれたファンのためにも最後まで頑張りますよ!」
先日、ジャイアンツ戦を観戦していた時だった。
チームの看板打者、岡本和真が快打を放つと、スタンドは沸きに沸いた。
でも、この日、最もスタンドが揺れたのは、坂本勇人が途中出場して、グラウンドに姿を見せた時だった。
そのシーンを見て、思った。ああ、オートレースでいえば、現在のチームをけん引くする岡本は青山周平であり、長く球団の顔を務め、実績を残し続けた坂本こそ高橋なんじゃないかと。
ここまで残してきた功績が違い過ぎるという話です。
あっ、でもやっぱり貢さんは坂本選手ではないかもしれません。
王さん、長嶋さん、そしてゴジラ松井を合体させた選手こそが、オート界の高橋貢ですよ。
もしも、6度目(!)となるオールスターVを達成したら…。もう、川口オートスタンドはアウエーもホームも関係なく、久しぶりに超でっかいミツグコールが鳴り響くことでしょう。みんなが待っている。高橋の特大アーチを。もう一度、もう一発、かっ飛ばせ、かっ飛ばせ、ミ・ツ・グ!(淡路 哲雄)