トランプが州兵・海兵隊を派遣した本当の理由、ロサンゼルス暴動鎮圧が示していること(Wedge(ウェッジ))
クリントン政権の労働長官であったロバート・ライシュ教授が、6月9日付けワシントン・ポスト紙掲載の論説‘We are witnessing the first stages of a Trump police state’で、トランプは法手続きを取らず移民を一斉検挙、国外退去させ、州兵派遣で反対運動を煽り、暴力化を狙い、それを利用し着々と警察国家のインフラを整えている、と警告している。要旨は次の通り。 ロサンゼルスへの州兵派遣はアメリカをよく知られた権威主義の道へ向かわせる。歴史が結果を証明している。 6月6日の朝、移民関税捜査局(ICE)、国土安全保障省(DHS)、連邦捜査局(FBI)と麻薬取締局(DEA)がロサンゼルスで不法移民と疑われる労働者の一斉検挙を行った。発表数はさまざまだが、121人が逮捕されたとされる。 反対の声を上げ、卵を投げる抗議者たちが捜査当局に立ち向かったが、暴動鎮圧の装備を身に着け、盾をもち、警棒やペッパーボールを発射する銃、ゴム弾、催涙ガスそして閃光手榴弾を用いる警官に蹴散らされた。7日にはトランプが反抗を鎮めるためとして最低2000人の州兵をロサンゼルスに派遣する命令を下し対立を激化させた。 移民局員を妨げるあらゆるデモは「暴動の一種」とみなすと述べ、スティーブン・ミラー大統領次席補佐官は抗議運動を「反乱」と定義した。 7日の夜にはヘグセス国防長官が現役の海兵隊を派遣すると脅し、「過激な暴徒によるICEや連邦法執行機関職員への襲撃は犯罪者である不法移民をアメリカ領土から排除するのを妨げるのが目的である。犯罪カルテルによるアメリカ侵略は国家安全保障に対する重大なリスクである。トランプ大統領のもとでは連邦職員への暴挙や連邦施設の破壊は決して許容されない」と述べた。 トランプの一網打尽の網は裁判所も覆っている。ICEの職員がアメリカ中の裁判所の外で待機し、すでに裁判所で案件が却下された移民を含めた人々を即刻逮捕している。 歴史を振り返れば、権威主義の支配者が警察国家のインフラを確立すれば、そのインフラは誰に対してでも適応されている。トランプとその政権はそうしたインフラを5段階で急激に構築している。 1)「暴動」や「反乱」、または「侵略」という名の下で緊急事態を宣言する。 2)「緊急事態」を利用して実力行使を専売とする連邦職員を国内の市民に対し派遣する。(ICE、FBI、DEA、そして州兵) 3)軍事装備を身に着けた職員に一挙拉致誘拐、令状なしの逮捕、適正な法手続きなしでの拘束を実施させる。 4)収容者のために刑務所や収容所を拡張する。 5)状況が徐々にエスカレートしたら戒厳令を下す。