【解説】 トランプ氏、イランとの和平合意に期待 いくつか条件つきで
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バーンド・デブスマン・ジュニア(米ホワイトハウス)
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ホルムズ海峡を通る船舶をアメリカ側が誘導する「プロジェクト・フリーダム」を、開始からほどなくして一時停止した。イランとの「完全かつ最終的な合意」の締結に向け、進展があったためだと説明した。これにより、石油市場は落ち着きを取り戻し、事態打開への期待が高まった。
しかし、そうした期待はまもなく、トランプ氏自身によって後退することになった。
仲介国パキスタンの情報筋も、「まもなく合意に至る。あと一歩のところだ」とロイター通信に話した。
トランプ氏は6日朝には、イランとの合意は「大きな仮定」だと主張。合意に至らなければ、「以前よりもはるかに高いレベルと激しさ」で爆撃を再開すると表明した。
大統領のこの威嚇は、マルコ・ルビオ米国務長官が、対イラン軍事作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」の終了をホワイトハウスで発表してから24時間もたたないうちのことだった。
トランプ氏は続けて6日午前、米PBSとの短い電話インタビューで、イランとの合意について、楽観的な見方を示しつつ、これまで難航してきたことを認めた。
「(イランとは)前もそう思った」、「だから、どうなるか様子を見よう」とトランプ氏は発言。
さらに、パキスタンの首都イスラマバードで予定されている2回目のイランとの和平協議に、米代表団を派遣する「可能性は低い」と話した。
これよりも先、米ニュースサイト「アクシオス」とロイター通信は、アメリカとイランが戦争終結に向け、14項目からなる1ページの覚書への合意に徐々に近づいていると報じていた。
この覚書は、敵対行為の収束が目的で、その後にホルムズ海峡の封鎖解除や制裁の解除、イランの核開発計画の抑制に向けた協議を進めるという内容だとされた。
アクシオスはまた、米当局の一部では、合意の実現や、そもそもイラン指導部の各派閥の中でそのような合意を承認する人がいるのかについて、懐疑的な見方があるとも報じた。
イラン国会の国家安全保障・外交政策委員会の広報を担当するエブラヒム・レザエイ議員は、アクシオスが報じた14項目は、アメリカ側の「ウィッシュ(願い事)リスト」に過ぎないとソーシャルメディア「X」に投稿した。
同議員はさらに、アメリカが「必要な譲歩」をしない場合に備え、イランは「引き金に指をかけ、準備している」と付け加えた。
アメリカでも、外交政策の専門家らは慎重な見方を示している。
ジョー・バイデン政権とトランプ政権の両方で中東政策顧問を務め、現在はワシントン近東政策研究所フェローのグラント・ラムリー氏は、「『プロジェクト・フリーダム』を発表し、ほどなくして突然停止した経緯から見て、現政権は合意が可能だと考えているのは明らかだ」とBBCに話した。
「だが、こうした状況は以前もあった。そして、さまざまな理由で交渉が土壇場で決裂するのを私たちは目にしてきた」
トランプ氏は、4月7日に停戦を発表して以来、合意は間近だと繰り返し示唆してきた。
4月17日には米CBSに対し、イランが「すべてに合意した」とし、アメリカによる濃縮ウランの国外搬出を認めることになると、トランプ氏は説明した。しかし、イラン当局はこれをきっぱりと否定した。
今月6日にはホワイトハウスで、トランプ氏は再び、「向こうは合意を望んでおり、交渉したいと考えている」と主張。「(イランが)本当に合意するのか、これから見ていくことになる」と付け加えた。
たとえ1ページの覚書で合意に至っても、それですべての問題が解決する可能性は「極めて低い」と前出のラムリー氏は話した。イランの核物質に関する合意には、極めて技術的な側面があるからだ。
バラク・オバマ米政権時代に結ばれたイランの核計画に関する合意では、細部を詰めるのに20カ月超を要した。
海運の専門家らは、3日に発表された「プロジェクト・フリーダム」の効果は実施直後は限定的で、海峡を通過した船舶はわずかだったと話した。
シンクタンク「国際危機グループ」のイラン担当ディレクター、アリ・ヴァエズ氏は、このアメリカの取り組みに対してイランが、船舶発砲やアラブ首長国連邦(UAE)の標的攻撃などの形で反応したことで、トランプ氏はこれでは「問題は解決しない」と確信した可能性があるとBBCに話した。
「この政権には、真の意味での政策決定プロセスがない」、「(トランプ)大統領は政策決定手続きよりも衝動に基づいて決定するため、常に一貫性が欠如している」とヴァエズ氏は述べた。
米国防総省で中東担当の国防次官補を務めたミック・マルロイ氏は、「プロジェクト・フリーダム」の一時停止と和平合意の可能性との間に関連性があるのか、依然として不透明だと述べた。
「『プロジェクト・フリーダム』の一時停止が、この1ページの覚書を受けたものなのか、それとも現在(ホルムズ海峡の)背後で足止めされている1500隻の船舶が、アメリカの安全保障の傘の下でも通過しようとしないからなのかは不明だ」とマルロイ氏は言った。「イランも、その点を見極めようとしていることだろう」。