「前を向いて生きよう」「時間が経てば忘れる」…心療内科医が「こんな友をもってはいけない」という人の口ぐせ 弱っている人に寄り添っているようでいて、まったく寄り添えていない

信頼できる人の特徴は何か。心療内科医の鈴木裕介さんは「頑張っていてもいなくても、稼いでいなくても、態度を変容させずにふつうに接してくれる人というのが、成熟した大人である。逆に『あなたのためを思って』とか言いながら、要求がましいことを言ってきたり、こちらの境界線を踏み越えてきたりするような人には注意が必要だ」という――。

※本稿は、鈴木裕介『「心のHPがゼロになりそう」なときに読む本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/skynesher

※写真はイメージです

ポジティブで精神的にも健康的な人を探しあてる技術

「自分はもっと頑張らなければダメだ」と決めつけている状態から、「自分はこのままで大丈夫」と感じられる状態までは、ものすごく距離があります。自分一人の力で「よし、今日から自分は大丈夫だ!」と急に意識を変えられる人はほとんどいません。

自分を肯定するためには、「自分を否定しない他人」が必要です。

人間は身近な人の思考や言動パターンを「取り入れる」ことによって変化していくため、自己肯定感が強い人の近くにいて影響を受ければ、その要素を段階的にインストールすることができるのです(逆もまた然りです)。

まずは「この人だったら、信頼できそう、否定的なことを言わなそう」と思えるようなポジティブで精神的にも健康的な人を探しあてることから始めましょう。この見極めは「技術」ですので、続けていけば必ず上手くなります。

そして、そういう人と関係が構築できたら、徐々に本心を伝えてみたり、頼ってみたりすることをやってみましょう。頑張っていてもいなくても、稼いでいなくても、態度を変容させずにふつうに接してくれる人というのが、成熟した大人です。

逆に「あなたのためを思って」とか言いながら、要求がましいことを言ってきたり、こちらの境界線を踏み越えてきたりするような人には注意が必要です。

心理療法家の水澤都加佐みずさわつかさ氏から引用した「一見、弱っている人に寄り添っているようでいて、まったく寄り添えていない人の発言リスト」を紹介します。次のようなことを言わない相手を見つけてほしいと思います。

②「泣いたってしょうがないよ」 ③「誰でも多かれ少なかれ経験することだよ」 ④「時間が経てば忘れるよ」 ⑤「何かを一生懸命やりなよ」 ⑥「君より、もっと大変な人もいるよ」 ⑦「代わりのもので埋めなさい」

⑧「後ろばかり見ずに、前を向いて生きよう」

「そんな大人いるのかよ?」と思われた人もいるでしょうが、ちゃんと実在します(笑)。

その一方で、いい感じで悲しみを経験した人や、トレーニングを受けた心理職の方は、こうした発言の危険性をちゃんと理解していることが多いです。


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そうは言っても、「自分が隠したくてしょうがない弱みなんて、簡単に伝えられないよ」という人に、プレゼントしたい言葉があります。

鈴木裕介『「心のHPがゼロになりそう」なときに読む本』(三笠書房)

「みんな違って、みんなキショい」

これは、僕の友人・太田尚樹くんの名言です。

クリエイティブなLGBT啓発活動で知られる団体「やる気あり美」の編集長である彼は、「人は、誰もが必ずグロテスクな部分を抱えている。それを認め合って初めて、対等な信頼関係を結べる」と言っています。

人に頼るのが苦手なお人好しタイプの人は、周りの話ばかり聞いて、自分の深刻な話や恥ずかしい話はあまりしなかったりします。それは気遣いでもあるのですが、実は関係の結び方としてはフェアではないとも言えます。

人を信頼することで得られる豊かさの真髄しんずいは、「自己開示」というリスクを払うことで得られるものです。ただ、そこには“裏切り”という大きなリスクを伴います。

ぶっちゃけ、人間関係はギャンブルなのです。しかし、ただ単に運を天に任せる類のギャンブルではありません。

誰を信頼して誰を信頼しないかを見極めることも、信頼した相手にうまく気持ちを伝えるのも、創意工夫を凝らし、試行錯誤しながら、失敗することで少しずつ向上していく「スキル」だと思います。

その技術は、生きづらさと対峙していくうえで最重要のものであり、まさしく「一生モノ」のスーパースキルになるでしょう。

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