AUKUS中止なら米国の信頼損なう、前政権顧問が計画継続訴え

 8月25日、オーストラリアへの原子力潜水艦供与を柱とする安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の見直しを米国防総省が進めていることに対し、バイデン前政権の顧問は計画を中止すべきではないと警告した。写真はバージニア級攻撃型原潜「ミネソタ」。西オーストラリア州沖で3月代表撮影(2025年 ロイター)

[ワシントン 25日 ロイター] - オーストラリアへの原子力潜水艦供与を柱とする安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の見直しを米国防総省が進めていることに対し、バイデン前政権の顧問は計画を中止すべきではないと警告した。一方、計画を成功させるには解決すべき課題が幅広く存在するとも指摘した。

AUKUSを巡る問題で顧問を務めたアブラハム・デンマーク氏は元国務省高官との共同論文で、「トランプ政権によるAUKUSの徹底的な見直し」の必要性を認めつつも、計画の継続を強く訴えた。

「AUKUSが失敗に終わったり廃止されたりすれば、米国のインド太平洋での能力は低下し、国際的な信頼性は大きく損なわれ、抑止力は弱まる。米国のコミットメントは信頼できないとする中国とロシアのプロパガンダに強い説得力を与えることになる」と述べた。

対処が必要な問題として、米国の潜水艦生産の遅れに加え、米国の資源を割いて供与する潜水艦を豪州がインド太平洋での有事に実際に運用するのかという点を挙げた。

また、オーストラリアが今後30年以上で総額2400億ドル(3680億豪ドル)を負担すると試算し、コストの高さを指摘した。参加する米英豪3か国で潜水艦建造に必要な熟練労働者が不足していることや、プロジェクト関係者の往来を円滑化する「AUKUSビザ」の整備が遅れていることなど、実務面の課題も強調した。

さらに、先端兵器協力を目的とする「第2の柱」の焦点が曖昧だとして、対象分野の明確化と絞り込みが必要だと指摘した。

論文はこうした問題があるにもかかわらず、「AUKUSの強化」は「戦略的に不可欠」だと結論づけた。AUKUSは「米国の防衛産業基盤を底上げし、最も緊密な同盟国を強化し、中国に強力な抑止メッセージを発し、インド太平洋地域の安定に貢献する」と位置付けた。

AUKUSはインド太平洋での中国の野心に対抗する取り組みの一環として、2023年にバイデン前大統領の下で公表された。トランプ政権下で国防総省が6月に見直しに着手し、秋に完了する予定だ。

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