笑顔なき周東佑京の超美技 「もう言葉がないよね」…首脳陣が語った"本当の価値"
チームを救ったスーパープレーにも笑顔はなかった。劇的な逆転勝ちでチームの3連敗を止めた13日のオリックス戦(京セラドーム)。勝利を呼び込んだのは、8回に周東佑京内野手がみせた好守だった。
スコアレスのまま進んだ8回。オリックスに1点を先制され、なお2死二塁の場面だった。杉本の打球が中堅深くを襲うと、やや前進守備を敷いていた周東が猛然とダッシュ。最後は背走のままボールをグラブに収めた。打球が抜けていれば致命的な2点目を失っていただけに、小久保裕紀監督も「あれがないとさすがに勝てていないので。あれを取ったことで望みがつながったと思います」と笑みを浮かべた。
これまで異次元の守備力で幾度となくチームを助けてきた周東だが、この日のプレーは筆舌に尽くしがたい価値があった。デーゲームで2位日本ハムが勝利し、ホークスが敗れていればゲーム差が1.5に縮まっていた。何よりペナントレース最終盤での4連敗となっていれば、リーグ連覇に暗雲が立ち込める事態となっていたはずだ。そんな状況を救ったにもかかわらず、周東は笑わなかった。
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「結果的には逆転につながったので良かったのかなとは思いますけど……。それよりも上沢さんが序盤から気持ちを出しながら投げている間に、チャンスを作りながら点を取れなかったことが一番かなと思います。いいプレーはできましたけど、きょうはそこかな。もちろん勝ったので嬉しさもありますけど、上沢さんが投げている間にどうにかしたかったっていうのが一番かなと思います」」
周東が口にしたのは、気迫を前面に押し出しながらゼロを並べていった上沢を援護できなかった“後悔”だった。3連敗を喫した11日のロッテ戦後にも「野手の責任だと思います」と語った選手会長。誰よりもチームを第一に考える男だからこそ出た言葉だった。
そんな思いを知るからこそ、首脳陣は周東のプレーに賛辞を贈った。「もう言葉がないよね」。そう切り出したのは、大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチだった。
「あそこで打球が抜けていたら、もうきょうの試合は終わりやったからね。それをギリギリのところで防いでくれたからね、次の回の攻撃が『まだまだいける』ってなったのは間違いないので。本当に、うーん、なんて言うんだろう……。すごいとしか言いようがないよね。もうありがとう! あっぱれ!」どれだけ大きなプレーだったかは、大西コーチの興奮ぶりにも表れていた。
8回の打席で空振り三振に倒れた際にはバットをたたきつけ、ベンチに戻った後も悔しそうな表情を浮かべていた周東。感情を抑えられないのは、それだけ「フォア・ザ・チーム」の精神が強いからこそだ。チームを土俵際から救ったプレーの価値は、シーズンが終わった時にこそ分かるだろう。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)