ゴキブリ混入の天下一品、お粗末すぎる害虫対策意識 京都全16店の半数が行政指導対象に

問題が起きた天下一品新京極三条店=京都市中京区

ラーメンチェーン「天下一品」の京都市内の店舗で提供した商品にゴキブリの死骸が混入していた問題で、同店と同様に市内7店舗でも害虫対策の実施記録が保管されておらず、京都市保健所が7店を行政指導したことが、保健所などへの取材で分かった。食品衛生法は害虫対策の記録保存を原則義務付けているが、市内全16店のうち実に半数でこうした認識がなかった疑いがある。

保健所が不備店舗に文書で指導

運営会社「天一食品商事」(大津市)によると、京都市中京区の新京極三条店で8月24日、20代女性が注文した看板商品「こってりラーメン」のスープの中にゴキブリの死骸1匹が混入していた。保健所は9月4日に同店を立ち入り調査。衛生状況に大きな問題はなかった一方、店舗内での害虫スプレー噴霧や粘着シートの設置など、害虫対策の実施を裏付ける記録が確認できなかった。

厚生労働省によると、食品衛生法は飲食店でのネズミや害虫の混入対策として駆除作業を1年に2回以上実施し、その記録を1年間保存することを原則義務付けている。

新京極三条店の対応を問題視した保健所は、新京極三条店と、オーナーが同じフランチャイズ系列店で、営業を停止している河原町三条店(京都市中京区)を除く京都市内で営業中の14店舗を順次立ち入り調査。このうち7店舗で、新京極三条店と同様に対策記録が適切に保存されていなかったことが判明した。保健所は不備が見つかった店に対し、害虫対策を実施した日時や方法の記録・保存を徹底するよう文書で指導した。

天一食品商事の担当者は取材に「保健所の指導を基に再発防止に努めるとともに、害虫対策の記録や保存を徹底するよう各店舗への指導を強化する」と話した。

専門家「意識を高く持つことが重要」

大手外食チェーンを巡っては同様の異物混入事案が相次ぐ。牛丼チェーン大手の「すき家」の鳥取市内の店舗では1月、提供したみそ汁の中にネズミの死骸が入っていたほか、3月にも東京都昭島市の店舗で商品にゴキブリの一部が混入していたことが判明。6月にはラーメンチェーン「来来亭」の浜松市内の店舗で虫の混入騒動があった。

チェーン店では、どういった対策が有効なのか。食品衛生問題に詳しい奈良県立医科大の今村知明教授(公衆衛生学)は「食品を扱っている以上、異物混入をゼロにすることは極めて難しい」と指摘する。大規模な対策には労力やコストがかかるほか、人件費や原材料費が高騰している現状もあり、「店舗に強いる負担が大きくなっているのも事実」という。

このため、ハード対策には限界があるとした上で「現場で調理に携わる人が(異物混入防止の)意識を高く持つことが重要だ」と強調。運営側が各店舗に対し、害虫対策を実施するだけでなく、記録保存も含め教育を行き渡らせる必要があるとの認識を示した。

飲食店の3割が「害虫トラブル」経験

業務用の害虫駆除システムなどを展開するナック(東京)による調査では、害虫に関するトラブルを経験したと答えた飲食店は30%超に及んだ。トラブルをSNSに投稿されたりすれば、事態がより深刻になることも想定されるが、対策は十分とは言いがたい状況だ。

調査は5月、20代以上の飲食店経営者ら400人を対象にインターネットで実施。34・5%(138人)が「害虫が原因でクレームなどのトラブルが起きたことがある」と回答し、SNSに否定的な投稿をされた経験を持つ人もいた。

害虫対策の実施状況を尋ねたところ、最も多かったのは「市販の殺虫剤・忌避剤」(44・5%)で、「掃除」(35・0%)、「外部業者の定期点検」(28・5%)が続いた。市販の殺虫剤・忌避剤はホームセンターなどで安価に購入でき、使用も簡単だとして選ぶ経営者が多いとみられる。

また、害虫対策の実施状況について、「十分ではない」「あまり十分ではない」とした人が約3割に達した。多くの店が対策の重要性を理解しながら、満足できる対策ができていない実情が明らかになった。(塚脇亮太)

天下一品のゴキブリ死骸混入、ほかにも京都市内7店舗で害虫対策の不備判明

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