トランプ予算案、非国防費23%カット-定例の経済・金利見通しは省略

トランプ米大統領は2026会計年度(26年9月終了)予算案の概要を議会に提出し、国内機関の大幅な支出削減と軍事費の大幅増強を要求した。非国防支出は5570億ドル(約80兆5600億円)と、現行水準から1630億ドル削減される一方、安全保障関連の支出は1兆100億ドルと、13%の増額となる。

  予算案は大枠だけで詳細を欠いた「スキニーバジェット」と呼ばれるもので、大統領の行政ビジョンを文書で示す最初の機会。トランプ氏のスキニーバジェットは歴代大統領のものよりも簡素で、通常盛り込まれる経済や金利の基本的な見通しさえ示されていない。

  詳細は共和党が進める大型減税法案がまとまり次第、年内に公表される。減税法が成立すれば、財政赤字は数兆ドル規模で膨らむと見込まれる。経済成長の鈍化やリセッション(景気後退)の可能性が高まる中、歳入減と景気悪化に伴う自動的な支出増で財政への圧力が高まると懸念されている。最終的な歳出計画は議会の承認を必要とし、野党民主党は上院で影響力を行使できるまれな機会を得る。

  トランプ氏の予算案には米史上最大の国防費が盛り込まれており、ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」や艦船建造、核戦力の強化、国境警備などを最優先項目に指定。軍人の給与は3.8%引き上げられる。

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  不法移民の摘発・強制排除といったトランプ氏の優先アジェンダを実行する国土安全保障省は、65%の大幅な予算増加が見込まれている。国内支出に関しては、トランプ氏は2025年度予算の22.6%削減を提案している。バイデン前政権の看板政策であるグリーンエネルギー法の予算から、150億ドル相当の取り消しも議会に要求した。

  ホワイトハウスはこの予算案をトランプ政権の「社会政策文書」と位置付け、早期教育や住宅、科学、対外支援の予算削減を「ウォーク(リベラル思想)予算のカット」と説明。難民支援の35億ドル削減は「国境開放への資金停止」、気候・環境関連予算の大幅削減は「グリーン・ニュー・スキャム(詐欺)の終了」と銘打った。

税制案とバンドル

  行政管理予算局(OMB)高官によれば、防衛および国土安全保障省の歴史的な規模の予算増強は、民主党が阻止できない税制パッケージに盛り込むことで確保された。

  特に削減率が大きいのは厚生省の26%や、中小企業庁の33%、住宅都市開発省の44%、環境保護庁の54%、科学財団の56%だ。国立公園局の9億ドル削減案は、小規模な公園の州移管を伴う。米航空宇宙局(NASA)も有人宇宙探査を除いてほとんどのプログラムが大幅に削減されるが、トランプ氏の右腕であるイーロン・マスク氏が関与する月・火星探査には6億4700万ドルの予算が追加される。

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  教育や医療では予算が削減される一方、チャータースクールには6000万ドルが増額される。感染症とメンタルヘルスへの予算は削減されるが、「アメリカを再び健康に」のイニシアチブには5億ドルが充当される。地方の小規模空港の予算は削られるが、航空管制システムの近代化は進められる。

  対外援助とDEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムは、廃止もしくは大幅削減の対象とされた。世界銀行を通じた最貧国向け援助は、バイデン政権が約束した40億ドルから、32億ドルに引き下げられる。ホワイトハウス高官は国際非政府組織(NGO)への援助も縮小するべきだと論じる。国立科学財団の予算は50億ドルの削減が提案された。米海洋大気庁(NOAA)の助成金も一部取り消される。

  米平和研究所は完全に閉鎖され、マイノリティー支援機関やボイス・オブ・アメリカ(VOA)、地域金融機関基金なども廃止される。マスク氏の「政府効率化省(DOGE)」は議会の明示的な承認なしに、契約打ち切りや連邦職員の解雇、機関解体を進めている。同氏は当初、2兆ドルの支出削減を目指していたが、この目標を150億ドルに縮小した。

赤字削減の誤算

  DOGEの取り組みが最終的に大幅な赤字削減につながらないことを、予算案は浮き彫りにした。全体的な支出削減は、自然災害の対応費用といった緊急支出に吸収される。また金利上昇で国債の利払い費が膨らみ、政府機関の予算や人員の削減では赤字の削減に限界があることが明確になった。

  超党派の組織、責任ある連邦予算委員会(CRFB)のマーク・ゴールドワイン氏は、これを「出発点」と位置付けつつ、「一方で一年で1600億ドルの削減を語り、一方で5兆8000億ドルの赤字拡大を語っている」と、矛盾を指摘した。

原題:Trump Budget Seeks 23% Domestic Cut, Omits Economic Forecast (2)(抜粋)

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