パキスタンでKFC店舗への襲撃相次ぐ、1人死亡 ガザ戦争抗議で
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アザデ・モシリ・パキスタン特派員(イスラマバード)、ヴィッキー・ウォン記者
パキスタン各地で、米ファストフード大手KFCの店舗が相次いでガザ戦争に対する抗議行動の標的となり、18日までに1人が死亡した。
一連の抗議行動は、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区への攻撃に対するもので、多数の逮捕者が出ている。
抗議者は、KFCはイスラエルの同盟国アメリカの象徴だとして、その店舗の利用をボイコットするよう声を上げている。
パキスタンのタラル・チョードリー内相は、KFC店舗への襲撃未遂事件がこの1週間で少なくとも20件発生したと、BBCに話した。
ソーシャルメディアに投稿された複数動画には、鉄の棒で武装した暴徒がKFC店舗に侵入し、警察が到着する前に店を焼き払うと脅す様子が映っている。カラチでは2店舗が放火された。
動画の一つには、「(アメリカは)君たちが稼いだ金で銃弾を買っている」と叫ぶ男性が映っている。
チョードリー内相は、国内のKFCに「関わっている業者の大半はパキスタン人」で、「利益を得ているのはパキスタン人だ」と述べた。
14日にラホール郊外シェイクプラで起きた抗議行動では、男性1人が射殺された。警察はこの男性がKFCの従業員アシフ・ナワズ氏(45)だと、BBCに明らかにした。
シェイクプラ警察のアタル・イスマイル氏によると、ナワズ氏は当時、厨房で働いていた。店から30メートル以上離れた場所で発砲があり、その銃弾が男性の肩に命中したという。発砲した人物は逃走中だが、これまでに40人を逮捕していると、イスマイル氏はBBCに話した。
それほど離れた距離から発砲された銃弾で致命傷を負うことは、通常はない。検死結果では、銃弾が肩から入りナワズ氏の胸部に至ったことが分かっている。
イスマイル警官は、ナワズ氏が意図して狙われたことを示す証拠は今のところないとし、たまたま銃弾が当たった可能性があると、BBCに述べた。
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パキスタン各地では、有力者らがガザでの戦争を非難している。
イスラム主義政党「パキスタン・ラバイク運動(TLP)」は、イスラエルとアメリカに対する抗議行動を呼びかけているが、KFC店舗への攻撃には関与していないと主張している。
パキスタンで最も影響力のあるスンニ派のムフティ(イスラム法学者)、タチ・ウスマニ師は、ガザでの戦争と関係があると思われる製品をボイコットするよう促している。
ただ、TLPとウスマニ師は、暴力的な訴えは避けるよう、抗議者に求めている。
ウスマニ師は17日、パレスチナに関する全国会議で、イスラエルの製品や企業、あるいはイスラエルと関係のあるものをボイコットするのが重要だとしつつ、イスラム教は「他者を傷つけることを促す宗教ではない」と述べ、「投石や、誰かの命を危険にさらす」ことは禁じられているとした。
「なので、抗議とボイコットを続ける際には、平和的に行うように。暴力や、平和的ではない行動があってはならない」と、ウスマニ師は呼びかけていた。
TLPのスポークスマン、リハン・モフシン・カーン氏は、TLPは「イスラム教徒にイスラエル製品のボイコットを呼びかけているが、KFC店舗の外で抗議するよう呼びかけたことはない」と述べた。
イスラエルによるガザ攻撃が始まって以降、パキスタンなどのイスラム教諸国では、欧米ブランドが攻撃やボイコット、抗議行動の標的になる事案が複数起きている。
昨年にはマクドナルドがボイコットの影響で売り上げが落ち込み、イスラエル国内の全店舗をフランチャイズ企業から買い戻すと発表した。
2023年にはスターバックスが、ガザ戦争をめぐる一連の抗議やボイコットを受け、平和を呼びかけた。また、同社の見解が「誤ったかたちで」伝えた報道を非難した。
BBCはKFCと親会社ヤム・ブランズにコメントを求めたが、回答は得られていない。