「報道の自由の死を正式宣告」香港民主派元区議ら25人、リンゴ日報創業の黎智英氏有罪に
海外に逃れた元香港区議ら25人の民主活動家で構成する「香港公民代表会議」は、香港国家安全維持法(国安法)違反罪に問われた香港紙・蘋果日報(リンゴ日報=廃刊)創業者の黎智英(れい・ちえい=ジミー・ライ)氏(78)に下された有罪判決に対する声明を発表した。「香港における報道の自由の正式な死を宣告するもの」「『一国二制度』の完全なる終焉」を指摘し、「最も強い糾弾の意」を表明した。
香港裁判官ら制裁を
15日の有罪判決を受けて、声明は同日発出された。
黎氏について、判決は香港当局の鎮圧行為に対する民主化デモが拡大した2019年以降、米政治家らとの面会を通じ、中国や香港への制裁発動を呼び掛けたなどと指摘し、外国勢力との結託により国家安全への危害を共謀した罪を認定。蘋果日報の記事を通じ、香港政府への憎悪などをあおったとして刑事罪行条例違反罪も認定した。
声明は国際社会に対し、①判決に対する糾弾声明の発出②捜査や裁判に関与した香港裁判職員らへの経済制裁と入国制限の発動③すべての政治犯の即時釈放の要求と黎氏への適切な医療措置④企業に対し香港で事業運営する上での政治的・法的リスクの勧告⑤政治的理由で香港を離れた市民への庇護と支援─を求めている。
黎氏は「ジャーナリストの天職全う」
声明は、香港の高等法院(高裁)が認定した黎氏の「罪」について、「ジャーナリストとしての天職を全うした。すなわち、真実を報道し、不正を批判し、香港の人権状況に対する国際社会の関心を求める活動に他ならない」と説明した。
有罪を下した判決文に対して、「黎氏の正当な批判を中国共産党に対する『深い怨恨と敵意』と歪曲し、共産党を打倒しようとする『陰謀』と中傷している」とし、判決で用いられた論法を「異見を弾圧するための政治的道具に他ならない」と指摘した。
蘋果日報の161本の記事を「扇動的」と認定したことについては「警察の暴力に対する批判、国安法への疑義、政府・政策への異議が含まれている」とし、「いずれも自由社会において保護されるべき報道活動」と説明した。
日本は香港の報道の自由を守って
外国要人との会談や国際メディアでの意見表明を「制裁、封鎖または敵対行為の要請」と認定しているとして、「事実上、香港市民から国際社会との交流のあらゆる権利が剥奪されることとなる」と問題視した。
香港公民代表会議の事務局長を務める葉錦龍氏=令和5年7月10日、東京都新宿区(奥原慎平撮影)香港公民代表会議の事務局長を務める葉錦龍氏(38)は産経新聞の取材に、日本政府に対し「香港の報道の自由を守るため毅然とした対応を香港政府に要求すべきだ」と語った。
強権恐れぬ香港市民
黎氏に対する量刑は後日言い渡されるが厳刑が想定される。
78歳の黎氏は詐欺罪で禁錮5年9月などの判決を受けており、さらなる重刑について黎氏の家族は「死刑判決に等しい」と、各国政府に中国への働きかけを求めている。
声明は黎氏が香港社会に果たした役割をこう称えた。
「強権を恐れぬ香港市民として、香港の報道の自由の擁護者たる精神を示した」(奥原慎平)