おおかみ座に「新星」出現、300万倍の増光で肉眼観測も可能 どこに見える?
■なぜV462 Lupiは明るくなった? この星は古典新星とみられている。寿命を終えた恒星の高密度の残骸である白色矮星と、老化して膨張している赤色巨星が、重力で引き合って互いの周りを回っている連星系における爆発現象だ。 米航空宇宙局(NASA)によると、伴星(この場合は赤色巨星)から放出された高温の水素ガスが、主星である白色矮星の重力に引き寄せられてその表面に降り積もり、熱核爆発を引き起こす。恒星を消滅させる超新星爆発とは異なり、新星爆発は白色矮星の表面にのみ影響を及ぼすため、同じプロセスが何度も繰り返される。新星爆発が起こると、その天体は何百万倍もの明るさを放つ。 ■V462 Lupi、どこからどう見える? 天文情報サイトのSky&Telescopeによれば、北緯40度付近からなら地平線から約10度の低空に、北緯25度付近からは高度25度あたりに見える。3等星のおおかみ座δ(デルタ)星とβ(ベータ)星の間に位置している。(日本国内なら日の入り1~2時間後に南の低空を探すとよい) 南へ行くほど高度が上がって見えやすくなる。双眼鏡を使うと探しやすい。望遠鏡を使う人向けには、アメリカ変光星観測者協会(AAVSO)がファインダーチャートを公開している。 ■もう一つの見逃せない新星爆発 V462 Lupiは、天文界がおよそ80年周期で爆発を繰り返す「再帰新星(さいきしんせい)」と呼ばれる連星系天体「かんむり座T星(T CrB)」の新星爆発に備える中で出現した。 英語で「Blaze Star(火炎星)」の異名をとるかんむり座T星は、激しい変光現象を伴う「激変星」に分類され、1866年と80年後の1946年に肉眼で見えるほど明るくなったことが観測記録に残っている。2023年に発表された論文で直近10年間の光度の増大が報告されており、爆発の前兆と考えられているが、幾度か発表された予測時期を過ぎてもまだ爆発は確認されていない。 かんむり座T星は太陽系から約3000光年離れており、夜空に見えるほとんどの星よりもはるかに遠くにある。私たちは、3000年前に起こった爆発の光が届くのを待ち構えているのだ。
Jamie Carter