限界費用ゼロの衝撃:ポスト・スカーシティとラジカル・アバンダンスが変える未来 #エキスパートトピ

政策ディスラプティブストラテジスト、早稲田大学招聘研究員
「資源の希少性(スカーシティ)」の問題がなくなるかもしれない?(写真:イメージマート)

 私たちが生きる現代社会は、これまで「資源の希少性(スカーシティ)」を前提に構築されてきました。経済学とは、限られた資源をいかに効率的に分配するかを考える学問であり、私たちの労働や所有の概念も、この「足りない」という制約から生まれています。しかし、テクノロジーの指数関数的な進化は、その前提を根底から覆す「ポスト・スカーシティ(Post-Scarcity、脱希少性)」と「ラジカル・アバンダンス(Radical Abundunce、根源的な充足)」という新たな地平を切り拓こうとしています。

ココがポイント

物質的資源の供給が極めて豊富になり、人間社会において基本的な生活財の希少性がほぼ消滅する状態を指す概念出典:KWP News/九州と世界のニュース 2026/3/21(土)

根源的な制約を完全に打ち破り、(中略)労働を伴わずに、無限に近い豊かな財が供給される経済や社会の状態を指す出典:もう働かなくてよい世界 - そのときわたしたちがやるべきこと 2025/8/22(金)

ポスト・スカーシティの経済学:スタートレックのレプリケーター普及で、世界はどう変わる?

DeepMind’s Founder on A.I. and ‘Radical Abundance’

エキスパートの補足・見解

 「ラジカル・アバンダンス(根源的充足)」とは、ナノテクノロジーやAI、自動化の極致により、物質やエネルギーをほぼゼロコストで供給可能にする概念です。デジタルデータのコピーのように物理的価値(アトム)を生み出せるこの時代、経済の前提である「資源の希少性」は崩壊し、「ポスト・スカーシティ(脱希少性)」社会が到来します。

 この転換は、極めて重大な政策的含意を持ちます。第一に、生存のための労働が役割を終える中で、ベーシックインカムを超えた「ポスト労働社会」における新たな社会保障と自己実現支援の再設計が急務となります。第二に、富の偏在を防ぐための知的財産権の柔軟化や、分散型製造拠点の整備といった、リソースの民主化を促すインフラ政策が不可欠です。

 かつて富とは「所有」の量でしたが、アバンダンスの時代には、溢れるリソースをいかに社会の質的向上に繋げるかという「創造的ガバナンス」が国力を左右します。政策立案者には、既存の「奪い合いの経済」を脱し、無限の可能性を最適に分配・管理する新たな知能国家への移行が求められています。

政策ディスラプティブストラテジスト、早稲田大学招聘研究員

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与(大臣付)、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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