肉眼で見える銀河系で最古の星「カシオペヤ座ミュー星」、驚異の127億歳(Forbes JAPAN)
肉眼で見える天の川銀河(銀河系)の恒星の中でこれまでに知られている最古の恒星は、オリオン座のベテルギウスのように超新星になる寸前の明るく輝く赤色超巨星でもなければ、銀河系のハロー領域にある非常に古い球状星団に属する星でもない。 【画像】銀河系で最古級の恒星カシオペヤ座ミュー星の位置を示した星図 「カシオペヤ座ミュー(μ)星 A(Mu Cas A)」と呼ばれるこの星は、単なる散在星(星団に属さない恒星)にすぎず、太陽と同じスペクトル型(G型)の黄色矮星だが、その年齢は驚異的な127億年なのだ。北天の星座カシオペヤ座に位置するMu Cas Aは、接近して見えるカシオペヤ座シータ(θ)星と見かけの二重星を成し、アラビア語で肘を意味する「Al Marfiq」からマルファクという愛称で呼ばれている。また、11.6等と暗い伴星Mu Cas Bと連星を構成している。 わずか約25光年の距離にあるMu Cas Aは、秒速約97kmという猛烈な速度で地球に向かう視線方向に進んでいる。実際に西暦5200年までには、隣の星座のペルセウス座の方へ移動してしまうのだ。 米ローウェル天文台のサイエンスディレクターを務めるジェラルド・ファンベルは、取材に応じた電子メールで、銀河系にある星の大半はMu Cas AとBほど古くないと述べている。宇宙開闢のビッグバンからわずか8億年後に起きたと考えられる銀河系の誕生から最初期世代の恒星がどのようなものだったかを、この連星によって知ることができるという。 北半球の晴れた夜に、十分に暗い場所を見つけられるなら、この連星を肉眼で見ることができる。そこそこの双眼鏡があれば間違いなしだ。たとえ光害のある郊外地区に住んでいてもだ。 夜空でMu Cas Aを見つける方法は次の通り。 カシオペヤ座の巨大なWから、外側の2本の腕を下方に伸ばして交差したところが、Mu Cas Aのある位置だと、ファンベルは説明している。 ファンベルによると、主星のMu Cas A(Aaと表記される場合もある)は、太陽と同じスペクトル型のG型主系列星のG5V型で、太陽(G2V)よりわずかに赤い(表面温度が低い)だけだ。古い星であるために「金属(重元素)」量が低いので、その色にしては予想より温度が低いという。太陽とは異なり、水素やヘリウムより重い元素をほとんど含んでいないと、ファンベルは続けた。 驚くべきことに、連星Mu Casは、まだ銀河系の円盤部が形成すらされないうちに銀河系に取り込まれた矮小銀河内で形成された可能性が高い。銀河系内にあるMu Casや他の類似の恒星が非常に興味深いのは、銀河系の最初期の時代を恒星理論研究者に垣間見せてくれるからだ。