2026年に向けて備えるべき「AIトレンド8選」──AIが日常を作り変え始める年(Forbes JAPAN)
昨年の著者の予測どおり、2025年はAIが日常生活に本格的に入り込んだ年だった。仕事、遊び、学び、そしてほぼあらゆる営みに、その影響は無視できないものになった。 では、ここからどこへ向かうのか。自分は、2026年には長期的な影響が目に見える形で現れ始めると考えている。 これは、医療や教育の水準向上、科学的発見の加速、さらには生活の単純化と効率化など、数えきれない方法で素晴らしい機会を生み出し続けるだろう。 同時に、エネルギーコストの増大や社会的課題、信頼・プライバシー・規制をめぐる問題にも、社会は向き合わざるを得なくなる。 AIバブルははじけるのか? そうかもしれない。しかし2000年のドットコム・バブルも同様に崩壊したが、インターネットの普及を大きく鈍らせはしなかった。経済の観点からいえば、AIに全面的に傾注した企業に対し、それが本当に成長と価値を生み出せるのかを示すよう求める圧力は今後も続くはずだ。 しかし大多数の人々にとって、最も重要な関心は、AIが日々の生活をどのように持続的かつ意味のある形で作り変えていくかという点にあるだろう。 以上を踏まえ、2020年代の後半に向けて、議題の最上位に来ると自分が考えるトレンドを挙げよう。
■1. 日常生活におけるエージェント エージェント型AIは、間違いなく2025年のホットなバズワードだった。そして2026年は、これら自律的に行動しタスクを遂行するアシスタントの効果が本格化する年になる。 ChatGPTのように質問に答えたりコンテンツを生成したりするだけでなく、日用品の注文、旅行手配、さらにはスマートホーム機器と連携して家事を管理するといった日常の作業まで担うことを想像してほしい。職場では、AIはサポート役から卒業し、複雑なプロジェクトの調整と遂行に踏み込み、外部のステークホルダーやシステムとやり取りしながら中長期の目標を達成するようになる。 ■2. 合成コンテンツの危機 ある予測によれば、2026年にはオンラインコンテンツの最大90%が合成的に生成されたものになる可能性がある。すでに偽情報の拡散や民主的プロセスへの脅威に使われているが、不正な目的で作られない場合でも、その膨大な量がしばしば本物の人間の声をかき消してしまう。合成コンテンツには確かに役割がある、人間には追いつけないスピードで変化するデータから洞察を引き出すといった用途だ。 しかし、人間の洞察や経験の代替として使われると、真実味を欠き、一般的で低付加価値なコンテンツの奔流へと私たちを押し流すリスクがある。2026年における、真に価値ある経験を持つ人々にとっての課題は、自らの創造性と人間の声を「AIスロップ」(AIが大量生産する質の低いコンテンツ)の潮流より上に押し上げ、可視性を保つ方法を見いだすことだ。 ■3. 仕事の未来 2026年には、AIと自動化が働き方に与える長期的な影響が輪郭を帯びてくる。新しい職種が生まれ、必然的にいくつかの古い職種は失われる。 ナレッジワーカーは定型的・事務的な作業をAIやエージェントに任せ、プロンプトエンジニア、AI統合スペシャリスト、倫理の専門家といった新興職種が組織にもたらす価値についての見通しがより明確になる。その一方で、人員削減とそれに伴うコスト削減の機会の追求を続ける企業もあるため、継続的なレイオフや雇用喪失も生じる可能性が高い。 ■4. 物理世界におけるAI このトレンドは、私たちの周囲を形作る物理的なシステムや機構に対するAIの影響力拡大を指す。自動運転車は今後ますます一般的になり、倉庫、建設、医療の現場で肉体労働を担うヒト型ロボット労働者、そしてInternet of Things(IoT)を構成する相互接続機器の網も含まれる。 2026年、AIはもはやスマホのアプリやPCのソフトを動かすだけではない。規制やセキュリティのガードレールが成熟するにつれ、家庭や産業、職場にAIが常駐し、世界における触れられる存在となり、あらゆる形態のテクノロジーとの関わり方と関係性を再定義する。