遺骨返還の東大は「最も差別的」 ハワイ先住民が耳を疑った言葉

東京大学=東京都文京区で2021年6月15日、武市公孝撮影

 東京大が昨年11月、収集・保管してきた米ハワイ先住民の遺骨10体を先住民側に返還していたことが取材で判明した。遺族や地域の同意なく持ち去られた遺骨の返還交渉は、東大と先住民側で直接進められた。

 先住民側の交渉役に立ったのは、30年以上にわたり遺骨や副葬品の返還運動を続けてきたハワイ先住民の支援団体「フィ・イビ・クアモ」のエドワード・ハレアロハ・アヤウ代表。死者の尊厳に対する東大の意識の低さに驚いたという。【聞き手・三股智子】

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 ――交渉の経緯を教えてください。

 ◆最初に、旧東京帝国大医科大(現東大医学部)の小金井良精名誉教授の日記から、東大にハワイ先住民の遺骨4体があることが分かり、返還請求をしました。その後、東大で遺骨の調査研究をした経験のあるハワイ大教授の協力を得て、計10体の存在が明らかになりました。再度東大に伝え、2024年11月に返還を受けました。

 ――遺骨はどのような人々のものでしたか。

 ◆10体の頭骨でした。ハワイの文化では先祖に失礼に当たるため、性別や年齢などの情報は明らかにできません。今年1月に再埋葬しました。

 小金井氏が関与した4体はハワイ王朝時代の土地に埋葬されていたものです。1901年、許可なく土地に入り、泥棒のように持ち出されました。科学研究の目的だったとしても、遺骨の持ち去りは当時でも非難される行為でした。

 ――どのように返還されましたか。

 ◆私たちが東大に先祖を迎えに行きました。返還式典はなく、私たち自身で先祖を連れて帰るための伝統儀式を行いました。

 驚いたのは、遺骨の不適切な収集など過去の過ちに対する謝罪の言葉が全くなかったことです。東大の対応には、人間の尊厳を尊重する姿勢が見えませんでした。遺骨を人としてではなくモノ、研究対象として扱っています。私はこれまで欧米の大学や博物館から多くの返還を実現してきましたが、最も差別的だと感じました。

 返還について報道機関やハワイのコミュニティーにも秘密にするよう言われ、耳を疑いました。私たちは「返還は良いことだ。東大は日本の顔でもある」と訴えましたが、知られたら大きな問題になると言うのです。とても失礼で差別的な対応だと感じました。

 ――望ましい返還のあり方をどう思いますか。

 ◆人間としての思いやりが一番大事です。それが和解にもつながります。亡くなった後でも、遺骨が人であることは変わりません。誰かの親、誰かの子であり、モノではありません。自分のこととして考え、思いやりを忘れないでほしい。

 ――今後望むことは?

 ◆ハワイの人々は怒っているわけではありません。東大はいまだに日本や世界の日系人にとってリーダーでありヒーローです。責任を持って日本で最初の国際返還に応じてくれたと思っています。他の遺骨返還にも進展することを願っています。

   ◇

 東大は毎日新聞の取材に「ハワイ先住民の遺骨については、関係機関と協議の上で返還を実施した。今後も引き続き、政府方針に基づき対応していく」と回答した。

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