山下美夢有が独走V&吉田優利2位! 強風のカナダで明暗分けた本音【米女子ツアー】
カナダ・アルバータ州のロイヤルメイフェアGC(6452ヤード・パー70)で開催された米国女子ツアー「CPKC女子オープン」最終日。山下美夢有が初日から一度も首位を譲らない完全優勝を達成し、見事今季2勝目を飾った。単独2位には通算14アンダーで吉田優利が入り、日本勢のワンツーフィニッシュという快挙で幕を閉じた。山下がマークした「257ストローク通算(23アンダー)」は、2019年にコ・ジンヨンが記録した大会最少ストローク「262」を実に5打も塗り替える歴史的大記録だ。さらに、日本人選手がLPGAツアーで2年連続の複数回勝利を記録したのは、あの岡本綾子(1986〜1988年)以来、実に38年ぶり2人目という快挙でもある。しかし、リーダーボードの華やかな結果とは裏腹に、当事者たちの口からは「緊張」「苦痛」といった生々しい言葉がこぼれた。彼女たちがコース上で何と闘っていたのか、それぞれのリアルを紐解く。
岡本綾子(1986〜1988年)以来、実に38年ぶり2人目の2年連続の複数回勝利を達成した山下美夢有
最終日の山下美夢有は、まさに別次元のゴルフを展開した。最終日は「66」をマークし、2位に9打差をつける通算23アンダーというスコアは、他を寄せ付けない圧倒的な強さを示していた。
傍目には、完璧で簡単なラウンドのように見えたに違いない。しかし、試合後の会見で山下は意外な言葉を口にした。
「緊張していました。緊張するラウンドでした。だからこそ、自分のショットとゲーム、そしてスウィングを信じました」
スコアボードの数字だけでは決して測れないプレッシャーが、彼女の心にはのしかかっていたのだ。その重圧を跳ね返す土台となったのは、不調の時期に立ち返った原点だった。今シーズン、思うような結果が出ない時期があったが、日本に戻り父親とともにゴルフに向き合った。
「家族の存在がいいですね」
山下がそう語るように、家族というパーソナルな支えが、極限状態での彼女の心を静かに支えていた。
飛距離を凌駕する「マネジメント」と「適応力」
通算23アンダーというビッグスコア。ツアーでは決して飛ぶほうではない山下が、なぜこれほどまでにスコアを伸ばせたのか。その答えは、彼女自身の明確な自己分析の中にある。
「パー5でのバーディチャンス、フェアウェイキープ、そしてショートゲームです」
山下は自身のストロングポイントをこう言語化した。スタッツを見ても、彼女のプレースタイルは一貫している。圧倒的な飛距離でコースをねじ伏せるのではなく、正確なショットでフェアウェイを捉え、得意のショートゲームで確実にスコアをまとめる。その緻密なマネジメントの勝利だった。
さらに驚くべきは、彼女の「適応力」だ。カナダでのプレーは今回が初めてだったにもかかわらず、コースを見た瞬間に「日本のコースに似ていてプレーしやすい」と直感したという。事前の優勝予測はしていなかったものの、自身の強みである精度とショートゲームが活きるコース設定を見極め、最高の結果を引き出した。その冷静な判断力こそが、彼女の真の凄みと言えるだろう。
強風の罠と9打差の現実。味わった「苦痛」と「未来を掴んだイーグル」
山下が自身のゲームを完璧にコントロールしていた一方で、単独2位となった吉田優利は、過酷な自然環境との激しい闘いを強いられていた。
「今日は本当に風が強くて、バーディチャンスを作れませんでした」
最終日を振り返る吉田の言葉からは、思い通りにいかないフラストレーションが滲み出る。さらに彼女は、バックナインの心境を「苦痛だった」と表現した。強風下でスコアを伸ばせない焦り、迫り来る後続のプレッシャー。それはまさに、精神を削られるような時間だった。
しかし、その苦痛の中で彼女はプロとしての意地を見せた。12番で奪った起死回生のイーグルについて、彼女は「あのイーグルは私にとってとても大きな意味を持ちます。本当に嬉しかった」と万感の思いを明かした。
【動画】吉田優利、起死回生のロングパットイーグル!【LPGA公式YouTube】
https://www.youtube.com/embed/S1bdrHT0o18?feature=oembed
Round 4 Highlights presented by SERVPRO | 2026 CPKC Women's Open
youtu.be「大きな意味」――それは単なる1ホールのスコアに留まらない。今大会前、ポイントランク93位のシード圏外(196.200pt)に沈み、プロキャリア初の6戦連続予選落ちを経験するなど絶望的な淵にいた吉田にとって、この強風下で単独2位を死守して得た「320ポイント」は、総ポイントを516.200ptへと跳ね上げ、一気に来季の米シード権(80位以内)を決定づける命の1打となったのだ。苦しい展開の中でも自らの手で未来を切り拓いた勝負強さこそ、彼女の真骨頂と言える。
とはいえ、勝者との間には「9打」という明確な差が存在した。吉田はその現実から目を背けない。
「6打、8打と離されていたので、もっと練習が必要だと思います」
清々しいほどの潔さで敗北を受け入れ、さらなる成長を誓う姿勢がそこにあった。
闘志を燃やす2人
過酷な1日を経て、明暗が分かれた二人の日本人選手。吉田は「アジアンスウィングに向けて自信になった。来週プレーするのが本当に楽しみ」と前を向く。
一方の山下は、残りのシーズンに向けて「試合数は少ないですが、一生懸命取り組んで優勝を目指したい。いつも通りの自分のプレーをするだけです」と、静かな闘志を燃やしている。
全く異なる感情と経験を抱えながら、それぞれの次戦へと向かう二人のプロフェッショナル。スコアの裏側にある彼女たちのリアルな葛藤と矜持を知ることで、ゴルフというスポーツの奥深さがより一層浮かび上がってくる。
写真/LPGA, Getty
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「LIVゴルフ・インディアナポリス」最終日、22歳のルーキー、マイケル・ラ・サッソが通算18アンダーで逃げ切り、プロ初勝利をLIV史上最年少での優勝という形で飾った。猛追した年間王者ジョン・ラームを1打差で振り切った若き才能の強心臓と、リーグの未来について赤裸々に語ったブライソン・デシャンボーの言葉から、最終日の熱狂を振り返る。
ツアー初優勝を果たしたマイケル・ラ・サッソ(写真はLIVゴルフ・リヤド)
「前夜、うちのSNS担当に言ったんだ。『正直に言うけど、今回勝つのは僕だ』ってね。ずっと前から言葉にして引き寄せていた。それが本当に現実になるなんて信じられないけれど」
最終日を「65」でまとめ、最年少優勝の快挙を成し遂げたラ・サッソは、興奮冷めやらぬ様子でそう語った。
劇的だったのは最終18番ホール(パー5)の攻防だ。18番のティーグラウンドに立った時点で、ラームと17アンダーで並んでいたラ・サッソ。ラームがフェアウェイからの2打目をミスして痛恨のボギーを叩く中、ラ・サッソはプレッシャーに打ち勝ち、見事なアプローチ(寄せワン)でバーディを奪って通算18アンダーで劇的な勝利を掴み取った。
「早く打ちたくて仕方がなかった。落とし所は正確に見えていたし、完璧なイメージ通りに転がってくれた」と22歳とは思えない強心臓を見せた。
最終日、LIV最年長である53歳のリチャード・ブランドと同組で回ったラ・サッソは、「僕がLIVに参戦したプロ最初のラウンドで同組だったのがブランドさんだった。最終日の最終組で再び彼と回るなんて運命的なものを感じるよ」と笑顔を見せた。さらに、今大会を欠場していた所属チーム「HyFlyers GC」のキャプテン、フィル・ミケルソンからも「テレビ観戦していて、これまでの人生で一番楽しい時間だった」と熱い祝福メッセージが届いたことを明かした。
彼が所属するHyFlyers GCのチームメイト、ブレンダン・スティールは若き勝者をこう称賛する。
「彼の才能は規格外だ。飛距離も出るし、球筋も操れる。今年はパッティングに悩んでいたが、先週から新しいパットコーチと取り組み始め、セットアップとスタートラインを少し変えただけで優勝してしまった。小さな変化がこれほどの違いを生むなんて驚きだ」
ラ・サッソに1打及ばず2位に終わったジョン・ラーム。個人の部で3連覇を達成。来季もLIVゴルフに残るのか(写真はLIVゴルフ・UK)
一方、この日「63」という驚異的な猛チャージを見せながら1打及ばなかったジョン・ラームは、一切の言い訳をせずに勝者を称えた。
「自分がミスをして扉を開けてしまったが、マイケルは18番で見事なアップ&ダウンを見せた。彼がもぎ取った勝利だし、彼にふさわしい優勝だ」
年間王座を獲得したトップ選手としての器の大きさを証明する、潔く美しい敗戦の弁であった。
記者会見で直近の予定や周囲の噂について聞かれたラームは、「そんなことより、今はとにかく帰宅して、妊娠後期の妻を助けたいんだ。10月には4人目が生まれるから『4対1』の数的不利の戦いになる(笑)。そして何より、明日の朝10時に予約している散髪(ヘアカット)に行きたい。今本当に髪を切りたいんだ!」と語り、記者たちの爆笑を誘った。
また、個人戦では2位となったラームだが、彼が率いるチーム「Legion XIII」は通算44アンダーを記録し、チーム戦2年連続王者を見事に達成。メンバーのケイレブ・スラットが「ジョンが僕にチャンスをくれたことで人生が変わった」と語るなど、ラームの圧倒的なリーダーシップと強固な絆をアピールした。
デシャンボーが語る「LIV 1.0」の総括と未来
最終戦3位タイで終わったブライソン・デシャンボー。契約は26年までという噂で27年シーズンにLIVゴルフに残るのか、注目だ(写真はLIVゴルフ・ニューヨーク)
この日「64」をマークし、通算16アンダーの3位タイに入ったブライソン・デシャンボーは、自身のプレーの振り返りにとどまらず、LIVゴルフのこれまでの歩みについて、チームキャプテンとして、そしてリーグの顔として口を開いた。今大会で旧契約が満了を迎える彼の言葉には、並々ならぬ思いが込められていた。
「(LIVでの日々は)とても興味深い道のりだった。私たちが経験してきたすべてのこと、困難な瞬間もあったが、それが私達を強くしてくれた」
巨額の資金で立ち上がった新リーグは、既存ツアーとの対立や様々な逆風にさらされてきた。デシャンボーはその事実を潔く認める。
「正直に言うなら、すべてが完璧だったわけではない。残念ながら起きてしまった悪いこともあった。しかし、我々はゴルフ界に違う何かをもたらしたという誇りがある。その点においては、素晴らしい仕事をしてきたと思う」
そして彼は、次のフェーズへと向かうLIVゴルフの未来に強い期待を寄せる。
「LIV 1.0から2.0へと移行する中で、来年何が起こるかについて素晴らしい考えを持っている。もっと率直に話せたらいいのだが……」と含みを持たせつつ、「我々が成し遂げてきたこと、その良い面も悪い面も含めて誇りに思っている」と語った。
「完璧ではない」からこそ面白い――試行錯誤の先に生まれる熱狂
ラ・サッソのような恐れを知らない若手の台頭と、ラームのような世界トップ選手の技術と潔さ。そして、デシャンボーが牽引する新しいゴルフエンターテインメントの形。
「すべてが完璧だったわけではない」という反省を胸に、LIVゴルフは試行錯誤を続けながら、確実に独自のストーリーを生み出し続けている。投資構造を刷新し、新たなステージである「LIV 2.0」へと進化を遂げるリーグが、これからどのような試合とエンターテインメントを見せてくれるのか、注目したい。
写真/LIVゴルフ
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男子プロ・木下稜介は「リリースしないで体を回す」スウィングに変更したことで、飛距離&安定感がアップしたのだという。シングルハンディの腕前を持つイラストレーターの野村タケオが、木下流のスウィングを実際に試してみた!
みなさんこんにちは。ゴルフバカイラストレーターの野村タケオです。僕ももういい歳なのですが、それでもやっぱり少しでも飛ぶようになりたいと思っちゃうんですよね。月刊ゴルフダイジェスト10月号の「男子プロから”本物”を学ぶ」という特集に木下稜介プロが飛距離を伸ばした方法が書かれていました。なんでも35歳の今が一番飛んでいるのだとか。これは気になるので、試してみることにしました。
月刊ゴルフダイジェスト2026年10月号で特集されていた、木下稜介プロの「リリースしないで体を回すスウィング」を実践!
記事によると、木下稜介プロは33歳の時にドラコンプロの山崎(泰宏)プロに指導を受けるようになり、35歳の今では10ヤード飛距離が伸びているそうです。球筋もドローからフェードになり、飛距離と同時に安定感も増したのだとか。
木下プロが取り組んだスウィング改造のポイントとしては、まず「タメてリリース」から「リリースしないで体を回す」に変更したこと。以前は腕を体に引きつけてクラブをタメながら下ろし、インパクトでリリースしていたそうですが、現在は右腕を伸ばしたまま体を回すようにしているそうです。そのことで遠心力が増し、安定感もアップしたのだとか。
(左)タメてリリースから(右)リリースしないで体を回すに変える
そして2つ目のポイントは「大きな体重移動」から「その場で回転」にしたこと。今まではトップから体が左に大きく突っ込みながら打っていたそうですが、今は左耳のラインを軸にして、その場で体を回しているそうです。ボールより後方で打つというイメージですが、リリースをしないのでダフったりはしないそうです。
(左)左耳のラインを軸にして(中)以前は左に大きく突っ込んでいた(右)その場で体を回すようにする
3つ目はバックスウィングでは「コック」から「ノーコック」へ変えたこと。ダウンスウィングで右腕を伸ばすようにしているそうですが、バックスウィングですでにノーコックの意識で手首は軽く固めているのだとか。
そして最後に腰は「スライド」から「水平に回す」へと変更。体重移動をしていたときは腰が回らずに左にスライドしてしまうことがあったそうですが、そうなると軸が傾いてしまいます。今は腰を水平に回すようにしているそうです。
(左)体重移動をして体をスライドさせるのではなく(右)腰を水平に回すようにする
右ひじを曲げず体を回す練習ドリル
これらのポイントを踏まえてまず素振りをしてみました。僕も結構インパクト付近では手でリリースをしてしまっているので、右腕を伸ばしたままリリースしないで体を回すというのは違和感があります。さらにその場で体を回すというのも、意外とかなり気にしないとできないですね。どうしても少し左に突っ込んでしまいます。何度か素振りをしていると、だんだん感覚はわかってくるようになります。しかしやはりまだ右腕を伸ばしたまま振るという感覚がなかなか難しい。
木下プロがこのスウィングのためにやっている練習方法が載っていたので、まずそれをやってみることにしました。8番アイアンを持ち、ひじを曲げずに腕と体を同調させてボールを打つというドリルです。ポイントはスウィング中は一度も右ひじを曲げずに伸ばしたまま、体の回転でボールを打つということ。ひじを曲げてしまい腕が体に近づくとリリースしないといけなくなり難しくなります。なるべく大きなアークを意識して振るとうまくいくということです。フォローまで腕は伸ばしたままです。
ひじを曲げずに腕と体を同調させて打つ。スウィング中は一度もひじを曲げず、体の回転でボールを打つ
やってみましたが、ずっと腕を伸ばしたままというのがやはりなかなか難しいです。しかもしっかりと体を回していかないとボールに上手くコンタクトできません。「腕を伸ばしたまま」と「体をしっかり回す」というのはセットじゃないと上手く打てませんね。
最初はなかなか上手くミートできませんでしたが、何度もやっているうちにそこそこ当たるようになってきました。とにかく腕は伸ばしたままで体を回すことでスウィングするというような感覚だと上手くいくようです。腕は何もしない感覚ですね。
ドリルをやって、少しは腕を伸ばしたまま打つという感覚がわかったので、ドライバーショットをしてみました。いや〜やっぱり難しいです。どうしてもトップで腕が曲がってしまって、その分インパクトでリリースをしてしまいます。肩甲骨などの柔軟性が低いので、ある程度は仕方がないのかもしれません。自分の中では精一杯腕を伸ばしたままで体を回転させていくと、腕をあまり使わずに打つという感覚が少しわかるような気がします。
しかしどうしても少し左に突っ込んでしまうので、かなりその場で回るという意識を強く持たないとダメですね。何度か打ってもなかなかいい当たりにはなりませんが、これができるようになると手打ちの悪い癖が直り、安定感はアップすると思います。体の回転が速くなれば、ヘッドスピードもアップすると思うので、そうなれば飛距離もアップするのではないでしょうか。
木下プロが取り組んだという飛距離アップの方法を試してみましたが、やはり簡単にすぐできるようなことではありませんでした。しかしこれをやれば、腕を使わず体の回転でボールをとらえるというスウィングが身に付くのは間違いなさそうです。僕は手打ちの悪い癖があるので、まずは片手で腕を伸ばしたまま打つドリルをコツコツやることで、少しずつ身につけていこうかと思います。皆さんもぜひ一度ドリルだけでも試してみてはいかがでしょうか。
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カナダ・アルバータ州のロイヤルメイフェアGC(6452ヤード・パー70)で開催された米国女子ツアー「CPKC女子オープン」最終日。山下美夢有が初日から一度も首位を譲らない完全優勝を達成し、見事今季2勝目を飾った。単独2位には通算14アンダーで吉田優利が入り、日本勢のワンツーフィニッシュという快挙で幕を閉じた。山下がマークした「257ストローク通算(23アンダー)」は、2019年にコ・ジンヨンが記録した大会最少ストローク「262」を実に5打も塗り替える歴史的大記録だ。さらに、日本人選手がLPGAツアーで2年連続の複数回勝利を記録したのは、あの岡本綾子(1986〜1988年)以来、実に38年ぶり2人目という快挙でもある。しかし、リーダーボードの華やかな結果とは裏腹に、当事者たちの口からは「緊張」「苦痛」といった生々しい言葉がこぼれた。彼女たちがコース上で何と闘っていたのか、それぞれのリアルを紐解く。
岡本綾子(1986〜1988年)以来、実に38年ぶり2人目の2年連続の複数回勝利を達成した山下美夢有
最終日の山下美夢有は、まさに別次元のゴルフを展開した。最終日は「66」をマークし、2位に9打差をつける通算23アンダーというスコアは、他を寄せ付けない圧倒的な強さを示していた。
傍目には、完璧で簡単なラウンドのように見えたに違いない。しかし、試合後の会見で山下は意外な言葉を口にした。
「緊張していました。緊張するラウンドでした。だからこそ、自分のショットとゲーム、そしてスウィングを信じました」
スコアボードの数字だけでは決して測れないプレッシャーが、彼女の心にはのしかかっていたのだ。その重圧を跳ね返す土台となったのは、不調の時期に立ち返った原点だった。今シーズン、思うような結果が出ない時期があったが、日本に戻り父親とともにゴルフに向き合った。
「家族の存在がいいですね」
山下がそう語るように、家族というパーソナルな支えが、極限状態での彼女の心を静かに支えていた。
飛距離を凌駕する「マネジメント」と「適応力」
通算23アンダーというビッグスコア。ツアーでは決して飛ぶほうではない山下が、なぜこれほどまでにスコアを伸ばせたのか。その答えは、彼女自身の明確な自己分析の中にある。
「パー5でのバーディチャンス、フェアウェイキープ、そしてショートゲームです」
山下は自身のストロングポイントをこう言語化した。スタッツを見ても、彼女のプレースタイルは一貫している。圧倒的な飛距離でコースをねじ伏せるのではなく、正確なショットでフェアウェイを捉え、得意のショートゲームで確実にスコアをまとめる。その緻密なマネジメントの勝利だった。
さらに驚くべきは、彼女の「適応力」だ。カナダでのプレーは今回が初めてだったにもかかわらず、コースを見た瞬間に「日本のコースに似ていてプレーしやすい」と直感したという。事前の優勝予測はしていなかったものの、自身の強みである精度とショートゲームが活きるコース設定を見極め、最高の結果を引き出した。その冷静な判断力こそが、彼女の真の凄みと言えるだろう。
強風の罠と9打差の現実。味わった「苦痛」と「未来を掴んだイーグル」
山下が自身のゲームを完璧にコントロールしていた一方で、単独2位となった吉田優利は、過酷な自然環境との激しい闘いを強いられていた。
「今日は本当に風が強くて、バーディチャンスを作れませんでした」
最終日を振り返る吉田の言葉からは、思い通りにいかないフラストレーションが滲み出る。さらに彼女は、バックナインの心境を「苦痛だった」と表現した。強風下でスコアを伸ばせない焦り、迫り来る後続のプレッシャー。それはまさに、精神を削られるような時間だった。
しかし、その苦痛の中で彼女はプロとしての意地を見せた。12番で奪った起死回生のイーグルについて、彼女は「あのイーグルは私にとってとても大きな意味を持ちます。本当に嬉しかった」と万感の思いを明かした。
【動画】吉田優利、起死回生のロングパットイーグル!【LPGA公式YouTube】
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Round 4 Highlights presented by SERVPRO | 2026 CPKC Women's Open
youtu.be「大きな意味」――それは単なる1ホールのスコアに留まらない。今大会前、ポイントランク93位のシード圏外(196.200pt)に沈み、プロキャリア初の6戦連続予選落ちを経験するなど絶望的な淵にいた吉田にとって、この強風下で単独2位を死守して得た「320ポイント」は、総ポイントを516.200ptへと跳ね上げ、一気に来季の米シード権(80位以内)を決定づける命の1打となったのだ。苦しい展開の中でも自らの手で未来を切り拓いた勝負強さこそ、彼女の真骨頂と言える。
とはいえ、勝者との間には「9打」という明確な差が存在した。吉田はその現実から目を背けない。
「6打、8打と離されていたので、もっと練習が必要だと思います」
清々しいほどの潔さで敗北を受け入れ、さらなる成長を誓う姿勢がそこにあった。
闘志を燃やす2人
過酷な1日を経て、明暗が分かれた二人の日本人選手。吉田は「アジアンスウィングに向けて自信になった。来週プレーするのが本当に楽しみ」と前を向く。
一方の山下は、残りのシーズンに向けて「試合数は少ないですが、一生懸命取り組んで優勝を目指したい。いつも通りの自分のプレーをするだけです」と、静かな闘志を燃やしている。
全く異なる感情と経験を抱えながら、それぞれの次戦へと向かう二人のプロフェッショナル。スコアの裏側にある彼女たちのリアルな葛藤と矜持を知ることで、ゴルフというスポーツの奥深さがより一層浮かび上がってくる。
写真/LPGA, Getty
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女子ゴルフの今季国内ツアー第24戦「CAT Ladies 2026」(8月21〜23日、神奈川県・大箱根CC=6657ヤード、パー72)は吉田鈴の逃げ切り優勝で幕を閉じた。最終日を首位タイから出て4バーディ、ボギーなしの「68」で回り、通算13アンダーまで伸ばして混戦を制した。優勝は初優勝した6月の「ヨネックスレディス」以来の今季2勝目となった。吉田、2位に入った荒木優奈、3位に並んだ「AIG全英女子オープン」覇者・桑木志帆、神谷そら、河本結、さらに初日に飛び出した加藤麗奈らが躍動した3日間を振り返る。
最終日を首位タイでスタートした吉田鈴。一時は首位の座を譲ったが、最後は通算13アンダー、2位の荒木優奈に2打差をつけて逃げ切った
初日は若手の鳥居さくら、加藤麗奈が躍進した
初日は19歳の加藤と鳥居さくらが6アンダーの「66」をマークして首位に並んだ。加藤は6バーディ、ボギーなしの完璧な内容で「スタート前はパッティングに不安を感じていましたが、いざスタートしたらショットがそれほどブレることもなく、パッティングも決まってくれたのでよかったです」と笑顔で振り返った。初日トップスタートは自身初。7月の「大東建託・いい部屋ネットレディス」で初優勝を果たしたことが自信につながったそうで「自分のプレーに自信を持つことができ、気持ちも楽になりました。楽しみながら明日はプレーしたいです」と残り2日間へ思いを馳せた。
同じく首位タイに並んだ鳥居は1イーグル、6バーディ、2ボギーの内容で、圧巻は8番(378ヤード・パー4)。ラフからの第2打を直接カップに沈める見事なイーグルを奪い「イーグルは第2打を48度のウェッジでラフから打ちました。ピン方向には飛んでいったので、寄っていたらいいなと思っていましたが、結果入っていたのでよかったです。明日は明日の風が吹くので、今日のことは忘れて目の前の1打に集中します」と喜びを口にした。
3位タイには蛭田みな美、佐久間朱莉、申ジエが入った
首位に1打差の5アンダー「67」の3位には昨年の年間女王・佐久間朱莉、2023年大会覇者の蛭田みな美、永久シードにあと1勝に迫った申ジエ、ウー・チャイェンが並んだ。
ウー・チャイェンは、仲良しの藤井美羽とタッグを組んでいた
佐久間は1番(470ヤード・パー5)でバーディ発進を決めると、前半だけで5つのバーディを奪う猛攻を披露し「前半にバーディをたくさん取ることができて、いい流れに乗れたので、初日はいいプレーができた」と手ごたえ。蛭田は5バーディ、ボギーなしと安定感抜群の内容。2023年優勝の実績があるものの「(相性が良いという)イメージはそうでもない。7番ホールで上りの4メートルが入ってくれたことで、勢いがついたと思います」と話した。
【2日目】吉田鈴と佐久間朱莉が首位浮上! 優勝争いは混戦へ
2日目は佐久間朱莉と吉田鈴が首位タイに並んだ
2日目は吉田が8バーディ、2ボギーの「66」を出し、通算9アンダーで初日の13位タイから首位タイに大きくジャンプアップ。「このコースはバーディを奪える前半と耐える後半ではまったく異なる雰囲気なので、攻め方に気をつけてプレーしました。明日は今日と違った緊張感が出てくると思いますが、最終日最終組は2回目なので、しっかりと自分のゲームプランに沿ってプレーしたいです」と今季2勝目を見据えた。
吉田と並んで首位に立ったのが佐久間。5バーディ、1ボギーの「68」で回り、こちらは初日3位タイからトップタイへ。「3パットをした12番のボギーがもったいなかったけど、13番でバウンスバックできたのでいい流れが来てくれました。今大会とは相性が悪くないですし、明日は優勝したい気持ちも強いので、集中して頑張りたいです」と今季開幕戦以来の通算6勝目へ照準を合わせた。
1打差には吉﨑マーナ、鳥居さくら、荒木優奈、神谷そらが並び、混戦状態が続いた
1打差の通算8アンダー3位には吉﨑マーナ、神谷そら、荒木優奈、鳥居が並んだ。吉﨑は6バーディ、1ボギーの「67」で回り「今日はティーショットが安定していました。明日はすごく楽しみです」と前を向いた。
神谷は「68」で回り、初日の7位タイから優勝圏内へ。「ハーフターンで欲をかかずにプレーしようと決めて、それがいい方向にいった感じです。勝ちたい試合のひとつでもあるので、最近の悪い流れを断ち切りたいです」と目線を上げた。
【最終日】勝負どころでパットが冴えた吉田鈴、歓喜の逃げ切りV
混戦を戦った仲間と抱き合う吉田
最終日は混戦模様となった。首位タイから出た吉田は前半9ホールをすべてパーとした。一時は首位を譲ったが、10番(365ヤード・パー4)でこの日初バーディを奪うと、12番(149ヤード・パー3)で3メートルのバーディパットを沈めてトップに並び、16番(422ヤード・パー4)で12メートルを決めて抜け出した。最終18番(517ヤード・パー5)は第3打を30センチにピタリとつけてバーディフィニッシュ。ウイニングパットを沈めた直後には両手を上げて喜びを表現した。
初優勝した「ヨネックスレディス」は上位陣が同週開催の「全米女子オープン」出場のため不在だったが、この大会は桑木をはじめ上位陣がそろったなかでの優勝。実力の高さを示した格好で「きちんとみんながいるなかで勝てたのが自信になります。2勝目にかかる時間も大切だと感じていました。すごく時間がかかる人とかからない人とでは成長のスピードが違うなと思っていたので、2カ月という短い期間で勝てたのは、1回勝ってから気が緩まなかったからだと思います」と喜びをかみしめた。
惜しくも2位にとどまった荒木。2位(タイ)は今季4度目
荒木は一時首位に立ちながら11番(424ヤード・パー4)のボギーで後退。吉田に2打差で昨年「ゴルフ5レディス」以来の通算2勝目を逃がし「チャンスでパットが決まらずフラストレーションがたまるラウンドでしたが、最後まであきらめずにプレーできたのはよかったと思います」と悔しさを胸にしまい込んだ。
神谷そらや河本結と並び3位タイでフィニッシュした桑木
メジャー覇者の桑木は「69」で回り、3位タイでフィニッシュ。「今週はそんなに緊張がなく最後までできたと思います。ちょっと休んで、また万全な状態で臨めるように頑張りたいです」と話した。
佐久間は通算8アンダー13位タイにとどまった。
女子ゴルフの今季国内ツアー第25戦は「ニトリレディス」で27日に北海道・釧路CC鶴居東Cで開幕する。
写真/有原裕晶
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プレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」はウィンダム・クラークが逃げ切ってシーズン3勝目を挙げ幕を閉じた。15番まで首位を並走したローリー・マキロイは上がり3連続バーディのクラークとは対照的にスコアを落とし4打差の単独3位。今大会連覇の経験があるパトリック・カントレーが単独2位に入り、ポイントランク圏外の47位から19位にジャンプアップし最終戦(トップ30)の切符を手に入れた。
今季3勝目を挙げたウィンダム・クラーク
1番で「下らないボギー」を叩いたクラークに対し同組のマキロイはバーディ発進。スタート時点で5打あったリードはあっという間に3打に縮まった。
「不思議な感じでした。緊張はしていなくて何だか上の空という感じでした」と10番までに3つボギーを叩き他の追撃を許したクラーク。
脳腫瘍の大手術から奇跡の復活優勝を遂げた地元大学出身のゲーリー・ウッドランドやトップ30入りがかかるカントレー、そしてマスターズ以来の今季2勝目を目指す同組のマキロイの追い上げに「独走で勝ちたかった」というクラークはじりじりと後退。
11番からはマキロイと14アンダーで首位を並走し、15番までノーバーディのクラークの勝利は風前の灯火かと思われた。
しかし232ヤードの16番パー3で先にバーディチャンスにつけたマキロイの外側から6メートルのフックラインを読み切り、カップ右からファーストパットを捩じ込みこの日最初のバーディを奪うと状況は一変。
17番パー5でマキロイがバンカーからバンカーを渡り歩きボギーを叩く中、クラークは16、17、18の3連続バーディでリードを広げ土壇場で勝利をもぎ取った。
「5打リードしている状況でもやっぱり勝つのは難しいですね。危ない場面もありましたが精神的に持ち堪え勝利を逃さなかったことを誇りに思います」(クラーク)
昨年全米オープンでロッカーを破壊し「世間から厳しい目で見られたり、僕じゃない他の選手が応援されたりすることもありましたが、自分としてはようやく本当の意味で自信を持って戦えるようになったと感じています」とシーズン最多タイの3勝目を挙げプレーヤー・オブ・ザ・イヤーの有力候補に名乗り上げた。
「昨年過去最悪のシーズンを経験した」クラークは「今の自分の立ち位置に満足しています」と誇らしげな表情で勝利を噛み締めた。
敗れたマキロイは5メートルのバーディチャンスを逃し相手がバーディを奪った「16番が重要な分岐点でした」と振り返った。
「良いパットだったんです。14番も15番、16番もすべていいパットを打ったけれど、ただカップに入らなかっただけ」。プレーの内容には納得しつつ結果には不満が募った。
それでも「大勢のギャラリーが醸し出してくれた熱気。彼らの前でプレーできたのは本当に素晴らしい体験でした」と敗戦を悔やむ間もなく年間王者がかかる次週のツアー選手権に向け「課題に取り組み続ける」と決意を新たにした。
下部ツアー(コーン・フェリー)で杉浦悠太が上がり3連続バーディで逆転優勝を飾ったこの日、同世代の久常涼は序盤のミスを中盤以降盛り返したものの1つスコアを落とし、スコッティ・シェフラーらと並び12位タイ。ポイントランク47位で初の最終戦進出はならなかった。
松山英樹は5バーディ、2ボギーの3アンダー67をマークし前日より15ランクアップの28位タイで終戦。ポイントランクは変わらず16位で最終戦に挑む。
写真/Getty Images
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PGA TOUR Highlights | Round 4 | BMW Championship | 2026
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