18年前、地球に起きた「重力」に関する異変とは? その謎を解く鍵は “核とマントルの境界” にあった
やっぱり地球も宇宙の一部なんだと、そんな不思議な思いに襲われることがある。2007年、重力場の異変を示す奇妙なシグナルが観測された。地球から発せられたものであることは明確だったが、その発信源は長らく不明のままだった。 【写真集】「これを守りたい!」気象衛星が撮影した、美しい地球の映像を見る 一見、深刻な問題には思えないかもしれないが、実はこのシグナルが想像を超える深さから発せられていたことが分かったのだ。 「地磁気ジャーク」と呼ばれるこの異常現象を何年も前に観測したのは、NASA(アメリカ航空宇宙局)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同で打ち上げた人工衛星GRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment)である(地球の重力場の観測を目的として2002年3月に打ち上げられた)。 パリ・シテ大学のシャルロット・ゴーニュ・グラントン率いる研究チームは、最新のシグナル(2007年1月に観測されたデータ)を分析。その結果、地殻や海洋のはるか下――地球の深部から発信されていたことが判明したのである。
GRACEは2003年から2015年にかけて重力異常の検出を行っていた。前後して飛行する2基の人工衛星が、質量や重力の高い領域の上空を通過すると、先行する1基がまず加速し、続く衛星との距離に変化が生じる。逆に、重力の低い領域では減速する。この衛星間距離の変化をもとに、地球全体の重力マップが作成された。 その数値が想定より大きい、あるいは小さい場合、それが「重力異常」として検知される。重力異常そのものは珍しい現象ではないが、その仕組みはまだ十分に解明されてはいない。 研究チームはGRACEのデータ解析を進めるなかで、ある際立った異常に注目した。大西洋東部に広がる7000kmの領域で、2006年から2008年にかけて奇妙な重力異常が観測されていたのだ。強い重力場と弱い重力場が隣り合うように存在する広大な領域が確認された。 当初、研究チームはシグナルの発信源を海洋と考えたが、それでは説明がつかなかった。表層の海水だけでは引き起こせないほどの大きな重力異常だったのである。