トランプ関税、国際株に追い風-不確実性で米国株の独走は終わりへ

トランプ米大統領による関税政策が、国際株式市場に大きな追い風となっている一方、少なくとも現時点では、米国株の代表的な指標であるS&P500株価指数の独走状態が、終わりを迎えつつある。関税や通商の不確実性が、米国企業の利益成長に過度な影響を及ぼすとの懸念が主な要因とみられる。

  今年に入り、S&P500が上昇率7.8%なのに対し、同指数を除いた「MSCI世界指数」は18%上昇と圧倒している。背景は、各国の個別の株価動向を見れば明らかだ。メキシコの主要株価指数は年初来18%上昇、カナダは12%、ドイツは21%、スペインは26%、ブラジルは14%、英国は11%の上昇となっている。

  こうした動きは、米国株が近年、特に時価総額が巨大なテック企業や人工知能(AI)への期待によって急騰していたのとは対照的だ。同期間中、国際市場は相対的に低調だった。この結果、米国外の株式は相対的に割安な水準に置かれていた。

  パーパス・インベストメンツのチーフ・ストラテジスト、クレイグ・ベーシンガー氏はインタビューで「時として、最大の利益は“修繕が必要な物件”にこそ眠っている」と語った。同氏は、「今、人々は米国資産を持ちすぎている」として、米国株から国際株への資金シフトが「非常に長期的な流れ」になる可能性があるとの見方を示した。

  ベーシンガー氏によると、投資家は米国に過度に投資している一方で、他の市場への投資は不十分で、米国と国際市場との間のバリュエーション格差は「歴史的に見ても非常に大きい」。この傾向が今年に入り反転しつつあり、今月からトランプ氏の関税が発効したことで、さらに加速する可能性がある。カナダ、欧州、日本などの貿易相手国が、投資家に配慮した改革を進め、国内成長を促進していることも背景にあるという。

日本・欧州に好機

  RBCグローバル・アセット・マネジメントでマネージング・ディレクター、上席ポートフォリオ・マネージャー、欧州株式責任者を務めるデービッド・ランバート氏によると、欧州や日本株に長年織り込まれてきた「超低成長」の利益見通しにも、変化の兆しが見え始めている。

  ランバート氏は欧州株について、「今後数年にわたって、現在の水準からさらに緩やかなバリュエーションの見直しが進んでもおかしくない」と語った。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)証券の6月の調査でも、回答したファンドマネージャーの54%が、今後5年間で最も好成績を上げる資産は国際株になると予想し、米国株は23%にとどまった。

  その背景にあるのは、トランプ氏の関税政策だ。関税の影響は、米国企業の利益に対して、欧州や日本企業よりも大きくのしかかるとみられている。シティ・リサーチのグローバル株式戦略チームでディレクターを務めるデービッド・グローマン氏はインタビューで「欧州や日本のような市場では、投資家が少なくとも利益への影響をある程度見積もれるという明確さがある」との見方を示した。

  もっとも、一部のストラテジストは、米国の経済的苦境が他の市場にも波及するリスクを指摘している。マニュライフ・ジョン・ハンコックの共同チーフ投資ストラテジスト、エミリー・ローランド氏らは、顧客向けのリポートで、現在のような環境では「質の低い景気敏感株の国際株は避けるべき」とする見解を示し、「過去の歴史を見る限り、米国がリセッションに陥れば、他の地域も必ず巻き込まれてきた」と述べた。

原題:Trump Tariffs Are Making International Stock Markets Great Again(抜粋)

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