【米国市況】S&P500小幅続伸、終盤に持ち直し-円は対ドル1%高
28日の米株式市場でS&P500種株価指数は小幅ながら続伸。一時は1%下げる場面もあったが、押し目買いが入り、取引終盤にかけて持ち直した。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5528.75 3.54 0.06% ダウ工業株30種平均 40227.59 114.09 0.28% ナスダック総合指数 17366.13 -16.81 -0.10%ダウ工業株30種平均も続伸。ボーイングとIBMが上昇を主導した。一方でハイテク銘柄は軟調となり、ナスダック100指数は小幅ながら下げた。投資家は貿易戦争が企業に与える影響を見極めようと、マイクロソフトやアップル、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムなど今週予定されていいる決算発表に備えている。
今週は国内総生産(GDP)や個人消費支出(PCE)価格指数、雇用統計など重要な経済データの発表も相次ぐ。米ダラス連銀がこの日発表した製造業景況報告指数は、4月に大きく低下。トランプ米大統領の関税政策が引き起こした混乱を、企業経営者らは「カオス(混沌)」や「狂気」といった言葉で表現した。
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アメリプライズのアンソニー・サグリンビーン氏は「今週は相当に多忙な週になる」と指摘。「貿易関連のニュースが続き、経済指標も目白押しだ。マグニフィセントセブンを含む企業の決算シーズンもピークを迎える。投資家には目まぐるしい展開になるはずだ」と語った。
波乱の多かった4月は終わりに近づいているが、市場関係者は荒れ相場が終わったとはみていない。モルガン・スタンレー傘下Eトレードのクリス・ラーキン氏によれば、株式相場が最近の上昇基調を維持するには、ホワイトハウスが対中貿易政策で「ハト派への転換」を本格的に実行に移す必要がある。
ベッセント米財務長官はこの日、米政府としては中国への対応を当面は後回しにし、15-17カ国との貿易協定締結を目指していると、経済専門局CNBCで発言。米政府は「あらゆる面で」中国側と接触しているが、米国との関税闘争で緊張緩和に向けた最初の一歩を踏み出すのは中国側だと述べた。
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多くの経営者は関税が業績に与える影響について明言を避けているが、ウォール街は独自の予測を進めている。ブルームバーグ・インテリジェンスのチーフ株式ストラテジスト、ジーナ・マーティン・アダムス氏は平均実効関税率22%(ブルームバーグ・エコノミクスが推計)に基づくと、粗利益率の低下によってS&P500種構成企業の25年純利益は7%減少する見通しだと分析する。現在の市場予想コンセンサスは約12%増益だ。
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UBSウェルス・マネジメントのブライアン・ビューテル氏は「中期的には、関税が企業業績に与える影響が明らかになるまで、相場は不安定な値動きを続けながら一定のレンジ内にとどまる公算が大きい」と述べた。
シティー・インデックスのファワド・ラザクザダ氏は「表面的には落ち着いて見えても、貿易摩擦、リセッション(景気後退)懸念、金融政策の不透明感といった主要リスクは依然くすぶっている」と指摘。その上で、「米中貿易協議の行方が引き続き重要なカギを握っている」と語った。
国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。2年債利回りは一時7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.68% -2.1 -0.44% 米10年債利回り 4.20% -3.1 -0.73% 米2年債利回り 3.69% -6.1 -1.64% 米東部時間 16時45分為替
外国為替市場ではドルが下落。市場が貿易交渉進展の兆しを待つ中、ドルは幅広い通貨に対して売られた。一方、主要通貨では円とスイス・フランが買いを集めた。
ジェフリーズの為替部門グローバル責任者、ブラッド・ベクテル氏は「今週発表される企業決算と経済指標への警戒感から、ドルが売られている」と指摘した。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1219.82 -6.23 -0.51% ドル/円 ¥142.08 -¥1.59 -1.11% ユーロ/ドル $1.1421 $0.0056 0.49% 米東部時間 16時45分円は対ドルで一時、約1.1%高の1ドル=141円99銭まで上昇した。
原油
原油先物相場は反落。米経済指標に加え、貿易戦争の動向を背景に売りが優勢になった。
大型ハイテク株が売られ、ダラス連銀製造業指数が2020年5月以来の低水準に落ち込んだことを受け、米国株は軟調な場面が目立った。ベッセント米財務長官は経済専門局CNBCで、政府は「あらゆる面で」中国側と接触しているが、米国との関税闘争で緊張緩和に向けた最初の一歩を踏み出すのは中国側だと述べた。
世界最大の原油輸入国である中国の当局者は、トランプ米大統領の関税措置で影響を受けた輸出業者にさらなる支援を提供する方針を表明した一方、米政府との通商交渉は行われていないとした。国家発展改革委員会(発改委)の趙辰昕副主任は、約5%という2025年の成長率目標を達成に「十分な自信がある」と強調した。
米国産原油は4年ぶりの安値を付けた後、月間下落率が13%を超え、2021年以来の大幅安になる見通しだ。米国主導の貿易戦争が経済活動を抑制し、エネルギー需要を損なうとの懸念が背景にある。一方、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が生産を引き上げていることも、下落圧力を強めている。OPECプラスは5月5日に会合を開き、6月の生産計画について決定する。
BNPパリバのエネルギー戦略責任者、アルド・スパンジャー氏は「弱気なセンチメントにもかかわらず、短期的な原油価格見通しは明るい」と述べ、低い国内原油在庫をその一因に挙げた。「第3四半期から第4四半期にかけて、在庫の増加が上昇圧力を緩和する一方、OPECプラスの供給増加が需給をさらに不均衡にする見込みだ」と話した。
地政学的な面では、米国とイランはイランの核開発を巡る高官協議を開き、進展の兆しが見られたことを明らかにした。両国は欧州で再び協議することで合意したという。一方、イラン南部ホルモズガーン州にある商業港で26日、大規模な爆発が発生。国営メディアによれば、この爆発により40人余りが死亡した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は前営業日比97セント(1.5%)安の1バレル=62.05ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント6月限は1.01ドル安の65.86ドルで取引を終えた。
金
金相場は反発。朝方は前週末の流れを引き継いで売りが優勢になったが、ドル下落と米国債利回り低下を背景に上げに転じた。
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は、世界市場では「緊張感に満ちた平静が戻ってきた」としながらも、「数週間以内に複数のディールが成立するとの見方は過度に楽観的だ」と指摘した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時55分現在、前営業日比29.52ドル(0.9%)高の1オンス=3349.24ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は49.30ドル(1.5%)高の3347.70ドルで引けた。
原題:S&P 500 Erases 1% Slide in Run-Up to Tech Earnings: Markets Wrap
Dollar Weakens Broadly, Yen and Swiss Franc Jump 1%: Inside G-10
Oil Slumps as Traders Await Next Moves in China, Economic Data
Gold Extends Drop as Easing Trade War Anxiety Cools Haven Demand(抜粋)