トランプ派のFRB理事増えても、大幅利下げの実現にはまだ距離感
トランプ米大統領が執拗に大幅利下げを要求し、連邦準備制度理事会(FRB)の人事を通じて政策方向に影響を及ぼそうとする中、金融政策の決定と当局者の構成に注目が集まっている。
今後、米金融政策当局者による想定外の辞任がない限り、現在の構成メンバーから見て、2026年にトランプ氏が求めるような大幅な利下げが実現する可能性は低い。
FRBのクーグラー理事は、任期を5カ月残して8月8日に辞任する予定で、トランプ氏は数日中に後任を指名する意向を示している。次の理事が誰であれ、26年5月に任期を満了するパウエルFRB議長の後継候補にもなり得る。ただし、新議長がトランプ氏の利下げ志向に同意した場合でも、実際に金利を下げるには、連邦公開市場委員会(FOMC)メンバー過半数の賛成票が必要だ。
元政策当局者らは、政策判断は政治的な思惑ではなく経済的根拠に基づくべきだと指摘する。クリーブランド連銀のメスター前総裁は「議長は議決権を持つFOMCメンバーの間でコンセンサスを形成することが求められる」と述べ、「それは健全かつ経済的な根拠に基づくべきだ」と指摘する。
7月のFOMC会合では、9対2で金利据え置きが決定した。トランプ氏が任命したウォラー理事とボウマン副議長は利下げを主張して反対票を投じた。
FRB理事7人のうち、クーグラー氏とパウエル氏を入れ替えた場合、4人がトランプ氏の指名となる。全員が大統領の意向に自動的に従うとは限らないが、新議長にとって有利なスタートとなる可能性があるとみるFRBウォッチャーもいる。
元ニューヨーク連銀総裁のウィリアム・ダドリー氏は4日、ブルームバーグTVに対し、「4人の理事が同じ立場でそろえば、議長が自身の意見を通すうえで相当な勢いを得ることになる」と述べた。そのうえで、「ただし、地区連銀総裁らはマクロ経済にとって何が正しいかという自身の信念に従って投票するだろう」と語った。
FOMCで来年議決権を持つ地区連銀総裁は、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁のほかに、クリーブランド連銀のハマック総裁、ダラス連銀のローガン総裁、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、フィラデルフィア連銀のポールソン総裁の4人。いずれも金融市場への感度が高く、FRBの信認に対する懸念には敏感に反応するだろうと、元FRBエコノミストでマクロポリシー・パースペクティブズ創業者のジュリア・コロナド氏は指摘した。
トランプ大統領は5日、ベッセント財務長官から次期FRB議長候補への指名を望まないとの考えを伝えられたと、CNBCとのインタビューで述べた。
原題:Trump’s Fed Pick Likely to Find Colleagues Cautious on Rate Cuts
Trump Says Bessent Doesn’t Want to Be Considered for Fed Chair
(抜粋)