角田裕毅、大一番に向け“充実のLA滞在”で英気。マックス「完璧な週末」を意識―レッドブルの聖地で試される二人の執念 / F1メキシコGP《Preview》2025
現地時間10月24~26日に開催される今週末の2025年F1第20戦メキシコGPを前に、レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンと角田裕毅が、それぞれの戦いへの決意を語った。
フェルスタッペンにとって、メキシコは過去5勝を挙げている得意コースだ。ここ数戦の「かなりいい流れ」を後押しとして、逆転タイトルに照準を合わせる。残り5戦、2つのスプリントを含むシーズン終盤で、「完璧な週末」を積み重ねれば、奇跡の逆転劇も夢ではない。
一方の角田は、来季シート獲得を懸けたサバイバルの大一番を迎える。直近3戦で16ポイントを稼ぎ、今季前半の合計12ポイントを上回る復調を見せるが、本人は「予選を改善して、もっと上位グリッドから戦いたい」と課題を語る。
標高約2,200メートルに位置するエルマノス・ロドリゲス・サーキットは、平地と比べて22%も空気が薄い。そのためダウンフォースが奪われ、グリップが低下。ドライバーの適応力が試される。一方でブレーキを含むマシンの冷却は難しく、パワーユニットにも大きな負荷がかかる。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
エルマノス・ロドリゲス・サーキットのターン1脇のバリアに衝突する角田裕毅(RBフォーミュラ1)、2024年10月27日F1メキシコGP決勝レース1周目
フェルスタッペンは前戦アメリカGPでスプリントと決勝の両方を制し、ランキング首位オスカー・ピアストリとの差を40ポイント、2位ランド・ノリスとの差を26ポイントにまで縮めた。残りのシーズンで獲得可能な最大ポイントは141点。逆転タイトルは現実的な射程圏内に入っている。
「タイトル争いを続けるには、毎週末を完璧に過ごすことが必要だ。メキシコでは最初のフリー走行から全力で取り組むつもりだ」とフェルスタッペンは語る。
「ここ数戦で僕らはかなりいい流れをつかんでいるし、この勢いを維持しながらクルマのパフォーマンスを最大限引き出していきたい。チームのみんなもそれを実現するため懸命に取り組んでいる」
レッドブル陣営にとってエルマノス・ロドリゲス・サーキットは”聖地”だ。フェルスタッペンはドライバーとして最多5勝を記録しており、レッドブルとホンダもチームおよびパワーユニットサプライヤーとして同じように最多5勝を誇る。
「メキシコのサーキットは僕らのクルマに合っている傾向がある」とフェルスタッペンも認める。
「ここではタイヤとグリップのマネジメントが決定的に重要だ。もちろん高地特有の空気の薄さは独特のチャレンジをもたらすけど、それは誰にとっても同じだ」
「メキシコはいつもお祭りみたいな雰囲気で楽しいから、ダブルヘッダーの締めくくりとしてもすごく楽しみにしている」
角田裕毅「予選を改善し、本来の位置で戦いたい」
角田の最近の成績は、目を見張るものがある。アゼルバイジャンGPまでの12ポイントを、直近3戦であっさり上回った。とりわけアメリカGPでは、スプリントで18番手から7位、決勝では13番手から7位と、いずれも追い上げを演じた。
「週末を通して本当にポジティブな内容になりました。自分がこのクルマでどんな走りができるかを示せたと思います。ロングランでは手応えを感じましたし、一貫性のある週末を過ごせました」と角田は振り返る。
一方で、本人も認めるように、予選では苦戦が続いている。レッドブル昇格後17戦でQ3進出は6回のみ。ロングランの安定性が増す一方で、以前は強みだった一発の速さがここ数戦は影を潜めている。
「次はショートランでも上位を争えるように改善して、予選結果を向上させる必要があります。週末全体を通して一貫した走りをすることが目標です。それができればチームのためにもっと良いポイントを取れますし、グリッドの上位、つまり本来僕らが戦うべき位置でレースができると思います」
NBA観戦でリフレッシュ、八村塁と交流
アメリカGP後、角田はロサンゼルスに滞在。「充実した数日間」を過ごした。
「ロスは今回、初めて訪れたのですが、レッドブルのAPC(アスリート・パフォーマンス・センター)でトレーニングに取り組みました。本当に素晴らしい施設で、過密スケジュールの中でも、コンディションを保つのにすごく役立ちました」と角田は語る。
現地10月21日にはNBAの開幕戦を観戦し、ロサンゼルス・レイカーズの八村塁と交流。八村からサイン入りのユニホームを受け取り、一緒に「LA」のハンドサインで記念撮影を行った。
「バスケットボールも少し楽しみましたが、レースを辞めてバスケに転向するのは、さすがにどうでしょうね!」
束の間の息抜きを楽しみつつも、角田にとっては、来季の去就が決まらない不透明が続く。
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、前戦アメリカGPの予選直後まで、メキシコGP後に来季のレッドブルおよびレーシング・ブルズのドライバーラインナップを決定するとしてきた。だが、その24時間後、決勝を終えて突如、決定を先送りする可能性を示唆した。
とはいえ、メキシコ後であれ、さらにその先であれ、角田が果たすべき仕事が変わるわけではない。
「予選を改善して、再びポイント争いを」——角田の目標は明確だ。
メキシコGPは日本時間10月24日(金)27時30分に始まるフリー走行1で幕を開ける。ただし、このセッションではフェルスタッペンに代わり、来季レーシング・ブルズ昇格の可能性が取り沙汰されるジュニアドライバー、アーヴィッド・リンブラッドが走行する予定だ。
フェルスタッペンのタイトル5連覇、角田のシート獲得——それぞれの執念が、レッドブルの”聖地”で試される。
2024年のF1メキシコGPでは、カルロス・サインツ(フェラーリ)がランド・ノリス(マクラーレン)を退け、ポール・トゥ・ウインを飾った。