角田に”猶予の追い風”―レッドブルF1、2026年陣営決定を延期。マルコが理由を説明
レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、2025年F1第20戦メキシコGP後に発表するとしていた2026年のドライバーラインナップを、先送りする方針を明言した。
当初マルコは「メキシコGP後に決定を下す」と繰り返していたが、アメリカGPの決勝後には一転して、「現時点では我々の最優先事項ではない」と延期を示唆。今回、延期が確定した形となった。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
パドックで電話をするヘルムート・マルコ(レッドブル・レーシング コンサルタント)、2025年10月24日(金) F1メキシコGP(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)
ドイツの専門メディア『Motorsport-Total』によると、マルコはメキシコでのレースを終えて、「すべてが後ろ倒しになった。レーシング・ブルズのドライバーも同様だ」と説明した。
先送りされたのが「決定」なのか、それとも「発表」なのか、この発言からは読み取れない。また、延期の具体的な期日も示されていないが、イギリスの専門誌『Autosport』によるとマルコは、「決定」を最終戦の「アブダビGP前後」に下す意向を明らかにした。
背景にマックスのタイトル争い
マルコによれば、延期の背景には「マックス・フェルスタッペンのタイトル争いを最優先する」という明確な意図があるという。
残り4戦——ブラジル、ラスベガス、カタール、アブダビ——を前に、フェルスタッペンは依然として逆転可能な位置につけている。メキシコGPでの3位表彰台によって、首位との差は36ポイントにまで縮まった。
マクラーレンはオスカー・ピアストリとランド・ノリスの両ドライバーがタイトル争いの渦中にあり、チーム内のバランス調整が課題となっている。一方、レッドブルは角田裕毅がフェルスタッペンのサポート役に徹しており、内部の摩擦がない点をマルコは強みとして挙げた。
マルコは残り4戦に向けて、「我々のチャンスは十分に残っている。特定のサーキットで一方のチームだけが優位に立つという状況は、もはや存在しない」と自信をのぞかせる。
チーム代表のローラン・メキーズも延期の方針を認めたが、その発言内容は、「チャンピオンシップ争いのため」とするマルコとはややトーンが異なる。
メキーズは、「決断までにもう少し時間をかけたい。ユーキは成長しているし、他の若手も着実にステップを踏んでいる。急ぐ理由はない」と語り、こう付け加えた。
「コース上の走りで誰が最高のドライバーであるかを証明してもらうために、彼らにはできる限りのチャンスを与えるつもりだ」
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ドライバーズパレード中に会話するマックス・フェルスタッペンと角田裕毅(ともにレッドブル・レーシング)、2025年10月26日(日) F1メキシコGP(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)
2026年のフェルスタッペンのチームメイトについては、レーシング・ブルズのルーキー、アイザック・ハジャーが最有力候補との見方が大勢を占める。ただし、現時点では確たる裏付けはなく、あくまで憶測の域を出ない。
ジュニアドライバーであるアーヴィッド・リンブラッドに関しては、噂レベルでの来季レーシング・ブルズ昇格の可能性が取り沙汰されてきたが、メキシコGPのFP1では、イギリスGPのFP1に続いて再び印象的なパフォーマンスを披露。2026年のシート争いに新たな風を吹き込んだ。
角田は、リンブラッドやリアム・ローソンとともにレーシング・ブルズの来季シートを争う立場にあるとの見方が一般的だが、これも裏付けはない。
決定延期の真の理由が何であれ、角田にとっては追い風と言える。
上昇基調にある現在のパフォーマンスを維持できれば、それがシート獲得にどの程度影響するかは別としても、この“猶予期間”は彼の評価をさらに高める機会となるに違いない。
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決勝でレッドブルRB21をドライブする角田裕毅、2025年10月26日(日) F1メキシコGP(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)