中国、台湾有事巡る高市首相発言を「危険」と非難-撤回求める
中国外務省は、高市早苗首相の台湾有事を巡る最近の発言で日本に滞在する中国人の安全に「重大なリスク」が生じたとして、中国国民に日本への渡航を短期的に控えるよう呼び掛けた。これに先立ち、中国政府系新聞は首相の発言を80年ぶりの中国に対する武力威嚇だと非難。日中間の緊張が高まっていた。
中国が問題視しているのは、台湾有事が日本の集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得るとした首相の発言。中国外務次官は発言の撤回を要求した。
中国の孫衛東外務次官は13日、高市氏の発言は「極めて誤った危険な」ものだと指摘。「中国の内政に著しく干渉」し、両国関係の基盤を損なうものだと述べた。中国共産党の機関紙、人民日報は14日の論説で、1945年の第2次世界大戦敗戦以降、日本の指導者による初の「中国に対する武力威嚇」だと表現した。
中国外務省は声明で、高市氏の発言について抗議するため、13日に日本大使を呼び出したことを明らかにした。孫氏は、高市氏に対し発言の撤回を求め、「さもなければ、全ての結果は日本が負わなければならない」と述べた。
人民日報は論説で、高市氏の発言を「極めて悪質」と非難。この論説は「鐘声」の署名で掲載されており、中国語で「中国の声」を意味する言葉と同じ発音だ。中国政府の外交方針を発信する際によく用いられる。
高市首相は7日の衆院予算委員会で、台湾有事に関し存立危機事態にあたる具体例を問われ、戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になりうるケースだと考えると答弁。10日の予算委では、この発言を撤回しない考えを示した。
茂木敏充外相も14日の記者会見で、「撤回する必要はない」と明言した。
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存立危機事態の認定は、友好国を防衛するために日本が自衛隊を派遣する際の法的根拠となるため、重要な意味を持つ。高市氏の発言は、日本が従来採ってきた台湾有事への対応に関する戦略的あいまいさから外れるものだ。
大使に強く抗議
高市氏の発言に対し、中国の薛剣駐大阪総領事は反発。産経新聞によると、同氏はX(旧ツイッター)に「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」と投稿。この投稿は現在、削除されたとみられる。
木原稔官房長官は14日の会見で、大阪総領事の投稿は「中国の在外公館の長の言論として極めて不適切と言わざるを得ず、強く抗議の上、改めて中国側の適切な対応を強く求めた」と語った。
また、14日午後に船越健裕外務事務次官が呉江浩駐日中国大使を外務省に呼び、総領事の発信に強く抗議したことを同省が発表した。呉氏は中国側の立場に基づく発言を行ったが、船越氏は日本政府の立場に基づき反論したという。
原題:China Demands Japan’s Takaichi Retract ‘Dangerous’ Taiwan Remark(抜粋)
China Warns Citizens Against Visiting Japan in Near Future(抜粋)
— 取材協力 Colum Murphy, Sakura Murakami, Katsuyori Suzuki, Nectar Gan, Eddy Duan and Haruka Iwai